全てが詰まっている!

主人公の、高校生男子。

普段なら、視界にも入らなかっただろう場所と、出会う事も無かったであろう女性との、「雨」がもたらした偶然。
かつて、私達も抱えた筈の、様々な悩み、葛藤や変化を、短いながらも、読み手にぐっと伝え入ってくる描写。

雨がもたらした偶然は、彼が、彼自身が本当は「どうしたい?」という想いを、確実で、強固な物へと変わるきっかけになってゆく。

最後の終わり方も、しびれました。
「本当に自分が好きなもの」って、好きだからが故に妥協できず、それは時として、逆に苦しくもなる。
ですが、きっとそんな苦しさも、彼は乗り越えていけるんだろうな、という、希望が見えました。
そして、講師として再会した彼女は、大切な夫を亡くし、辛い状況であったのではないかと思われますが、彼女も又、「本当に自分が好きなもの」があったからこそ、立ち直り始めるきっかけになったのではないか、と考えました。

不安や希望、人の弱さや強さ、全てが詰まっていて、最後は温かい。

素敵な作品を、有難うございました。