第7話

「おねえさん、あかちゃんになまえ、つけて」

 

 私が赤ちゃんにお乳をあげていると、洗濯物を畳みながらルゥが言った。

 そうだ。名前をつけてあげなきゃ。出産前に名前をつけることも考えたけれど、赤ちゃんの顔を見てから名前をつけたい、と私が主張したのだった。

 赤ちゃんが男の子か女の子かも生まれるまでわからなかったから、赤ちゃんの顔を見てから、と言ったのだけど……。

 こうして赤ちゃんの顔を見ても、名前は浮かんでこない。

 

「うーん。すぐには思いつかないなあ。どうしようか?」


「そうなの? あ、そうそう、おねえさんのなまえはなんていうの?」


 一年以上も一緒に暮らしてきて、今更なの……?と思ったけれど、ルゥはずっと「おねえさん」としか呼んでこなかったし、私もすっかり自分の名前など、忘れていた。

 

「シア、というのよ。おばあちゃんがつけてくれたの」

 

「シアおねえさんか。すてきななまえ!」

 

 長い間、呼ばれることのなかった名前。でも、ルゥが呼んでくれた瞬間、私の中に温かい気持ちが生まれた。そうね、名前を呼ばれるのって、嬉しいこと。この子にちゃんと名前をつけてあげなくちゃ。

 

「ぼくのなまえはどうしてつけてくれたんだっけ? あのときはとつぜんだったけど、すてきななまえをつけてくれたよね?」

 

 そう言われて、あのときの気持ちを思い出せるだけ、思い出してみる。

 

「ルゥは……なんとなく……響きで……だったけど……」


 すると、赤ちゃんに相応しいかもしれない、一つの名前が浮かんできた。

 

「この子はリズ。なんとなく、響きが可愛いから」

 

「リズ! いいなまえだね。ありがとう、シア」

 

 呼び捨てで呼ばれてドキッとした。更に、頬にキスされてくすぐったかった。



 ルゥと、リズと、私。これから始まる生活はどうなることやらわからないけれど、とりあえず私は幸せいっぱいだった。

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新しい命~この世の終わりのその後2~ 桜水城 @sakuramizuki

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