女子校生おじさんは突然に

畳01

女子校生おじさんは突然に

 朝の通学ラッシュ、学生たちの中に混じって女子校生の制服を着たいわゆる女子校生おじさんを見た事がある人は少なく無いと思う。

 見た事がない人も女子校生おじさんという言葉くらいは聞いた事があるだろう。


 恐らく全国四十七都道府県、その全てに様々な制服を着た女子校生おじさん達が存在している。


 では女子校生おじさん達のカバンに付けられている見た事も無い気持ち悪い目をしたぬいぐるみに気付いた人はいるだろうか?

 恐らく全ての女子校生おじさん達の共通点であり女子校生おじさんの発生原因でもある。


 そしてそのぬいぐるみに気付いてしまった場合、あなたがおじさんならその日の内に女子校生おじさんにされてしまうだろう。とある一人のおじさんが気持ち悪い目をしたぬいぐるみにそうされてしまったように。


 これはそんなあるおじさんの話である。



 その日はバイクで通勤中にいつも使う道でいつものように信号待ちをしていると、交差点の対岸にいつも見るような女子高生の集団の少し後ろに、見様によっては女子高生の集団に混じっている様にも見える薄毛の女子校生おじさんがいる事に気付いた。


 女子校生おじさんに気付いたタイミングでちょうど信号が青になったので、バイクを発進させた俺は女子校生おじさんとすれ違い様にチラッと女子校生おじさんを見た。俺はフルフェイスヘルメットの中で


「……なんだ、あれは?」


 と思わず言ってしまった。

 でも女子校生おじさんに対して言ったのでは無い。

 女子校生おじさんが持っていた鞄に付けられた気持ち悪い目をしたぬいぐるみに対してである。


 そして俺はそいつと目が合ってしまった。

 その時はなんか気持ちが悪いな程度の感情しか湧かなかったし、いつものように仕事を終え帰宅する頃にはそんな事は忘れていた。



 帰宅してとりあえずビールを飲もうと冷蔵庫を開けるとそこには何故かあの気持ち悪い目をしたぬいぐるみがいて話しかけてきた。


「やぁ、君を女子校生おじさんにしに来たよ」


 音声を録音再生するおもちゃの様な声だった。

 突然の事に理解出来ず固まっているとぬいぐるみの気持ち悪い目が一瞬妖しく光り


「はい、できた。じゃあ明日から君も女子校生おじさんだからヨロシクね」


 とだけ言い残してその場からぬいぐるみが初めから居なかった様に消えてしまった。


 今のは幻覚だったのか何だったのかわからないままとりあえずいつものように、ビールを飲んでご飯とシャワーを済ませて、ベッドの上でさっきの気持ち悪いぬいぐるみや女子校生おじさんをネットで検索しても何の手がかりも得られず、いつの間にか寝ていたのか気付けば朝になっていた。


 俺はいつものように朝の支度を済ませて、寝巻きから地元の学校の女子の制服に着替え、あの気持ち悪い目をしたぬいぐるみが付いた鞄を持って女子校生おじさんとしていつものように


「じゃあ、行ってきます」


 と言って玄関を出た。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

女子校生おじさんは突然に 畳01 @tatami01ld

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画