第62話 改革は続けど、まずは試食会
鳥の鳴き声で目が覚めた。うーむ、今日もいい一日に──てか、鳥うるさ!
僕はすぐに窓を開けて、鳥を追い払った。
鳥たちは自由に空を飛び──そう、自由に……あああああ!!
ど、どうしよう……。一番お世話になってるドラゴンの里に、公衆浴場を作るのを忘れていた。
僕はすぐに、思念伝播をエルに飛ばした。
(「エル! 聞こえるか?」)
(「あっ! ピーター様! おはようございます! 聞きましたよ〜公衆浴場の件」)
(「そう、それなんだけど。ドラゴンの里にいるドラゴンは、全員が擬人化できるのか?」)
(「まあ、なれますよ。中には半人半竜の者もいますが。それが何か?」)
(「ごめんエル! すっかり忘れてた!」)
(「何がです?」)
(「いや、何がって。ドラゴンの里に公衆浴場を作ることだよ!」)
(「何言ってるんですか? ドラゴンの里には竜の姿のままでも入れる。大きな秘湯があるんです。その上、公衆浴場なんて作ったら、ドラゴンの里がお風呂の里になっちゃいますよ」)
(「え? そうなの? わ、解った。あと、出来れば皆、朝食は余り食べないでくれ。そんで、朝食が終わったら、参謀会議室に全員呼んでくれ! 頼む!」)
(「わっかりました! ピーター様」)
はあ……なんだよ。ドラゴンの里って、温泉あったんだ。急に焦ったから、朝から冷や汗が、ダラダラだ。風呂にでも──おお。忘れてたぞ!
王宮の風呂場にも、露天風呂を作るんだ。
もう頭の中では、配管や排水管の整備についての知識はあるから、すぐに創造できるぞ。だったら──完全復元で復元可能だ。
そして僕は、王宮の風呂場に露天風呂を復元させた。
うむ。ちゃんとお湯も来てるし、排水もされている。
それじゃあ──朝の露天風呂に入りますか。
なんて豪華なんだ。朝から、お風呂を貸切で優雅に露天風呂。
(「ピーター様!」)
お、エルからの思念伝播だ。
(「どったの? まだ朝食の時間じゃ──」)
(「そ、それがですね……朝食を余り食べないようにと、皆に伝えたら、また美味しい料理が食べられると思ったらしく。全員もう参謀会議室まで集まっちゃいました」)
(「はぁ……解った。今すぐ行くよ」)
あと十分ぐらいは、のんびりしようと思ったのに。だが、あの豚骨ラーメンを食べたら全員驚くぞ! ついでに朝から豚骨ラーメンはヘビー
だがな。
んまあ、大丈夫でしょ!
そして、意気揚々と参謀会議室まで行くと、急にウーグに詰め寄られた。
「ぴ、ピーターさん! なんであんな大浴場の入場費の相談を、してくれなかったんすか!! しかもお湯以外に何すか? あの体や髪が綺麗になる魔法の液体は! あれなら一度の入浴に金貨1枚は取れるっす!」
「おいおい! 公衆浴場なんだから、そんなことしたら国民が毎日入れないだろ! それに体や髪が綺麗なる魔法の液体はサービスってことで。そうだな──入浴料は一回につき銅貨1枚にしよう!」
ま、まあ本音を言うなら、ウーグの言う通りシャンプーやリンスやボディーソープは別売りにした方が、儲けは出るが、この公衆浴場の噂が広まれば、流入が増えるだろうし、国民や旅人さんが気軽に入浴できるように、安くしておこう。
「ど、どどど銅貨たったの1枚!? ピーターさん今すぐ目を覚ますっす! これは改革どころでは無いですよ! 国家名物になるっすよ! だから金貨1枚に──」
「ダーメ! お金が無い人の為に作ったんだ! ちゃんとお金を持ってる貴族用に、あの公衆浴場よりも凄い入浴場を作る予定だから、安心しなさい! お金はある所から貰う! 無い所からからは貰わない! 無い所から貰ったら、だたの圧政だろ!」
「そ、そうっすけど……」
ウーグはまだ納得行って無いようだが、他の皆は僕の意見に賛同してくれたので、多数決で公衆浴場の料金は一回銅貨1枚に決定した。
さてと、これからが本題だ。
「皆の顔を見れば解るぞ! また美味しいものが食べられると、思っているんだろ?」
全員首を縦に振っている。吸血鬼の街ミストスでの宴会で披露した、タレの効果が相当効いてるな。
それじゃあ出し惜しみしてないで、さっさと出しますか。
「完全復元! 豚骨ラーメン5杯お待ち!」
すると、円卓に5杯の豚骨ラーメンと箸とレンゲが具現化された。
「何よ。肉が少ないわね」
「ピーター様。私も肉が少ないと」
「私は朝から肉は重たいので遠慮しますが、肉の薄切り一枚は少し少ないかと」
「そうっすよ! 急にケチになったすね! ピーターさん!」
「うるさいなー! この料理は肉はオマケで、スープと麺を楽しむ料理何だよ!」
仕方ない。僕が手本を見せるか。
そして、まずはレンゲでスープを啜り、その後に細麺を箸で掴み、一気に口の中に流し込む!
「美味いいいいい!! やっぱ何度食べてもラーメンは美味いなぁ──あれ?」
皆が箸の持ち方が解らず、苦戦している。
はぁ……。物質創造でフォークを4本出してやるか。
「フォークよ4本出ろ。これなら食べられ──る、ってもう食べてるし!」
「「「「美味いいいいいい!!」」」」
う、うわ〜。朝から豚骨ラーメンに貪りついてる四人が……円卓にいた。
しかもスープまで綺麗に飲み干してる。
「「「「おかわり!!」」」」
「お、おい。これは試食会なんだ。それにこの食事は栄養価が高いから、食べ過ぎると太るぞ。取り敢えず、まだ足りない人は、食事の間で、朝食を済ますこと」
そう言うと、四人とも──ションボリしながら参謀会議室から出て行った。
しかしだ──公衆浴場に続き、豚骨ラーメンも成功だ。
あとは、この豚骨ラーメンを国民の全員が食べられるように、料理人を探さなくては。
それに、ギョーザにチャーハンも早くレシピを完成させないとな。
よし、料理人はこれだけ大きな街なんだし、探せばいるだろう。
次なる改革は衣食住の住だな。
何たって、これから難民の受け入れや戦争孤児や、ミストスの街から10万人の吸血鬼が来る。早く住居を建設せねば。
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