第2話

喰廻二日目


今日の夕飯のメニューは心臓とマッシュルームのグラタンとワインとトマトのモツ煮込み、骨ガラで出汁をとった野菜スープだ。内臓は味が落ちやすいから早めにいただく。美味しく食べることはエミリーを食べきる上で必要なことの一つだ。スープは昨日から出汁をとっていたもので喰廻期間中はずっとこれを飲むことになるだろう。


今回のホルモンの処理は私とアンナだったのだが、正直に言うと二度とやりたくない、なんというかこう、涙が出て仕方がなかった。詳細はとても言えないがやっていて非常に食欲が失せる。そのため本来ホルモンは真っ先に消費するべきなのだが先生に無理を言って昨日の献立をミートパイと差し替えて貰った。

……とは言っても、つい昨日の話のため思い出しただけで吐き気がしてきた……深く考えずにいただくことにしよう。


先生「エミリー、今日も命をありがとう、いただきます」


一同「いただきます」


合図とともにみんなが食事を始める。


ジェシカ「エミリー美味しい!ありがとう!」


ジェシカはエミリーを姉の様に慕っていた女の子だ。グラタンが大好物で目を輝かせている。

そんなジェシカを見て、私は思わず頬が緩んでしまった。


私「ふふ、おいしいね、ちゃんとエミリーにありがとうってたくさん言うんだよ」


ジェシカ「うん!エミリーありがとう!」


にこにことジェシカが言う。


ジェシカ「エミリーはどこに行ったの?ジェシカ、一緒に食べたい!」


私「え」 


今食べているのがエミリーなのになぜそんな事を言うんだろう。

発言したジェシカはなぜかキョトンとしている。 


アンナ「ジェシカ、今食べてるのがエミリーだからエミリーはここにはいないよ、今は楽園に行くためにお空にいるんだよ。」


アンナが助け船を出してくれた。


ジェシカ「え…」


ジェシカ「じゃあエミリーとはもう遊べないの?」


ジェシカは幸せそうな顔から一変して今にも泣きだしそうだ。

どうしよう…私達が慌てていいると先生がこちらの様子に気づいたらしい。


先生 「ジェシカ、少し先生とお話ししましょう。ほら、こっちにおいで」


ゆりかごのような優しい声色で先生がジェシカに話しかける。これにジェシカはコクリと頷き、2人は食堂から出ていった。


アンナ「まだ小さいジェシカには、楽園とか喰廻とかわかんないのかなあ…」


困ったような顔でアンナが笑う。


アンナ「でも…私もミカと会えなくなっちゃうのは嫌だな…二人一緒に楽園に行けたらいいのにね」


私「たとえ次の喰廻でどっちかが選ばれても、すぐにまた楽園で会えるよ、私達最年長だよ」


そうは言ったものの私は内心揺らいでいた。楽園のことは信じてる、でも…でも、もし二度とアンナに会えなかったら…


アンナ「それもそうだね!早く楽園に行ってイリュメス様に会いたいな〜〜、楽園に行っても私達ず〜っと友達でいようね!」


そんな私の心配をよそにアンナは鈴のように明るくて笑う。アンナはいつも眩しい、そんなアンナの事を私は昔からずっと______、

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親愛なる君へ、いただきます 秦波多乃 @hatahata168

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