穴のある記憶

羅点

穴のある記憶

秋濤の万の泡を背骨とす

筋力を使い果たせぬ盆踊

コスモスの丘へ飛行雲の沈黙

春風の遺書を刷りゆく輪転機

火恋し受話器より在りし日の呼吸

馬小屋の数多なる舌小夜時雨

鯛焼を割りて腹から食う教師

羊水に指のほぐれる十二月

潮花の触るる海馬の涼しけれ

真鶴の運ぶ異郷の風の唄

ぶらんこを漕ぐ背骨より歪みけり

薄氷の剥がれ穴のある記憶

陽炎へ飛行機滲む滑走路

頭蓋より寝相のずれる初蝶来

じゃんけんの火傷の指や浜薊

ディベートのテーマ「貧困」夏浅し

無害なる無音の森を蛍飛ぶ

背伸びして火葬炉見つめたる小暑

星涼し給水塔は白き釘

泳ぎ終え鯨の匂いのする我ら

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穴のある記憶 羅点 @raten_tiba99

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