3.
「……働いているコンビニのオーナーが俺のことを心配して、毎日のようにくれるんだ。本当はいけないのだけど。……俺なんか放っておけばいいのに」
自分がこの世からいなくなれば、どれほどの人間──特に血の繋がっただけの関係の者達が喜ぶことだろう。
諸手を上げてまで喜ぶだろうなと、皮肉な笑いをしていると、生暖かいものが手に触れた。
ふっと見やると、食べ終えた獣がまた手についたご飯粒をおにぎりを食べている時の勢いで舐めるものだから、気づけば苦笑を漏らしていた。
「くすぐったいな」
それでも払いのけるわけでもなく、獣の気の済むまでやらせていた時、ハッとした。
こんなことで笑うなんて。
「……お前、帰る場所はあるのか」
すっかりヨダレまみれとなった手に、今度は頬を擦り寄せてくる獣に訊ねる。
まあ、答えてくれるわけがないよな。
ヨダレまみれになってない反対の手で、今度は頭を撫でた後、手を洗い、寝る準備を始めていると、不思議そうに布団を見つめている獣に、「入るか?」と布団を捲ると、ぴょんと跳ねて潜り、布団から顔を出した。
こころなしか嬉しそうな顔をしているように見えた。
きっと、布団の中でしっぽを大きく振っていることだろう。
続けて布団に入ると、獣が顔に擦り寄せてきたことで無意識に抱きしめた。
誰かの温もりを感じるのは、いつぶりか。
久しく、懐かしさに包まれながら、日々の疲れも相まって眠りについた。
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