第42話 同盟を結ぶ為、リリウヘイズの首都フィオレに


 「ダァ〜。なんかドッと疲れたよ〜」


 メイドさんから紅茶を貰い、一気に飲み干すと、そのまま、また参謀会議室まで戻る僕。


 「あっ! お疲れ様っす! どうしたっすか? 親子の感動の再会だったんじゃなかったんすか?」


 「いや、感動は無かったよ。それに王の間で従者として、横にいるアグニスには詰問されるし……疲れたよ〜」


 「疲れたなんて言ってられないっすよ。早く女帝リリーゼがいる首都フィオレに向かわないと」


 「首都の場所──知ってるのか? ウーグ」


 そう言うと、胸に手を当てて、誇らしくウーグは言った。


 「当たり前っす! 首都フィオレは巨大な塔の、てっぺんにある街っす!」


 巨大な塔か……って、初めてリリウヘイズに行った時に、騎士団の人たちが警備していた、あの馬鹿でかい塔の上か!?


 なんでまた、そんな厄介な場所に首都なんて作るんだよ……。これじゃあ気安く入れない──あっ! 誰にも頼らないという意思表示で、そんな場所に首都を作ったのか。


 これは思った以上に厄介な政治になりそうだ。だが逆に成功すれば大きなメリットになる。まさに大博打だな……。


 仕方ない、多分だが力技になると思うが──リリウヘイズにもう一度行くか!


 「アグニス! 前にリョクイと戦ったデカい塔の真下まで、転移魔法陣で瞬間移動できるか?」


 「できるけど……私はもう、リョクイと戦うつもりはないから。戦うならアナタがしなさい」


 その言葉を聞くなり、エルがアグニスに叱った。


 「おいアグニス! ピーター様に向かって、なんて口の利き方だ! 貴様も一緒に戦うのだ! 解ったか?」


 「は、はい師匠! 解りました!」


 何だこの三文漫才は……とにかく、リリウヘイズに向かわなくては。


 「アグニス頼む!」


 「任せなさい!」


 そして、アグニスが地面に両手を翳し、煌びやかな転移魔法陣が浮かび上がり、僕とエルとアグニスは、リリウヘイズに転移し向かった。



 おっ! 眩い閃光が次第に薄れて行くと、例の巨大な塔の真下にいた。

 僕はまた、塔を見上げたが、余りの大きさに首が痛くなった。


 「む! 何やつだ!」


 おっと警備兵の翼亜人さんに見つかってしまった。


 しかし、塔もデカいし、翼亜人もデカいんだよな。3メートルぐらいはあるぞ、身長。


 「ぼ──私の名はテレサヘイズの教皇ピーター・ペンドラゴンです。一刻を争う重大案件ゆえ、突然のご訪問失礼しました」


 そう言うと、警備兵の翼亜人は、手に持つランスを下げて、大きく口笛を鳴らした。


 すると、大人数の警備隊が集まってきた。


 「お呼びでしょうか? 警備隊長様!」


 何だ、この人、警備隊長だったのか。


 「いいですか皆さん? この方々はテレサヘイズの教皇だと名乗っているが、本当か?」


 すると部下の一人でいかにも情報通のような、翼亜人のお姉さんが、本当にテレサヘイズの教皇だと伝えてくれた。


 しかし、本当に外部から情報を遮断している国なんだな。警備隊長ですら、僕を知らないなんて。


 「大変ご無礼をした。しかし我らは誰の手も借りぬ。もしリリーゼ様に謁見したいと言うのであれば、謁見に見合う実力を見せてもらう」


 え? 何これ? やっぱり戦う流れなの?

 警備隊長が手に持つランスをまた、構え直し、こちらにランスを向けてきた。


 仕方ない。ここは教皇の僕が力を見せないと、ダメらしい。これだから絶対君主制の武装国家は嫌いなんだよ。


 って、言ってる場合じゃないか。


 暴れる為に来た訳じゃないからね、ここは帝王之魅了の絶対命令の権能を行使するか。


 「あ〜ごほん。えっとだね。そのランスを今すぐ引っ込めて、私たちを塔の最上にあるフィオレの街まで案内しなさい。そして、リリーゼ殿に謁見した旨を報告するように」


 「ハッ! 今すぐ!」


 すると、その場にいた、大人数の警備隊の人にまで、絶対命令の権能が発動してしまい。僕とアグニスは、ドラゴンの姿に戻ったエルの背中に乗り、首都フィオレまで案内された。


 そして数十分ほど、上空に向かって飛ぶと、目の前には、極楽浄土のような肥沃の街が現れた。


 うへ〜。もっと殺伐とした首都だと思ったが、なんて立派な街なんだ。

 テレサヘイズも見習って、こんな感じの街にしたいな。


 「では! 我々は、リリーゼ様に謁見できるように、準備してきます」


 一礼をされ、そのまま飛び立つ警備隊長と警備隊の皆さん。

 さてと、早くリリーゼさんに会いたいんだが──少し時間ができてしまったな〜。


 「おんや〜? お前たちは〜前にも〜見たね〜」


 うげ! よりにもよって、いきなりリョクイと出くわしてしまった。


 「今度は〜殺すよ〜。この首都に土足で踏み込む意味を〜理解させるために〜」


 「おうおう! 何だか面白そうな事してるじゃねーか!」


 なんか頭に白い布の行人包をした僧兵姿の大振りの矛を二本背中に背負った、バカデカい人もやってきたぞ。5メートルぐらいかな? 身長は。

 しかも腰には四本も大太刀を佩刀している。


 「おやおや〜セーギュー君じゃないか〜。ちゃんと持ち場にいないと〜オフクロさんに叱られるよ〜?」


 「細かいことはいいんだよ! それよりも、凄いオーラを感じたから、すっ飛んできたんだ!」


 あっ! 気配遮断のスキルを使うの忘れてた!

 って、言っても。エルは気配遮断のスキルが使えないし、意味ないか。


 エルも相当ドラゴンのオーラが出てるし。


 てか、こんな街中で戦うの? それにリョクイと同じ翼が四つ。もしかして、こいつも四聖天の一人なのか? リョクイと対等に会話していたし。名前はセーギューとか言ってたな。


 「丁度いいぜ! 新調したての矛の威力を、為そうと思ってたんだ」


 それは一体誰に試すんですかね〜?


 「あの〜私たちは──リリーゼ殿に謁見しにきただけの使者でして──」


 僕が話し終わる前に、攻撃してきやがった! 光速疾走のスキルがあったから、何とか躱わせたけど──こいつ、本気だ。


 「さあ! いっちょ楽しもうぜ! テレサヘイズの教皇様よぉ!!」


 ダァ〜〜!! もうこうなったら、やってやろうじゃないか!!


 かかってきやがれ!!

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