表面張力

@s_116_23_10

表面張力

字引には導き得ぬ名 何よりも「正しい」画が淡くふるえる


わたしにも惜しみなく散る星屑よ たわんだ弓と張り詰めた糸


ゆらり、のぞく襟足、伏せたまつ毛、のべた指先で撫でるララバイ


境界線刻むチョークを欠いたまましとどに濡れた肩の半分


自販機も億劫そうに涼を吐く あなたが透ける翼を持つ日


眼差しの揺らぎを盗む ティラミスと、ショートケーキの苺をあげる


肩に掛けるブレザーの重みと、小鳥のさえずりを、秤にかける


あなたがず、と啜る、啜った、もちもちとした、もちもちとしたタピオカ


雪だるまが溶けたこと、しゃぼん玉が割れたことにも、気付かせないの


不可逆はカーペットに染みた珈琲 真白の頬に知らしめぬよう


観て聴いて侵されるんじゃなく侵して流れていくの、ゆるさないで


白昼夢縫い舞うひとを人形と呼ばないために檻に戒む


一面のひかり、を踏み躙ることを正当化する数式はない


お砂糖とスパイス、その他(がらくた) 川原の小石のように削れた


シンプルな文は誰にも届く武器 夜たくさんの文字を殺した


レンジでチンした「おはよう」も自己流の押し花もすこし足りない


紫陽花は青でピンクで わたくしが植わりたいのはあなたの土壌


もし仮にあなたが陳腐を望むなら、月を尊ぶ言葉も紡ぐ


オブラートより真綿より沈黙に近くなるまでくるむ真心


永遠にしたかったもの 花びらが1枚欠けた桜のピアス

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