第61話 大反響の公衆浴場と、次なる改革はなんと言っても食事


 翌朝、僕は目が覚めると、すぐさま昨夜作った公衆浴場の前に行った。

 

 すると──思っていた通り、街中の住人が公衆浴場の建物の前に、密集していた。なので僕は敢えて大きな声で、道を開けてくれと頼んだ。


 『うおおおお! ピーター教皇様だ!』


 だろうな。当然の反応だ。だって実際に僕が街中の住人の前に、姿を見せたのは初めてなのだから。


 ホログラフィーではなく、実際にお偉いさんに出会うと、やっぱり誰もが萎縮してしまうものだ。が、今はこの公衆浴場の説明だ。


 「皆聞いてくれ! この建物はお湯が出るお風呂だ。名付けて公衆浴場! そして、聞いたぞ。皆はお湯に浸かる事ができず、お湯は貴族だけの嗜みだと──しかし! テレサヘイズは差別を許さない! 誰もが平等でなくては行けないと思う! そしてこの公衆浴場は昨晩、ぼ──私が建造したものだ! まだ作ったばかりなので、何か不便な事があれば遠慮せず言って欲しい。まあ。話が長くなったが。今日は初の公衆浴場の体験日だ! 今日の入浴は無料とする! 皆は心置きなく湯船に浸かってくれ!」


 『うおおおおお! 教皇様万歳!!』


 僕の言葉に舗装した地面が揺れるほどの、大歓声が鳴り響いた。無理もない、ウーグから前に聞いていた、平民は皆、近くの河原で水浴らしいから、喜ばれて当然だろう。

 ついでに、これは水をお湯にしただけでは無い。天然温泉だ!


 まあ、貴族たちの反感を買うと思うが、小うるさい貴族用に、もっと施設が整っている、思案していた他国を迎え持て成す迎賓地区に似た、巨大アミューズメント的な公衆浴場や高級宿泊施設なども作ってやろう。


 それに金勘定が苦手なので、一回の入浴にどれぐらいの値段を付けるか、後でウーグと相談しなくては。


 そして──お昼過ぎ、民衆たちの顔を見れば解る。大いに喜んでいた。

 サウナの使い方も、ちゃんとサウナ室の前に書いておいたし。何よりドワーフのガリョー四兄弟がサウナを偉く気に入っていた。


 そして、是非ドワーフの街、ドミールにも公衆浴場を作ってくれてと、懇願されたが──当たり前だ。これはテストであり、民衆が喜ぶかを見て、僕は初めから自分の領土内の街に公衆浴場を作る予定だったのだ。


 力仕事で疲れたドワーフたちにとって、公衆浴場は絶対に気入れられると思っていたが、やはり気に入られた。


 よし! それじゃあもう、公衆浴場の作り方は頭にインプットされているから、ささっと作りに行きますか!


 そうして僕は、飛翔幻舞ひしょうげんぶのスキルを使い、リスタの街、ドミールの鍛治職人の街、ミストス、さらに元エンジェルヘイズの首都であるメセスまで行った。


 正直、今日初めて元エンジェルヘイズの首都の、名前がメセスだと知ったが──まっ、いいや。

 それよりも、リスタの街だよ。あの物乞いの毒親がいる、リスタの街には正直な所、公衆浴場は作りたくなかったがは──ここは巨乳女鑑定士さんの顔に免じて作ってやろう。


 その前に、一つ確認したことがあった。


 吸血鬼がお風呂に入る習慣があるのか、マラガール公に尋ねると、無いとのことだ。なので、その場で一人用の簡易的なお風呂を、物質創造で作り、マラガール公に入ってもらうと、偉く気に入られたので。ミストスの街にも公衆浴場を作ることにした。


 作り方は至ってシンプル。昨晩と同じ事をすればいいのだ。


 そして、天然温泉を使った豪華な公衆浴場をテレサヘイズの街々に作り、その日は終わり僕は王宮の自室に戻った。


 うーむ、後は金銭面だな。この公衆浴場から流れてくる金銭だけでも、かなりの国家予算倍増になると思うが──まだまだ、これからが序の口である。


 そう! 愛おしきラーメンである! できればギョーザにチャーハンも作りたかったが。焦っては行けない。


 なので僕は、まずラーメンだけに意識を注いで、物質創造の権能を使い、前世で食べた、豚骨ラーメンを具現化させた──ついでに箸とレンゲも。


 よし食べてみるぞ──ん? これは──味が無い。


 でもまだだ、諦めるな。僕には空想言語実現の権能もあるのだ!


 僕は前世で食べた豚骨ラーメンの味を、思い出させるだけ思い出し、言い放った。


 「目の前にある豚骨ラーメンよ! 僕の知る味になれ!」


 さてと──どうなるか。


 ────こ、これは!? まるっきし僕が前世で食べた、豚骨ラーメンの味だ。しかしここで問題があるぞ。


 この豚骨ラーメン……僕が一々、権能を使い具現化させていたら、国家の仕事に手が回らない。さて、どうするか……。


 【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンが現在食した物を、成分分析し、その分析結果をレシピとして、物資創造する事が可能ですが、行いますか?】


 あったり前でしょ! YES! YES! YES!


 【分析完了、食品名、豚骨ラーメンのレシピが出来たので、物質創造の権能を行使して下さい】


 いや〜まさか、こんなにも、あっさりと夢の豚骨ラーメンのレシピが完了するとは。


 ではでは、物質創造の権能を使ってと──よし、紙に書かれたレシピは無事に創造されたぞ。


 って、ちょい待て。このレシピ──前世での食材ばかりじゃん! どうしよう!


 【伝えます。問題ありません。レシピ内の食材は全て、物質創造と、アルティメットスキル、支配者之天運の権能の一つ、完全復元の両方の権能を行使する事により、創造可能です】


 完全復元?


 【伝えます。完全復元とは、前世での記憶や分析した物を完全に再現する事が可能な権能です。ですが、物質創造や空想言語実現の権能を行使した結果に左右され、曖昧な想像力だけでは、曖昧な復元となってしまいます。加えて伝えます。この完全復元は創造した物質を、大量に復元することも可能です。さらにアルティメットスキル、治癒之大精霊でも行使不可能である、他者の権能による肉体の特殊欠損も完全復元可能です】


 なんじゃそりゃ! 今度は完全復元! これも使い勝手の良さそうな権能だな。僕にピッタリじゃないか。しかも大量に復元とは、たまりませんなぁ〜。さらに特殊回復までサポートとは!


 しっかしマジかよ! 夢じゃ無いよな? ここに来て、また新たな僕にとって相性の良い権能が手に入るとは。


 しかしまあ、なんだかんだで、よかった〜。食の重要課題のラーメンの問題もほぼ解決。後は、皆が会議室に集まってから食べされるとするか。


 最終的な問題があるとすれば──料理人探しだ。


 だが今日はもう早めに休もう。


 昼夜逆転してしまった体を、元に戻さなくては。

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