第111話 三年ぶりの帰還と、新たな仲間の役職


 僕はザルエラとエキドナを連れて、ダンジョンの外に出た。


 外に出ると、大砂漠の直射日光が出迎えてくれた。その余りの眩しさに、思わず瞳を眇める。


 まあ、三年間も薄暗いダンジョン内にいれば、太陽の光りが恋しくなるのは当然だが、大砂漠だけあって強烈な日光だ。


 『遅い!』


 ありゃ。外で待ってる皆に怒られちゃった。まあ、フェンリルとサイクロプスに関しては、三年間も待たせちゃったからな。


 「ごめん! 遅くなった。それと、今ここに仲間が全員集まったから、皆に役職を頼もうと思う」


 実は、バルルマヌルに行って、仲間集めをしようと思っていた前から、役職だけは考えていたのだ。


 まず、僕こと教皇直属の護衛三体の強力な仲間。


 名前も決めてある。


 三閻羅さんえんらである。


 さらに、大戦争に備えて、前線で活躍してもらう為の役職。


 六大守護聖魔である。


 そして、もう誰をどの役職にするかも決めていた。


 この場にいる誰もが恐れる、魔獣や魔人たちは急に役職と言われ、首を傾げて困惑している。


 「急に役職とか言ってごめん。でも、難しいことじゃないから。役職は二つで、僕の直属護衛を三名ほど頼みたいのと、戦争になった時に、前線で活躍してもらいたい六名を決めるだけだ」


 僕の言葉に、安堵したのか溜息をついている者までいた。


 きっと、我が国で大変な職務を就くのではと思い、困惑していたのだろう。


 今回の仲間集めは、戦争の際に存分に活躍してくれる、強い仲間集めであって、決して大臣などの役職を探す、仲間集めではない。


 とは言っても、行政府の大臣もまだ全員決まった訳ではないから、出来ればお願いしたいが、今は有事の際の仲間集めなので、平時になったら頼んでみるか。


 案外、大臣としても活躍してくれるかもしれない。


 僕がそんな事を考えていると、ハーデスから質問された。


 「ピーターよ。貴様は私たちよりも、大いに強い。前線の六体は解るが、ピーターに護衛が必要だとは思えないが……」


 え? ハーデスから見て、僕ってそんなに強いのか?


 【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンの現在の全ステータスは、バルルマヌルのダンジョンに入る前よりも、200倍に向上しています】


 にっ!? 200倍!? ちょっと加護を授かり過ぎたかな。


 【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンのアルティメットスキル、魔王竜之逆鱗の権能の一つ、幽体乱喰ゆうたいらんぐいを行使し、個体名ザルエラの悪霊を全て喰い尽くした事で、加護以外に喰い尽くした分の悪霊を自分のエネルギーにし、ステータスが向上しています】


 え? ちょっと至高者さん! 加護以外にステータスは上がらないって言ってなかった?


 【伝えます。加護以外でステータスを向上させるには、幽体乱喰の権能で魂を喰らう事により、ステータスが向上します】


 いや、おせーよ! 前は加護を授かる以外に、ステータスは向上しないって言ってたじゃん!


 【伝えます。これは例外です。さらに伝えます。ステータスが向上した事により、幽体乱喰の権能が存在乱喰そんざいらんじきに進化しました。この権能は幽体だけでは無く、この世にある全ての物質、概念、生命、生物、細胞、肉体、霊体、意識、感情、精神、魂、空間、時空、次元、結界、重力、全属性、自然現象、ウイルス、呪い、権能を喰らうことができ、喰らった物を自身のエネルギーにし、ステータスを向上させる事が出来ます】


 それって魂も含めて、何でも食べられるってことか。加護以外に、あらゆる存在を喰らう事で、ステータスが上がるってことは、喰いまくれば相当ステータスが向上するぞ。しかも権能まで喰えるとは恐ろしい……。


 てか、それよりも、ハーデスの質問に答えないと。


 「いや、僕一人じゃ限界があるし。護衛って言っても、一緒に戦ってもらう仲間のことだよ」


 それを聞いて、ハーデスは納得したのか、もう質問はしてこなかった。


 「じゃあ次に、護衛と前線で戦ってもらう役職の名前を伝える。まずは護衛だ。護衛の名前は三閻羅にした。それから前線で戦ってもらう役職名は六大守護聖魔だ」


 僕が考えた名前を聞いて、この場にいる全員は、悪く無いと言った表情をしている。


 「それじゃあ、まず三閻羅の三名を決めたから伝える。三閻羅は、ハーデス、テュポーン、ザルエラだ。そして六大守護聖魔は、マディーン、アレキサンダー、セラフィム、サイクロプス、フェンリル、エキドナだ。不満とかある奴は意見を聞くけど」


 すると、ザルエラが笑いながら言った。


 「フハハハ! 不満などある訳がない。ピーターの実力を知り仲間になったのだ。ピーターに意見がある訳など無いであろう。私は貴様の決めた事に不服などないぞ。この場にいる者たちも、同じ考えであると思うが、貴様らは不服か?」


 『不服など無い!』


 おお。息ピッタリだ。まるでドラゴンみたい。

 ていうか、やっぱり魔物のルールは、強い者に従うことなのか。


 「所で、もう一回だけ言っておくけど、僕の国の教えは、弱い者を襲わないこと。特に人間や亜人は襲わない。それと、誰もが平等な国だから、差別もしないでくれ。最後に、皆が笑って暮らせる国にしたいから、国民とは仲良くして欲しい。そして、我が国の名前は、神聖魔教国テレサヘイズだ。以上」


 すると、マディーンが微笑しながら言った。


 「ピーターよ。どうやら貴様は、良き教皇のようだな。早くピーターの国を見てみたいものだ」


 おお、そうだった。三年間も国を留守にしていたから、早く戻らないと。しかし、聖獣のマディーンに褒められるとは。僕が今まで良き国にする為に、頑張って来たことは正しかったのかな?


 んまあ、そんな事よりもだ。


 やっと三年ぶりに我が国に帰る事ができる。


 それに、こんなに強力で頼りになる仲間が九名も集まった。

 これで大きな戦争になっても、何とかなりそうだ。


 さてと、ではでは三年ぶりの我が国は、どうなっているのか、すぐに戻って確かめますか。


 そして僕は急ぎ転移魔法陣を作り。新たに仲間にした九名と一緒に、首都である巨大城郭都市モンテスの野外に転移した。

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