第13話マッドサイエンティスト・詩音

 トン・トン・トン。


 研究室のドアを3回ノック。


「……ドウゾ〜」


 無機質で無気力でめんどくさそうな若い女の声が返ってきた。


 研究室の自動ドアのボタンを押すと、プシューと扉が横にスライドする。


 中の様子はというと……部屋の中央に中型のヴィランの入った円形の筒。周りをぐるっとモニターや計器が囲んでいる。


 その傍らに立つ、髪がボサボサで異様に長く、幼児体型と形容すべき白衣を着た少女。10 秒チャージ系ゼリー状栄養ドリンクのパックを片手でもって、たいして美味しくもなさそうにチュウチュウ吸っていた。


「また、そんな食事か? いい加減、髪も切りに行けよ。幼児体型のお化けでも立ってるのか?と思ったぞ」


「ん〜?」


 興味なさそうにこちらに顔を向けて凝視するブカブカの白衣を着た少女。前髪が長すぎて顔が見えない。


「……これ、完全栄養食〜。……髪、切りにいくのめんどくさーい〜。切りたきゃ、勝手に切れば〜。ついでに……爪も、切って〜。体も、拭いて〜。……血、吸わせて、あげるから〜」


――生活力! 喋り方! 女子力! 


 髪もちゃんと切れば、とても整った可愛い顔が出てくるのだ。こいつの【変態】は、栄養やその他もろもろのモノを知能にほぼ全ふりしてるのも知ってる。だけど……(あー、もうっ💢)。血を吸わしとけば、なんでも許してもらえると思いやがって!


 特に……「体も、拭いて〜」じゃ、ねーよ。――美少女天才高校生科学者の女子力〜!仕事して?


「食べ物は、栄養だけじゃありません! 例えば……他人が作ってくれた味噌汁を飲んで、“あー、日本人に生まれてよかった〜!”とか、しみじみ思わないわけ?」 


 俺は……つい最近、思った。


 ついでに。炊きたてのご飯と漬物もあれば、最高!とも思う。



「時代錯誤。……で、何用〜?」


 日本人の味噌汁愛を、「時代錯誤じだいさくご」の四文字よんもじで切り捨てやがった!


 (てめえ。酒が飲める年齢になったら老舗の蕎麦屋とかに連れていって、無濾過無加水の大吟醸のお冷と焼きネギ肉味噌とかのおつまみセットとかを奢って、心底、“日本人で良かった〜”って叫ばしてやるからな。覚えてろよ?💢)


 いや。まず、キンキンに冷えたビールを風呂あがりに美味しく飲めるようにならないとかもだが。



 まぁ。そんなことは、どうでもいい。

 


 要件を伝える前に、極度の精神的疲労にさいなまれる俺なのだった。

 こいつ。この性格な上にマッドでサイコなんだぜ、信じられる?

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隠れ筋肉フェチな巨乳美人JKを助けた筋肉ヒーロー、お互いズブズブの共依存関係になって離れられなくなってしまう ライデン @Raidenasasin

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