4.

祥也しょうや。あなたが産まれてから、とっても幸せなの。だから私にとっておめでたいから、『祥』と名付けたの。あなたはきっと、これからも喜びに溢れる人生を歩むわ』


『運動も出来ない、勉強も出来ない、それに比べてまさしは、何でも出来る私の理想の息子だわ。……アンタなんか、親孝行も出来ないグズなのだから、私の前から消えてちょうだい』



ハッと目を開ける。

息が乱れ、びっしょりと汗をかき、服に張り付いた不快感を覚える。


今日もまたアレを見てしまった。


多少同年代の子どもよりかは、運動も勉強も劣っていたが、そこまで大きな影響はなかった能力は「祥也の個性だから、気にすることないわ」と言って愛情を注ぎまくっていたクセに、どれもこれもあっさりと否定されてしまった。

それは、五歳年下の憎き奴が産まれてから。


「んぅ〜……」


子ども特有の高い声が聞こえてきたことにより、現実に引き戻される。

それは、祥也の背後から聞こえた。

何故、子どもが?と思いながら、その正体を確かめようと、背後を振り返る、もとい、寝返ろうとした時、のしっと乗ってきたらしい、身体に重みが加わる。


「うにゅ……にゅにゅ……」


寝言らしい声の方へ顔だけを動かすと、「えっ」と声が漏れた。

祥也の身体に乗っていたのは、幼稚園程度の男の子であった。

そこでまた疑問を持ったが、その銀髪から生えている大きな獣耳に、どこかで見覚えのあるものだと思った。


「んぇ……おに、ぎり……」


ぱちりと、目を覚ました男の子の片目の瞳の色を見て、確信した。

この男の子は、昨日保護した獣だ。


「おはよー……ござい、ますぅ……」

「……おは、よ」

「……はっ! ご主人さまをおこさなくては!!」


急に目を覚まし、身を起こした男の子が慌てふためいて、「朝ですよー!」と、バンバン叩いてくる。痛い。


「おはよーございます! おはよーございますっ!」

「……っ! 起きてる、起きてるって」

「おきましたら、おきがえのおてつだいを〜!」

「……いいって」


服を脱がそうとしてくる男の子を、抵抗しながらも自分で脱ぐと、「では、ちょーしょくのじゅんびを!」と台所へと向かう男の子の制止しようとした時だった。

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