手のひら

@multi_717

二十句

いちょうの葉生まれたてでもいちょうの葉 


汗拭きて祖父の淹れたる一番茶 


甕の柔らかな水ボウフラ泳ぐ 

   

花散りて桃色の帯神田川 


海きらり伊予の遍路のあたたかさ 


夏近しできっこないをやらなくちゃ 


かんぱちの脂の光る醤油皿  


あの月と付かず離れず幾星霜 


風薫る大海のぞむ跨線橋 


吹き抜けるまじやダメージジーンズを 


駆け抜けたあの子と共に麦の風 


夏引の糸で織りたる夕涼み 


行き船頭、帰りはおんぶ、雪解富士 


茴香の花クレオパトラの微風 


駅弁を迷うコンコースの涼し 


夏の波運ばるる藻と枝と吾子 


短夜やおひさまはよろこんでゐる 


半袖のシャツとズボンと恙なしや 


五月雨に祖父と吾子の歯ゆるみけり 


朝ぼらけ雨宿りする青蛙 

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