第80話 煉獄の大虐殺と、魔王竜への進化


 大宮殿さん! 前線の部隊人数を教えてくれ!


 【伝えます。高速解析の結果、前線部隊は100万人の兵士で武装されています。加えてバーラーの数は20万機です】


 解った。ありがとう。魂を狩る量としては充分だな。


 と言うかレイジヘイズの奴ら、もう僕の存在に気がついてバーラーで攻撃してきやがった。


 リリーゼを復活させる前に、お前らには地獄の苦しみを味わってもらうぞ。


 最初に全てのバーラーを無力化するか。

 僕は右手の掌を天高く上げて言った。


 「激灼陽炎げきしゃくようえん!」


 今度は手加減なんてしないぞ。


 僕の右手の掌の上に、半径15メートルほどの赫赫とした火球が現出した。そして、ゆっくりと敵のバーラーに向けて、天高く上げた右手を振り下ろした。


 その威力は想像を遥かに超えていた。

 瞬時にして高熱に達した熱量が、バーラーを溶かすどころか、地面全体が焦土と化している。20万機のバーラーはその膨大な熱エネルギーに耐えられず、爆発し、上空にはキノコ雲が昇っている。


 【伝えます。高速解析の結果、敵バーラーの全てを無力化することに成功しました。しかし、残りの80万人の兵士は撤退しました。現在20万人分の魂を狩り取ることに成功。残り30万人分の魂で魔王竜に進化可能です】


 20万機のバーラーは無力化させたが、残り30万か。だが悪いな、全員生かして返すつもりは無いんだよ。


 僕は右手と左手の掌をゆっくり撤退する兵士に向けた。


 「お前らには地獄の苦しみを味わってもらう。煉獄爆炎れんごくばくえん


 その言葉と同時に、掌から尋常では無い猛火が敵兵を襲う。その猛火の中では敵は死ぬことさえ許されない。


 ただ、ひたすら体の皮膚の中まで焼ける苦しみに悶え続けるしかない。


 この煉獄爆炎の権能は、猛火の中で、死にたくても死ねない絶望の炎を相手に与える権能だ。これが僕の怒りだ。


 さてと、下まで降りてどれほど苦しんでいるか、見てやるとするか。


 そのまま、ゆっくりと僕は煉獄爆炎の中に入った。しかし、僕には通用しない。なぜならば、爆燃者のユニークスキルがあるので、全ての熱属性の技を吸収し、自分のエネルギーに変換する事ができる。


 先ほどの激灼陽炎で失った魔力も、気がつくと回復していた。


 煉獄爆炎の中はまさに地獄を絵に描いたような場所であった。

 猛火の中で、もがきながら余りの高温で声も出せず、息すらできず、それでも死ねない絶望が数分以上続いている。


 誰も逃げてはいないようだな。

 僕は撤退した80万人の逃亡兵全てが、煉獄爆炎の中に呑まれているのを確認し、最後の大技を繰り出すため、右手の掌を敵兵に向け言い放つ。


 「終わりの時だ。終焉爆炎しゅうえんばくえん


 すると、僕の右手の掌の中に小さな火球が現出し、僕はその小さな火球を握りつぶした。


 と、同時に。大地を溶かす超高温のエネルギーが敵前線を包み、圧縮された熱が大爆発を起こした。

 無論、敵前線の大地は消滅し、残り80万人の敵兵は全て灰すら残さず、焼け野原の中に魂だけ残し焼失している。


 【伝えます。50万人分の魂を刈り取ることに成功しました。魔王竜への進化が可能となりました。進化しますか?】


 もちろんYESだ!


 【50万人分の魂を消費し、魔王竜への進化に成功しました。魔王竜に進化したことにより、アルティメットスキル、魔王竜之暴息を獲得しました。さらにアルティメットスキル、魔王竜之逆鱗を獲得しました。さらにユニークスキル竜王之紋章が進化し、アルティメットスキル、魔王竜之威光を獲得しました。さらにユニークスキル記憶の大宮殿が進化し、アルティメットスキル、天上之至高者を獲得しました。さらにユニークスキル亜空間部屋が進化し、アルティメットスキル、亜空間之大迷宮を獲得しました】


 よし。魔王竜に進化できた。と言うか、大宮殿さんまで、何気に進化してアルティメットスキルになっちゃったんだけど。これからは至高者さんって呼べばいいのか?


 【さらに続けます。個体名ピーター・ペンドラゴンが魔王竜に進化したことで、配下である人間と亜人以外の者はギフトが授けられます】


 な、なんだ? 何か勝手に始まったぞ。


 【配下である魔獣、魔人、吸血鬼、悪魔、竜には、それぞれアルティメットスキル、魔王竜之加護が授けられました。加えて、個体名ピーター・ペンドラゴンの配下である全ての吸血鬼は准真祖じゅんしんそに進化し、ユニークスキル、陽光克服と瞬間移動を獲得しました。さらに配下である准真祖の吸血鬼は正真祖せいしんそに進化しました】


 准真祖が正真祖──と言うことは、アグニスがついに正真祖になったのか。いや、今はもっと大事な事がある。


 早くリリーゼと四聖天ししょうでんの所に行かないと。


 そのまま僕は、飛翔幻舞ひしょうげんぶと光速疾走のスキルを使い、猛スピードでリリーゼと四聖天の三人が絶命し横たわっている、帝都フィオレの帝城の中にある、帝王の間まで向かった。


 大──至高者さん。魔王竜にはなったけど、このまま治癒之大精霊を生贄にして魂魄反魂こんぱくはんごんの権能を行使したら、やっぱり僕も死ぬのかな?


 【伝えます。魔王竜に進化したことで、以前よりも魔力が20倍になっています。なので命に関わるほどの魔力消費がないので絶命はしません。ですが魂魄反魂の権能を行使すると、治癒之大精霊は生贄になり、治癒之大精霊の権能が全て消滅しますが、それでも構いませんか?】


 ああ。リリーゼたちが生き返るなら安い代償だ。

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