第110話 最後の激戦、死の天使ザルエラと怪物たちの母エキドナ
やっと第三階層か……やっぱり三年ぐらい掛かると思っていたが、僕の思った通りだ。
だが、残るは二体。でもねぇ……この二体がまた厄介な死神と怪物なんだよな。
おっ! この気配は……遂に発見したぞ。
かなりダンジョンの奥だな。
僕は、気配感知を頼りに暗いダンジョン内の奥へと進んだ。
いたっ! ザルエラとエキドナだ。
しかし、コイツらもかなりインパクトがある姿をしているな。
ザルエラは漆黒のマントを羽織り、両腕が翼と一体化して左翼には目隠しをした巫女さんまでも、一体化している。
と言うか、コイツの顔……怖すぎるだろ!
骸骨の顔をした、まさに異形の死神そのものだぞ。
エキドナは半人半蛇の怪物で、とにかくデカい。
上半身が美女の姿をしていて、下半身が蛇なのだが、上半身の両腕が異常に長い。さらにその両腕の先にある、両手の爪も異常に長い。
そして、上半身は腕まで届きそうな青い髪に、皮膚は青く硬い蛇の鱗を纏っていて。下半身の蛇も、青く硬い鱗を纏っている。
二体とも化け物だな……だがコイツらも仲間にしなくては。
「おーい! お前たちはザルエラにエキドナだろ? お前たち僕の仲間になってくれないか?」
僕の言葉に異形の姿をした両者が振り向いた。
「フハハハ! 誰かと思えば矮小な人間では無いか。その脆弱な威勢だけは褒めてやるが。貴様のような儚い存在の人間に、私が従うと思っているのか?」
「ザルエラの言う通りだ人間よ。私が誰だか知らぬのか? 怪物たちの母にして、不死の存在であるぞ」
あ〜やっぱり。チャームが効かない。もし効けば楽だったのに……。
「じゃあさ。僕がお前らと戦って、僕が勝ったら仲間になるか?」
「フハハハ! 面白い事を言う人間だ。よかろう、私よりも強き者であるならば、貴様の仲間になってやる」
「貴様が泣き叫ぶ姿を見るのも一興だ。しかし、真に強き者である事を証明すれば、私も貴様の仲間になってもいいぞ」
最後まで、この展開か。これはかなり長期戦になりそうだ……。
────1年半後────
な、何なんだ? ザルエラに権能を行使しても、全て無効化される。
しかもエキドナは、倒しても倒してもすぐに蘇るし……これ本当に勝てるのか?
「フハハハ! 人間の分際で随分としぶといな。まだ死なぬのか──その生命力だけは褒めてやる。だがこれで、遊びも終わりとしよう。
ザルエラの言葉と同時に、ザルエラの翼と一体化した巫女が悍ましい絶叫をした瞬間。
ザルエラの周りに無数の火の玉が現れ、それらが一斉に襲ってきた。
まるで渦を作るように火の玉が密集し、襲ってきたかと思えば、今度は散り散りになり、あらゆる場所から襲ってくる。てか、これは直感だが、この火の玉に触れると、途轍もなくヤバい感じがする。
何だか、言葉では表現できないが。この火の玉には、何だか悪意を感じるのだ。
【伝えます。能力複製により、個体名ピーター・ペンドラゴンは、個体名ザルエラのアルティメットスキル、死霊之異形者の権能の一つ、悪霊大渦を獲得しました】
うう……権能を獲得しても、ザルエラに対して有効な決定打が無いんじゃなぁ……。
【伝えます。個体名ザルエラは、全ての属性攻撃が無効です】
は? それ最初に言ってよ! つまり無属性しか効かないのか。
無属性と言えば物理だが……。嗚呼、こんな事なら無属性に特化した、サージスキルの波動思念をアランとの稽古で体得しておくべきだった。
まあ、そんな時間は無かったんだけど……。
てか、この火の玉は、何なんだよ!
【伝えます。悪霊大渦の権能は、悪霊の魂を呼び寄せ、その悪霊の魂に触れると即死します。この攻撃はスキルによる防御無効です】
いや、それ絶対に死ぬぞ! 何か対処法はないのか?
【伝えます。魔王竜之逆鱗の権能の一つ、
当たり前でしょ! YES!
あれ? なんか僕の掌の中に、火の玉が吸い寄せられてる。
と言うか、掌の中に火の玉が吸収されている訳ね。
てか、至高者さんが、悪霊の魂って言ってたから、この火の玉は悪霊の魂なのか。それに吸収した分だけ、ステータスが向上するのは、かなり嬉しい。
「何だと? 私の悪霊大渦の悪霊たちを全て吸収したのか? そんな事が人間に出来るはずなど……」
これでも魔王竜なんでね。まあ、至高者さんのおかげなんだけど。
「では次は私の番だな。
まるでエキドナの言葉に呼ばれるように、エキドナの周辺に無数の蛇が集まり始めた。
「さぁ、あの人間を食い殺せ!」
うおおお! なんだよ! 今度は無数の蛇が襲って来やがった!
【伝えます。能力複製の権能により、個体名ピーター・ペンドラゴンは、個体名エキドナのアルティメットスキル、不死之怪大蛇の権能の一つ、死毒怪蛇を獲得しました。さらに伝えます。死毒怪蛇の権能で現れた蛇に咬まれると、その毒牙で即死します。この権能はスキルによる防御無効です】
また即死攻撃かよ! 即死攻撃のバーゲンセールじゃねーんだぞ!
だが、物体だったら、あの権能が有効かもしれない。
そう、空想言語実現だ。
「エキドナが現出させた蛇よ。今すぐ全て消えろ!」
すると、瞬時に無数の蛇が消えた。
ふぅ……危ない。即死攻撃なんて、シャレになれないよ。
「き、貴様! 小賢しい事をしよって!
エキドナの奴、何か知らないけど、メッチャ怒って長い両腕を振り回して来たぞ。
【伝えます。能力複製により、個体名ピーター・ペンドラゴンは、個体名エキドナのアルティメットスキル、不死之怪大蛇の権能の一つ、刹刃毒爪を獲得しました。さらに伝えます。刹刃毒爪の権能は爪に毒があり、掠るだけで即死します。この権能はスキルによる防御無効です】
だから! 即死のバーゲンセールは要らねーよ!
参ったな……あれは単純な物理攻撃だろ……。何か対策はないのか?
【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンのアルティメットスキル、魔王竜之暴息の権能の一つ、カラミティーブレスの行使を推奨します。この権能は防御不可の無属性のブレスであり、不死属性にも効果があります。加えて、このブレスには全てのステータス異常と、権能が行使出来なくなる追加効果があります。この権能を行使しますか?】
そんな凄い権能があるなら、早く言ってよ! もちろんYESだ!
そして僕は、両手の掌をザルエラとエキドナに向けて翳すと、白銀に輝くブレスが猛烈な勢いで放出された。
そのエネルギー量は凄まじく、ザルエラとエキドナに致命傷を与えるに、充分なダメージを負わせた。さらに追加効果のステータス異常で、両者は絶命寸前だった。
「おい! もし僕の仲間になるなら、助けてやってもいいぞ」
「油断した……。まさか人間に……これほどの力があるとは……。だが、いいだろう……貴様の仲間になると誓う……」
「お……おのれ……。このエキドナが……ただの人間に……しかし、その力は本物だ……この不死なる肉体に……まさか深手を負わすとはな……。解った……私も貴様の仲間になろう……」
はぁ……やっと終わったか。
しかし、凄い威力だったな。カラミティーブレスは。と言うか、このままだと、ザルエラもエキドナも絶命してしまう。
僕は急ぎ、完全復元の権能を行使した。
すると、一瞬で瀕死状態の、あらゆる場所が欠損した、ザルエラとエキドナの肉体は完全に元の状態に戻り、治癒した。
「なんと。滅びゆく肉体が完全に元に戻った……人間よ。このザルエラを絶命寸前まで追い込んだのは貴様が初めて。貴様の名を聞こうではないか」
「ピーター・ペンドラゴンだ」
「ピーター・ペンドラゴンか。ではこれからはピーターと呼ぼう。そして貴様の仲間になると誓う」
「私もだ。不死なる私が死にかけた実力……。その力を認め、私もピーターの仲間になろう」
長かったけど、やっと戦いが終わった。でも、まだやることがある。
「あのさぁ。所でなんだけど、お前たちって加護を授ける事って出来る?」
「加護か? それならば出来るが。ピーターは、このザルエラの加護が欲しいのか?」
「欲しい!」
もう、即答は当たり前になってしまった。
「では、加護を授ける。ピーター・ペンドラゴンに死神之加護を授ける」
【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンは、個体名ザルエラからアルティメットスキル、死神之加護を授かりました】
「加護か。よかろう。では、このエキドナもピーターに加護を授けよう。ピーター・ペンドラゴンに怪神之加護を授ける」
【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンは、個体名エキドナからアルティメットスキル、怪神之加護を授かりました】
これで加護が──いくつだ? えっと、ああ! 11だ! いや〜集めたな〜。何か加護ハンターになってるような気もするが……加護がないと、ステータスが上がらないから、仕方ないよな……普通に戦っても、レベルが上がらないんだもん。
それとだ。コイツらも危ないから、我が国の教えを伝えよう。
僕はザルエラとエキドナに、自分が一国の教皇である事を言って、我が国の教えを守るように伝えた。
自分よりも弱い者を襲わないこと。特に人間や亜人は絶対に襲わない。それと、我が国は誰でも平等な国なので、差別をしないこと。最後に我が国は、皆が平和で笑って暮らせる国作りをしているので、皆と仲良くする事を守って欲しいと伝えた。
すると、ザルエラもエキドナも、その教えを守ると言ってくれたが、ザルエラとエキドナも、僕が一国の教皇だと知り、驚いている。
そして、ザルエラから、いつもの質問をされた。
「ピーターよ。何故、一国の教皇が、こんな危ない目に遭いながら、一人で仲間集めなどしているのだ?」
「実は、近いうちに、大きな戦争が始まるかもしれないんだ。だから強い仲間を集めに来たんだよ」
それを聞いた、ザルエラとエキドナは興奮している。
「フハハハ! 戦争か。ならばこのザルエラ! ピーターの為に戦わなくてはな!」
「私も、この不死の力で大暴れせねばな!」
「まあ、お前らの力は、僕が一番知ってるから、戦争になった時は頼むな」
「「任せろ!」」
はぁ……これで、やっと仲間集めが終わったか。
やっぱり三年もかかったか。もう少し早めに終わらせたかったが。
しかし、目的の仲間は全員集まった。これで戦争が始まっても、何とかなりそうだ。
だが、三年間もダンジョンの中にいると、時間の感覚が狂うな。
とにかく、皆が待っているダンジョンの外に出なくては。
僕は、ザルエラとエキドナに、ダンジョンの外にも仲間がいる事を伝え、一緒にダンジョンの外に向かった。
そしてダンジョンの外に向かっている最中に、僕は大事なことに気がついたのだ。
三年間もダンジョン内にいて、戦闘に夢中だったから、完全に忘れていたのだが。僕はもう19歳になっていた。
何だか、大事な十代の時期を、三年間も無駄にしたような気になったが、これだけ強力な仲間が集まったので良しとしよう。
それに、ピノネロに頼んだのは僕自身なんだし。
と言うか、僕が国を不在にしている間、一度も思念伝播が無かった事に、少し寂しさを感じていた。
僕って、もしかして、必要とされていないのだろうか。
と言うか、この三年間でどれだけ国は成長したのだろう。
非常に大変な仲間集めが終わり、やっと我が国に帰れると思った瞬間、色々と自国の事が心配になってきたぞ。
まあ、そんな事を考え出したら、きりがないのだが……。
てか、それよりも加護が凄く増えて、僕のステータスもかなり向上したと思うし。
何よりも、ずっと仲間にしたいと思っていた奴らが仲間になったのだ。
サイクロプスに、フェンリルに、マディーンに、アレキサンダーに、セラフィムに、ハーデスに、テュポーンに、ザルエラに、エキドナ。
うむ。なんて頼もしい面々なのだろう。
きっと戦争になっても、大活躍してくれるに違いない。
それにだ、コイツらを全員、首都である巨大城郭都市モンテスに連れて帰ったら、ピノネロや他の皆も驚くだろうな。
まあ、そんな事を考えるのは後にして、とにかく今は、仲間にした皆が待っているダンジョンの外に、早く出るとしよう。
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