天地に沿って歩む

猫煮

天地に沿って歩む

幼子が這いては窺う走り梅雨


住宅地記憶に筍流し吹く


去りし人遅れて降らす虎が雨


入梅に叩くも虚し殻の宿


朝凪に潮の音のみ我叩く


目の凝りに窓を開けば夕薄暑


雨乞いに首安堵する坊主かな


梅の葉を叩いて歌う喜雨の声


梅雨寒を恋しと言いし吾を恨む


黒南風の側溝にいる紙の鶴


夏至の朝鶏も三度寝入りけり


白南風が伸びする猫の抜け毛掃く


ペン先も溶けるが如し油照


風死ねば校庭に子の声絶えり


夕凪に「強」の先無き扇風機


うすものの風に追われる散歩道


夜風の先触れなりやなすび漬け


冷麦を透かして見える星の海


夏氷頭痛の種も飲み干さん


尺取の長き一歩で陽が進み

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天地に沿って歩む 猫煮 @neko_soup1732

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