第4話 タヌキの宝くじ

 世界中のギャンブルは上から下まで公平性を求める。

 当たり前だがインチキの匂いがしたらそれだけで誰もやらなくなる。

 一方、日本の宝くじだけはそれと真逆の方向に突っ走っている。


 最初は回転するルーレットを人間が矢で撃っていた。この頃はまだマシである。

 だがこの方法ではたまに矢が外れてしまうことがあるので改良しようということになった。

 今度は矢をボウガンで撃つ方式にし、人間がスイッチを推すとボウガンが矢を発射するというものになった。

 インチキ臭さ満点である。コンピュータ制御で矢の発射を0.01秒ずらすなどはお茶の子さいさいである。回転ルーレットもステッピングモータで動かせば1度単位でも制御できる。

 ボウガンの場合は矢の発射速度はほとんど変化しないから、つまりこれは好きな番号が出せるということだ。

 だがそれでもわずかな誤差で制御から外れることもある。そこで今ではピカピカ光る回転ルーレットが回り、コンピュータが選んだ番号を出すだけである。

 インチキの匂いで鼻がつまりそうである。

 外人はこの手のインチキの臭いがした場合は近寄らない。


 当然古くからの宝くじファンは日本の宝くじを見限り、外国の宝くじへと走った。外国の宝くじの方が当選額が多く、胴元が引くテラ銭の率も低く、なによりインチキがしづらい。

 当選者の氏名は堂々と発表される。そうでなければ追跡調査ができずインチキのし放題となるからだ。

 すると政府はいつもの歩みの遅さはどこに置いて来たのか、光の速さで外国宝くじの購入を法律で禁止した。

 そうして今に至っている。


 日本の宝くじは税金が先に引かれているので税務署の調査が入らないし、氏名が公表されないので、裏金として使うには最適なのだ。

 氏名が公表されないのはプライバシー保存のためと言い訳しているが、その割には数少ない当選者の氏名は裏で名簿に流れている。担当者が名簿をこっそりと売っているのである。


 日本の宝くじファンは不遇である。

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彼誰(かはたれ)の記憶:現在 のいげる @noigel

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