第12話ヒーロー協会

 ヒーロー協会の本部は、霞が関にある。

 内閣直属かつ警察省、防衛省、文部科学省も噛んでいる超省的組織だ。――ヒーローにも怪人にも国の将来を左右する可能性があると、それだけの期待がかけられているということ。

 出向している役人にも、エリートが多い。だからこそ、仕事が硬直気味でお役所仕事的なのだが。


「よっ、京介さん。また、かわいい女の子を引っ掛けてきたの?」


 麗奈と梨花を連れて歩いていると、派手で細身で軽薄な感じのイケメンが声をかけてきた。


 彼は、轟颯馬とどろきそうま。名前の通り、疾風迅雷しっぷうじんらいの剣技と体術を得意とする忍者といった感じのヒーローだ。席次は、11位。A級ヒーローである。身のこなしも軽く素早いが、態度も軽く、性格は少しも忍んでいない。将来は確実にS級上位に食い込んできそうな、期待の若手である。



「人聞きが悪いな。俺は、至極まっとうに仕事をしているだけだ」 

 助けた女の子に催眠術をかけて、ちょくちょく血をつまみ食いしてるのは、内緒だが。


「えー……この前助けた女の子は、自分の助手にしたそうじゃん」


「まぁね。このだよ。ヒーローの素質がありそうだったし」  


 ヒーロー候補をスカウトするのもヒーローの仕事の一つですけど、なにか?


「初めまして、園崎麗奈です。よろしくお願いします。女の子なんで、ヒーローではなくヒロインだと思いますけどね」



「くけけっ!(笑) 轟颯馬だ。こちらこそよろしく! えっと…君、胸、大きいね。何カップ?」

 


「こら!」


 颯馬の右脇腹にそれなりの威力でドスッと一撃をいれる。――【リバーブロウ】って、やつ。

 本当は、目潰しをくらわしてやりたかったのだが。



「ぐはぁ」


 麗奈のカップサイズは、知ってるが……お前が知る必要はない!


「えっと……」

 戸惑う麗奈。


「真面目に答えなくて、いいよ」  

 とりなす、俺。変態能力は、阻止したし。


「はい」


「痛ってぇ! さっき食ったさめの竜田揚げをリバースしたら、どうしてくれんの?」


  ――鮫の竜田揚げ? 妙なもん食ってんな。



「アンモニア臭が凄くて、ボディブロウをくらわなくも吐きそうなんだが」


 栃木あたりの人間は、鮫を食うって聞いたことがある。給食にも出るとか。いや、栃木の人間をディスっているわけでは決してない。かつて海なし県の貴重なタンパク源だったというだけのこと。


「鮫は、アンモニア臭さいほど美味いだろうが!」



「はぁ!? いや、知らないし。もぅ、いいわ。空いてる部屋に2人を案内して、飲み物のリクエストを聞いて出してやってくれる? お前の独断で飲み物だすのは、絶対禁止な」 


 たった今、こいつの味覚が信じられなくなった。アンモニア臭い飲み物とか、出しそうだし。(アンモニア臭い飲み物って、なに? 鮫の肝油とか??)



「「クスクス」」 


 美少女2人が笑ったから、これくらいで許してやるか。



「鮫と俺への偏見をやめい。……で、京介さんは、何をするんだ?」


「主任に会ってくる。研究室だよな」





「げ! よくあのマッドサイエンティストと仲良くできるよなぁ」


「そうか? あいつ、マッドでサイコで引きこもり。おまけに、極度のめんどくさがりで、要介護かつ幼女体型だけど……顔と頭は、もの凄くいいだろ」


「ぎゃはは。けなすか褒めるかどっちかにしろって!」


 あいつには散々な目に遭わされてるからな。友達とはいえ、評価は良し悪しってところだ。


 俺は後輩とのアホな会話を適当に切り上げ、梨花ちゃんのご両親との電話を会長秘書の紋舞さんと麗奈に任せ、研究室へ向かった。

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