最終話:そこに愛があれば・・・。

そういう訳で、絵留が花屋をオープンするって言うんで、とりあえず

不動産屋へ言って空き土地を紹介してもらった。

あと新規起業するため自治体からの支援金を申請した。

土地購入のローンはしかたないけど、なんとかなるだろう。


「花屋の亭主か・・・ってまだ結婚してなかった」


花屋のことでいろいろ忙しくしてたので、絵留は昼間でもよくうたた寝を

していた。

絵留が俺を誘惑して来ないと思ったらソファーですやすや寝てるし・・・。


マイペースなラブドール・・・あ、ラブドールじゃないんだ、もう。

疲れてるんだな・・・しばらくヒマを作るかな?・・・

だけどそんな時間作ったら、また絵留に誘惑されそうだな。


絵留は俺にベタ惚れみたいだけど、実は俺だって絵留が好きだ。

付き合って?とか彼氏になってとか彼女になって〜とか言う面倒くさいこと

必要ないんだよね」


厳密に言ったら俺って異星人と恋してるってことになるんだよな。

そう思いながら、俺はよく寝てる絵留に顔を近ずけて寝顔を見た。

改めて彼女の顔をしっかり見ておこうと思った。

寝てる時くらいしかそんなことできないから・・・。


「めちゃ可愛くてあどけない顔してる・・・自分が作ったって思えない」


そしたらいきなり絵留が片目だけ見開いたかと思ったら、俺に顔を

近ずけてクチビルにチュッてキスした。

で、俺の頭を抱え込むとめちゃハードでディープなキスをした。


「うぐっ・・・え?・・・なに?いきなり」

「今、舌入れてきただろ?」


「うん、私、キス魔だから・・・ちゃんと相手してね」


「キス魔って・・・それは聞いてないし・・・欲求不満の熟女じゃあるまいし

・・・絵留、異星人でもまだ未成年だろ?」

「そうだね地球年齢で言ったら15歳かな?」


「じゅ、じゅうごさい?そんなに?・・・若いのか?」


「それがなにか?・・・未成年がキスしちゃいけないの?」

「私、未成年だけど子供じゃないからね」


「まあ、未成年でもキスしちゃいけないってことはないけど・・・あのさ、

キスとかって普通、男のほうから、していいかなってお伺い立てて彼女に

オッケーもらってするもんじゃないの?」


「え?空は私にキスさせてって言いたかったの?」

「そんな、まどろっこしいこと面倒だと思って省いてあげたのに?」


「まあ、その気持ちは嬉しいけどな、キスがイヤって言ってる訳じゃないんだよ」


「そ、じゃ〜も一回チューして?」


「え〜いいのか?・・・」


「いいの、恋人同士のコミュでしょ?」


「こ、恋人?・・・恋人って?誰が?・・・誰の?」


「私と空が・・・」


「いつ・・・いつ僕たちそんな関係になったんだ?」


「私が空の勤めてたお仕事場ではじめて、空を見た瞬間からそれは

始まってるのだ」


「それっていきなり過ぎないか?」


「あのね・・・雨だっていきなり降ってくる時あるでしょ?」

「それと同じだよ」


「たとえになってないと思うけどな・・・」


「そんなことどうでもいいから・・・ほら来て、チューして」


「キス魔って言ったけど・・・どの程度の頻度でキスするの?」


「うん、朝起きて一回、ご飯食べる前に二回、食べ終わって三回、で顔が

あったらまた一回、お昼ご飯の前に一回、お昼ご飯食べ終わって二回、で

お昼寝する前に三回、で起きて一回、お風呂に入って一回、で夜ベッドで二回

で、エッチする前にいっぱいキスして、でエッチしながら、もう息ができない

くらいのデープキス」


「え?そんなに?」

「って言うかさ・・・今、どさくさに紛れてエッチって言った?」


「うん、言った・・・だって恋人同士だもん、私たち」

「エッチなんか普通でしょ?」


「トイレに行くくらい生理的だね」

「それにしたって、そんなにブチュブチュしてたら、唇が腫れるよ」

「明太子みたいになっちゃったらどうすんだよ」

「ご飯のお供にクチビル食べなきゃいけなくなるじゃん」


「バカ言ってないの・・・」

「大丈夫だよ・・・ハードなキスはエッチの時のディープキスだけだから・・・」

「あ、あと朝、空を起こす時もだけどね・・・」


それもいいんじゃないだろうか、そこに愛があれば。


そして絵留は購入した土地に粗大ごみで店を建てた。

それはみごとだった、小さいゴミや多くなゴミが寄せ集まって芸術的にひとつの

家になっていった。


その光景を見てはっきり俺は確信した。

絵留はもうラブドールじゃないんだって・・・。

異星人でもなんでもいいんだ・・・そこに愛があれば、生きがいがあれば・・・。

俺と絵留の未来があれば・・・。


おしまい。

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It will break!!(究極のラブドールちゃん) 猫野 尻尾 @amanotenshi

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