日常

@Lunar_aki

第一話 日常


関係を終わらせるには、たった一言で充分だった。関係は永遠に続くものではない、いつか終わるものだということをどれだけの人が認識しているのだろうか。

これほどたやすく2人の関係が終わるとは想像すらしていなかった。

この世界は明けるのだろうか。この夜の世界をつくってしまったのは私自身なのだと負い目が付きまとう。


ゴミ集積所のドアが開く音、新幹線の搭乗アナウンスが聞こえる、たるんだカーテンの隙間から入り込む陽射し。車掌のしゃがれた声が漏れ聞こえると、日常が訪れ、私を引きずりだす。

ずり落ちるようベッドから抜け出し、ほろ苦いコーヒーの香り、ベーコンと卵が焦げた香りが立ち込めると、あの人がここで作ってくれたものとおなじだと思い出す。あなたの使っていたメイク落としが洗面台に置かれたまま、それを横目に見ながら歯を磨く。

今や胸が締め付けられるあの人と過ごした時間は、私の日常にも忍び込んでいる。

アイロンをさっとシャツにあて、駅のホームへ足早に向かう。じゅうぶん過ぎるほど時間は余っている。

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