第63話 大建築、20万人分の住居
さてと、僕も朝ごはんの豚骨ラーメンを食べたとこだし。
次なる改革は住である。
なんせミストスの街から10万人もの──ん? 思念伝播だ。誰だろ?
(「私です。マラガールです。ミストスでの宴会では、大変美味な食事を有難うございます」)
(「え? いや、そんな。大したことじゃ──」)
(「つきましては、以前お伝えした、10万人の腕に覚えのある吸血鬼を、今夜ルストの街に到着させますので、ピーター様の好きにお使い下さい」)
(「え? 今夜? わ、解りました!」)
ヤバいヤバいヤバい!
早く住居を建築しないと。
取り敢えず吸血鬼10万人分の住居だろ──残るは難民と戦争孤児の住居10万人分。合わせて20万人分か……。
夜までに間に合えばいいが。
とにかく誰かの住居を参考にしないと。
前世での僕の記憶の住居だと──この街では目立ちすぎるからな。
レンガ造りの一階建の家ぐらいか。
そうだ! ウーグの家を参考にしよう!
そして僕は、まだ朝食を食べているウーグを見つけ、ウーグの家に案内してくれと頼んだ。
「別に構わないっすけど。結構散らかってますよ?」
「大丈夫。男の一人暮らしが、いかに散らかっているか知ってるから」
「なら、いいっすけど」
そのままウーグは朝食を終わらせ。僕とウーグは、ウーグの住む住居に向かった。
まあ、予想はしてた。うん、予想はしてたんだ。けどこれは予想以上に汚い!!
「おいウーグ! ちゃんと掃除してるのか?」
「失礼っすね! ちゃんと一年に一回はしてるっす!」
それ掃除って言わないだろ!
でもまあ、外観は他の国民と同じレンガ造りの一階建の建物だ。しかし、足の踏み場が無いな。
【伝えます。この住居内のスペースを記憶の大宮殿の権能の一つ、高速解析で解析しますか?】
もちろんYESで。
【伝えます。個体名ウーグ・ドースの住居面積は約18平方メートルです。前世の記憶である畳に置き換えるなら、約十畳です】
十畳か。一人暮らしなら大丈夫かな?
このスペースで世帯を持ってる家庭もいるし。
「有難うウーグ! それと、ちゃんと掃除しろよ! 今度抜き打ちテストして汚かったら、お前だけ豚骨ラーメン抜きだからな!」
「あぁ〜! 酷いっす! 何でそうなるっすか!」
一人で落ち込むウーグを後にし、僕は考えていた。ウーグの住居を基本にし、20万人分の住居を作る場所探しである
大宮殿さん。この街に20万人分の住居を作るスペースってある?
【答えます。北方エリアに、まだ未開拓地区があり、全て平地にすれば20万人分の住居を確保できます】
うわ〜。まずは平地作業か。これは、支配者之天運の権能をフル活用しなくては。
僕はまず、大宮殿さんが言っていた、北方エリアまで向かうと──街の中に森がった……。
こ、これ全部を平地にするのか……。
しかしだ、平地で舗装された場所なら、この街で嫌と言うほど見ている。なので夜までにさっさと終わらすぞ!
「森よ。全て舗装された平地になれ」
すると、一瞬にして、森だった北方エリアが、舗装された平地になった。
次は──流石に完全復元の権能が大量に復元可能とは言え、20万人分は無理だよな……。
【伝えます。空想言語実現の権能を使えば、20万人分の住居を建築可能です】
ま、マジで!?
「じゃ、じゃあ行くか。舗装された平地に20万人分の住居よ現れろ」
すると、またしても一瞬で、レンガ造りの一階建の20万人分の住居が出来上がった。
な、何でもありだなこりゃ……。
それに大きさも──よし、十畳ぐらいだ。
これで、今夜我が国に来る、吸血鬼10万人分の住居と、難民や戦争孤児が住める10万人分の住居は完成した。
まあ、難民や戦争孤児の住居が足りなかったら、最悪ルストの街の横に巨大な住居施設を作るしかないな。
大宮殿さん。このルストの街って何人ぐらいの人が住んでるの?
【答えます。現在ルストの街の総人口は20万人であり、今夜来る吸血鬼10万人を含めると、30万人になります】
うへ〜あのミストスと同じぐらいか。てか、面積で言うと、ミストスに負けてるから、また人口が増えることを考えて、街も大きくしないと。
しっかし、20万人分の住居が一気に建て並んでいるのを見ると、圧倒されるな。だって、よくよく考えると、この20万人分の住居は現在のルストの総人口と同じ何だもんな。
それを、未開拓の北方エリア全体を舗装し、平地にしてから20万人分の居住区にしてしまったのだから。我ながら、やり過ぎた感が否めない。
だが未開拓の地で良かった。誰にも見られずに一気に20万人分の居住区が完成できたぞ。
後は、夜になって吸血鬼の皆さんを──って、集中し過ぎてたから気がつかなかったけど、もう夕方じゃん。
またしても、ヤバいヤバい。
いきなり10万人の吸血鬼さんたちが来て、お出迎えしなかったら、無礼になる。
そして、僕は思念伝播で夜に10万人の吸血鬼さん達が、ルストの街に援軍と夜間警備隊も兼ねてやってくる事を、エルとアグニスとウーグとピノネロに伝え。全員でルストの門の前で、出迎えた。
ところで、大宮殿さん。空想言語実現で、10万人分の豚骨ラーメンを具現化することってできる?
【答えます。可能です】
よし。これでお持て成しの料理も完璧っと。
お、そうこうしているうちに──来たぞ10万人の吸血鬼さんが……って、やっぱ想像してたけど、凄い数だな。
僕は10万人の吸血鬼さん達に、住居の場所とルストの街で夜間警備隊の仕事をして欲しいと話しをした──が、10万人の吸血鬼さんは、今すぐにでもマギアヘイズとの戦争が始まると思ったらしく、何だか拍子抜けしているようだった。
しかし、戦争が始まるまで、夜間警備隊の仕事をする事に対して、喜んで引き受けてくれた。
今日の所は長旅で疲れているだろうと思い、北方エリアの居住区まで案内し──とうとう完成した豚骨ラーメン10万人分を振る舞うと、今朝と同じ光景と言葉が飛び出た。
『おかわり!!』
「た、頼むからまた次にしてくれ。また10万人分用意するのは、しんどい!」
そう言うと、まだ少し、スープがついたフォークを舐めながら、10万人の吸血鬼さん達は、自分たちの住居に戻って行った。
その後ろ姿は、今朝と同様、何だかガッカリしているようだったが──ごめん皆! 僕にも限界があるんだ! 今日は休ませてくれ!
そう心の中で思いながら、僕は王宮の自分の部屋に戻り泥のように眠った。
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