第37話 凄腕ドワーフを勧誘するため、ドミールの街に
「ピーター様! 見えてきましたよ! あれがドワーフの街、ドミールです!」
「何だか上から見ると、あまり大きな街じゃないな」
「ドワーフは基本的に地下に工房がありますから、地上から見ると小さな村街ぐらいの大きさなんですよ」
確かに、僕が知るドワーフの知識は、地下に工房があるイメージだが……本当にイメージ通りだな。
しかもエルのやつ。最初は敬語じゃなくていいって言ったのに、気がつくと敬語が定着してしまった。
エルはエルなりに僕に気を遣ってくれているのだろうか?
いざ、大事な国家間での面会の時に、エルも同伴して、ポロッとタメ口が出てしまうことを危惧しているのかもしれない。
「よし! この辺でいいだろう! エル! 降ろしてくれ!」
「解りました! ピーター様!」
そして、ドワーフの街ドミールの関所の手前で、地上に降りる僕とエルとアグニス。
例の如く、エルはすぐに、ゴスロリ姿の巨乳さんに変身した。
すると、突然。関所の衛兵が、僕らの方へ駆けてきた。
「お〜い! なんかドラゴンがこの辺に──って、貴方様は教皇様!」
やっば、いつもの燕尾服じゃなくて、教皇の姿で来ちゃったよ。
んまっいっか。これなら、関所も簡単に通れるだろう。
しかし、教皇ってだけで、いきなり片膝をついて頭を下げられるとは……恐るべし、権力とは恐ろしいな。だがこの権力を使い……モテモテに……。
「アナタ今、碌でもない事を考えていたでしょ?」
アグニスに言われた。
な、なぜ解ったんだ? 思念看破のスキルもないのに。
「え? 碌でもないことなんて考えていませんよ。ヒュ〜ヒュ〜」
吹けない口笛で誤魔化してみたが、意味なかった。
「アナタが教皇になるのは勝手だけど、教皇はお飾りじゃなくて、ちゃんと国をまとめる重要な人物なのよ? 解ってるの?」
「わ、解ってますよ〜。ヒュ〜ヒュ〜」
まあ、こんな三文コントをやっている場合ではない。
「衛兵さん。僕たち、武器防具が必要で来たんだ。門を開場してくれないか?」
「ハッ! 今すぐに!」
嗚呼、素晴らしきかな、教皇の権力。
そして、門が開場され、街の中に入ると、至る所で鉄を叩く音と、水が蒸発する音が聞こえる。
さらに目の前には、堂々とした地下に行く為の階段があるのだった。
しかしだ、折角ドワーフの街に来たんだから、首都にも何人かドワーフが来てくれた方が助かる。
【伝えます。ドミールの街で一番有名な鍛治職人は、ガリョー四兄弟です】
んじゃ、そのガリョー四兄弟を勧誘しに行くとするか。そうすれば、鍛治以外にも、王宮を大聖堂にする技術もあるだろ。
つまり、武器も防具も王宮を大聖堂に早く作り直す計画である。
そして僕ら三人は、ガリョー四兄弟を首都ルストに来てもらえないか、勧誘しに地下の工房に繋がる、大きな地下階段を下った。
うお! 地下の中はさらに、鉄を叩く音と、水が蒸発する音が響いているな。しかも、休憩所の酒場などまである。
地上よりも栄えているんじゃないか? 面積的にも倍以上あるし。
僕が当たりをキョロキョロ見回していると、一人のドワーフが声をかけてきた。
「やや! これは教皇様! こんな場所に一体なぜ、いらっしゃるので?」
「丁度いい。キミに訊きたいことがある。この街に凄腕のドワーフ四兄弟がいると聞いて、是非とも首都ルストに来てもらえないか、誘いに来たんだよ」
「四兄弟ですか? なら酒場に来てください。今は丁度、休憩時間なので」
おお。酒場に行けば会えるのか。一々探す手間が省けたぞ。
酒場──えっと、あった! って、デカい酒場だな。
んじゃ入るとしま──僕が入ろうとした時に、一人のドワーフが店のドアから吹っ飛んできた。
「アデデデ……何するんだ! 兄者!」
「うるせー! 俺は今、折れず曲がらずのプラチナソードが作りたいんだ! なのに、鉱石がないから、鉄の剣しか作れねー。俺は絶対に鉄の剣なんざあ作らねーからな!」
「つっても、プラチナ鉱石なんて、ドラゴンの里にでも行かない限り……」
「うるせー! 黙ってろ! 酒が不味くなる!」
あちゃ〜お取り込み中みたいだった?
でも気を取り直して、いざ中へと。
「あの〜この中にガリョー四兄弟はいるか?」
すると、さっきの怒鳴り声の主が、僕に詰め寄ってきた。
「なんだなんだ? お偉い教皇様が何しにドワーフの工房に来やがった?」
うわ〜喧嘩モード全開だよ。
でも、ここは一つ、大人の対応を。
「いや〜この街に凄腕の鍛治職人のガリョー四兄弟がいるって聞いて、是非とも首都ルストで、鍛治や大聖堂作りを手伝ってもらおうと、誘いに来たんだ!」
「そのガリョー四兄弟の長男だったら俺だ! 俺は今、頭に来てるんだ! いくら教皇様でも──」
「ふふふ、口喧嘩をしている時に話しは聞かせてもらったよ。プラチナ鉱石が必要なんだろ?」
「何だ? 話が早いじゃねーか。もしかして、プラチナ鉱石でも持って来たっていうのか?」
僕は不敵に笑うと、何も無い空間に黒い空間を作り、インベントリを開いた。
実はドラゴンの里で、二回目のステータスを見るときに、ついでに、かなり拝借してきたんだよ。プラチナ鉱石を。
エンシェントドラゴンは里の英雄だから、好きなだけ持って行けって言ってたし。
そして、ガリョー四兄弟の長男にプラチナ鉱石の結晶を数千キログラム見せると、長男は腰を抜かしていた。
「こ、こいつはたまげた。プラチナ鉱石だけでも、貴重なのに、その数段上の結晶がこんなに……た、頼む! こいつを俺に譲っちゃくれねーか? 頼みだったら何でも聞く! 俺は自分の腕をもっと鍛えるために、上品質なプラチナソードやプラチナメイルが作りたいんだ!」
うむ。この勝負、僕の勝ちだな。
そして、僕はこのプラチナ鉱石の結晶を全て譲渡することを条件に、首都ルスタで工房を開き、そこで武器や防具を製作してもらうこと。そして、王宮を速やかに大聖堂に作り直す為の指揮を執ってもらう事の二つを条件に話すと、すぐさま承諾してくれた。
まあ、ぶっちゃけチャームを使えばいいだけの話しだけど、僕もプラチナソードとかみてみたいし──あわよくば、ギャンブラーでも装備できる短剣なんかもあればいいな。
そんなこんなで、細かい話しは後にして、ガリョー四兄弟の長男はルストに来てもらうことになった。残るは、三人だな。最悪チャームのスキルで何とかしよう。
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