第11章 有事の際の、新たな仲間集め

第104話 1億1000万匹の、悪魔の使い道


 いや〜なんとか祭りも成功したし、この一ヶ月は充実した日々だったな。しかも1000万匹のレッサーデーモンの屋台を見ても、誰も驚いていなかった。まあ、この国は魔物が多いし、驚かないか。


 さてと、気持ちを切り替えて、この戦争の準備期間にできる限りのことをせねば。


 まあ、僕はもう、これからやろうと思ってる事は、決まっている訳だが。問題はその期間だ。


 現在のテレサヘイズの戦力を考えると、どうしても、まだ戦力不足なんだよな。だからと言って、また無闇に淵源えんげんの悪魔を召喚するのも、どうかと思うし。


 そこで、僕は考えた。聖属性と魔属性の精鋭部隊を仲間にすると。もちろんバルルマヌルのダンジョンでだ。


 しかしこれには、六怪ろっかいや、四獣四鬼しじゅうしきよりも強大な魔人や魔獣を仲間にする必要があるし、皆には、仕事があるので、僕一人でダンジョンに行かなくてはいけない。


 自分でも大体の目安は考えたが、出来れば三年以内には全員仲間にして、テレサヘイズに帰還したい所だ。


 だが、三年近くも我が国を留守にする事に対して、ピノネロが二つ返事をしてくれるかが問題なんだよな……。


 まあ、いざと言う時は、すぐに思念伝播で連絡するようにと伝えるが……と言うか、その前に、何か大事な事を忘れているような。


 うおおおお! 1億1000万匹の悪魔召喚したレッサーデーモンと、グレーターデーモンに祭りの後の命令をしてなかった!


 僕は急ぎ、またテネブリスに思念伝播を送った。


 「お、お、お待たせして! も、も、申し訳ありません!」


 ま〜た息を切らせている。ていうか、教皇宮殿の中は走っちゃいけないんだけどな。


 「なあテネブリス。別に走って来なくてもいいんだぞ?」


 「な、何を仰いますか、ピーター様。私はピーター様の下僕ですので、一秒でも早く来るのが当たり前なのです」


 「ま、まあいいや。所でさ。大事な事に気が付いたんだ。祭り用に1億1000万匹の悪魔を召喚しただろ? でも祭りが終わった後の事を命令してなかったんだよ。もしかして、暴れていたりとか、しないよね?」


 僕の言葉にテネブリスは、丁寧に答えた。


 「問題ありません。ピーター様が召喚なされた悪魔たちは、基本的に命令が無ければ、ご主人様から命令されるまで、召喚された場所で待機するのです」


 その言葉を訊いて安堵したが、まだ問題がある。


 「でもさ。僕が死なない限り、その悪魔たちは顕現し続けるんだろ?」


 「もちろんでございます」


 参ったな……祭りの事で頭がいっぱいで、1億1000万匹の悪魔をどうするか、考えてなかった。


 「ピーター様。何かお心配な事でも?」


 「いや……あの悪魔たちをどうするか、考えてたんだけど。どうしたものか……」


 「では、暫く、お待ちください。私はピノネロ殿と、その事で話し合ってきたます」


 テネブリスは、一礼すると僕の自室から退室した。


 テネブリスの奴。最初はピノネロの事を、下賎な小ネズミとか言ってたけど、今じゃ立派な仕事のパートナーだな。


 まあ、それだけピノネロの実力を認めたってことか。


 さてと、僕は紅茶でも──


 (「ピーター様!聞こえますか?」)


 (「うん。聞こえるかど……なんか早くない?」)


 (「ピノネロ殿と、すぐに問題が解決しましたので、すぐに連絡をと思いまして」)


 (「そ、そうなんだ。で、どうなった?」)


 (「取り敢えず、モンテスの街の野外にいる1000万匹のレッサーデーモンから、問題を解決しましょう」)


 そう言うと、思念伝播が途切れた。僕はテネブリスの言う通り、モンテスの街の野外にある、1000万匹のレッサーデーモンの場所まで行った。


 あれ? 屋台がもう無い。レッサーデーモンの奴ら仕事が早いな。


 「ピーター様。お待ちしておりました」


 「お、テネブリスか。んで、ピノネロと話しは決まったの?」


 「はい。ピノネロ殿は、1億1000万の悪魔を治安維持に使い、現在、治安維持で働いてもらっている者たちは、全員軍事訓練をさせると仰っていました」


 まあ、考え方としては、ピノネロらしいな。


 「さらに、1億1000万匹もの悪魔が国全体の治安維持を、昼夜休まず警備するので、増税するとも言っていました」


 「はぁ!? また増税するの? 貴族や商人ならいいが、一般市民まで増税はちょっとなぁ……」


 「ですが、ピノネロ殿には考えがあるようです」


 「うーん。じゃあ解った」


 まあ、あのピノネロの事だし、とんでも無い暴君のような増税はしないだろう。


 「所で、1000万匹のレッサーデーモンの場所まで来たが、どうするんだ?」


 「その事を今からお伝えします。ピーター様が召喚されたレッサーデーモン1000万匹と、その後に召喚した1億匹のレッサーデーモンが進化した、グレーターデーモンは情報を共有できます。ですから命令すれば、北の大山脈で待機している、1億匹のグレーターデーモンにも命令が共有されます」


 「そっか。じゃあ転移魔法陣で転移するのも面倒だから、1億匹のグレーターデーモンに、モンテスの街の野外に来るように、レッサーデーモンに伝えるよ」


 そして僕は、一匹のレッサーデーモンに、北の大脈に待機しているグレーターデーモンは、すぐにモンテスの野外に来るように命令すると、北の大山脈で待機しているグレーターデーモンに命令が共有された。


 あとは、1億匹のグレーターデーモンが来るのを待つだけか。


 しかしピノネロは、悪魔を使って、どうやって増税するつもりなのだろう……。


 僕が思案していると、驚くべき速さで1億匹のグレーターデーモンが飛んできた。余りの数の多さに上空は巨大な黒い影で覆われている。


 「思ったよりも早かったですね。やはり進化した事により、飛行速度も上がったのでしょう」


 テネブリスが言うなり、1億匹のグレーターデーモンたちが次々、地上に降りて来た。


 僕は今回、1000万匹のレッサーデーモンと1億匹のグレーターデーモンに褒美で、また魔力を少し分け与える事にしていた。


 「よし。全員揃ったな! じゃあ今からお前らに、今回の祭りで活躍してくれたから、褒美として魔力を少し、分け与える!」


 「な、なんと! ピーター様! またもや……なんて慈悲深いのでしょう!」


 「まあいいじゃん。頑張ってくれたしさ! それじゃあ、ここにいる1億1000万匹のレッサーデーモンとグレーターデーモンに魔力を与える!」


 僕は1億1000万匹のレッサーデーモンとグレーターデーモンに、両手の掌を翳し、魔力を与えようと──したのだが……。


 あれ? なんか与えていると言うか吸われてる? おいおい勝手に魔力を奪うんじゃない。てか、これは僕の魔力消費の操作が未熟なのか。


 あっ! 終わった。てか、かなり魔力を持っていかれたな。


 【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンの残存魔力は、20パーセントです】


 うげ! そんなに? 魔力を与えるのって、操作が難しいな。

 取り敢えず、僕はインベントリにあるエリクサーを出してっと。


 僕がエリクサーを飲んで魔力を回復していると。なんだか1億1000万匹の悪魔の姿がまた変わった。


 顔はヤギから、恐ろしい鬼のような顔になり、ヤギのような二本の角は、額から後ろ向きに生えた、立派な二本の角に変わっていた。


 体付きは長身で、スリムな筋肉質の人間のような姿になった。が、両手両足には鋭い爪があり、下半身はドラゴンのような鱗で守られている。


 背中の翼も以前より大きくなり、先の尖った細いドラゴンのような尻尾まで生えている。


 と言うか、以前よりも桁違いにオーラが増している。なにが起こった?


 【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンから、大量の魔力を与えられた事により、1億1000万匹のレッサーデーモンとグレーターデーモンは、全てアークデーモンに進化しました】


 は? また進化したの?


 「す、素晴らしいです……ピーター様! まさか1億1000万匹の悪魔を全て、アークデーモンに進化させてしまうなんて……」


 テネブリスは愕然としながら、拍手をしている。


 まあ、別に強くなるのは、戦力増強に繋がるから構わないけどさ、まさかアークデーモンに進化するなんて。


 「この度は。ご主人様から多大なる魔力を頂き、感激の極みにございます。これからはご主人様の為に粉骨するしだいで御座います」


 益々、話し方が流暢になってるな……。

 だが、僕にはやる事がある。この悪魔たちはテネブリスとピノネロに預ける事にしよう。


 「えっと。僕の為に頑張ってくれるのは有り難いんだけど。これからは僕の横にいる、テネブリスの命令に従ってくれ。でも、最後に僕からの命令がある。決して、自分よりも弱い、敵意が無い者を襲わないこと。特に人間や亜人には手を出さないように。だが、敵意がある者は捕縛するように、だが決して殺すな。以上」


 「心得ました。今のご命令を守り、そしてこれからは、テネブリス様の命令に従うと誓います」


 この言葉に一番、動揺したのはテネブリスだった。


 「ピーター様! 一体なぜ?」


 「まあ、これから僕にもやる事がたくさんあるから。ピノネロと相談しながら、テネブリスがアークデーモンたちに命令してくれ! これは僕からのテネブリスに対しての命令だからな」


 「ハハッ! ピーター様のご命令とあれば、このテネブリス、1億1000万匹のアークデーモンに命令を下す役目を、ピーター様の代わりとなり、ピノネロ殿と一緒に全う致します」


 「おう! 宜しくね!」



 ────そして次の日────



 ピノネロはテレサヘイズ全体に、昨晩の内に伝書鳩を飛ばし。1億1000万のアークデーモンが昼夜問わずに、一日中、街や街道など、テレサヘイズの領土内全ての警備をする事を伝えた。


 しかし、一般市民からの増税はしなかったのだ。

 ピノネロは貴族や商人たちだけ、アークデーモンを1匹、特別に一日中の護衛に付けたのだった。


 さらに護衛を付ける代わりに税金を増やし、月に払う税金とは別に、金貨5000枚の増税をしたのだ。だが、誰一人として、貴族や商人は文句を言わず、感謝までしている。


 それもそのはずである。以前貸し出した魔物は希少級までだったが、アークデーモンは伝説級の悪魔である。断る理由が無い。


 貴族も商人も、自分の安全がまた保証される事に、大満足していたのだ。


 斯くして、ピノネロの考えを聞き、テネブリスが全てのアークデーモンに命令を下し、またもや大増税は成功した。


 ピノネロは僕の言葉を深く理解したのだろう。


 金は持っている者から搾り取れ、持たざる者には施しを。と言う言葉を。


 それを実際に行動で示すと、完璧に上手くいった。


 まあ、とにかく。これで1億1000万匹の悪魔の使い道も決まった所で、僕はこれからやろうとしている事に、集中できる訳だ。


 ピノネロには、後で僕が三年間ほど、バルルマヌルに一人で行くことを伝えなくてはな。


 なんとしても、ピノネロには首を縦に振らせなければ。

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