6.

それから、そのままジルヴァは居候することとなったが、それは忙しかった。

今まで会ってきたご主人以上に礼をしたいらしく、身の周りの世話を何がなんでもしたがり、だが、幼いこともあり、危ないとやらせないようにしていたが、拗ねてしまったため、できる範囲でやらせてあげたりと、子どもの相手をしているようでどっと疲れていた。


そのようなこともあり、今も絶賛そわそわしている最中である。


バイトがあるから、どうしてもジルヴァをお留守番をさせないといけない。

特徴的な耳としっぽは目立ってしまうだろうし、片目のせいで危なっかしい歩き方をするのもあり、なおさら外に出させなかった。


──だいじな、め、だったのです。でも、なんにんめのご主人さまに、とられてしまって……。


"お手伝い"をしてくれていた最中、解れかかっていた包帯を巻き直していた時、悲痛そうに言うジルヴァの姿が脳裏に浮かぶ。

大事なものはなかったが、幾重にも傷つけられた、耐え難い痛みには十分に気持ちは分かった。

吊り上がった目。ヒステリックな声。振り上げる手。

目の前で幻視してしまうぐらいに、嫌な気持ちにさせる。


「……おい、玖須グズ。客の対応してこいよ」


訂正。現実でも、心のないことを言う奴が身近にいた。

一応はバイトの先輩に当たる者だが、何度もミスをしたことがきっかけで、祥也に強く当たってくる。

レジ側にいたクセに自分がやれよ、と心の中で悪態を吐きながらも、裏側へと向かう先輩を睨みつつ、レジへと向かう。


「……お待たせしました。どうぞ」


覇気のない声で、待っていた客に声を掛ける。

子どもかと思われるその客は、サイズの合ってないフード付きパーカーを目深に被り、よたよたとこちらのレジに向かう。

──が、その直前ですっ転んでしまった。


「お客様!?」


すぐさまその元に向かった時、フードが滑り落ちる。

同時にぴんと伸びた大きな獣耳に、祥也は目を疑った。


「……お前、どうしてここに」

「あ、しょーやさま!あめがふりそうでしたので──」

「グズ、何を騒いでいるんだ?」


祥也の騒ぎで来たのだろう、咄嗟に隠し、無視をされ、怒りを滲ませた声を上げる先輩に背を向けたまま、抱きかかえて外へと赴いた。

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