第38話 ドワーフ四兄弟を仲間にし、ルストの街へ


 僕はプラチナ鉱石の結晶に見惚れている、凄腕ドワーフ四兄弟の長男に話しかけ──る前に。


 見た目は、ドワーフだけあって、背が低く筋骨隆々だ。そして……みんな顔がほぼ一緒に見えるうううう!!!!


 どうやって見極めろっていうんだ? あっ! 髪型か。

 長男はかなりのテンパーだから解りやすい。


 「所でだ、俺たちは四兄弟だが、長男の俺だけが行けばいいのか?」


 タイミングよく、長男の方から本題を出してきたぞ。


 「いや、出来れば全員がいい。異論がある奴もいると思うが──」


 「異論? バカな事言っちゃいけねーよ。教皇様! こいつらは全員俺の兄弟であり、俺の弟子だ。異論なんて言う日には、俺の鉄拳が黙っちゃいねえ!」


 あらまあ、随分と体育会系なのね。


 「紹介がまだだったな! 俺はガリョー四兄弟の長男リコだ! そして俺の可愛い兄弟にして三馬鹿弟子を紹介する! 次男のリクーに、三男のリシン、そして末っ子のリンだ!」


 「「「初めまして教皇様!」」」


 恭しくお辞儀される僕。

 しかも長男のリコが三馬鹿と言っていた三人にだ。


 どちらかといえば、礼を弁えているのは、この三人の方だと思う。


 「おう! オメーら! その教皇様は今日から俺の友達になったんだ! そんな堅苦しい挨拶はしなくていいぜ!」


 なってない! なってない! 勝手にならないで下さい!


 うーむ、どうやら悪い奴ではなさそうだが、礼を知らない奴のようだ。まさに、鍛治に全てを捧げた職人で、他のことには頓着しない性格みたい。


 「そんでだ、お前ら! これから俺ら四人はルストの街に行く! 異論がある奴は?」


 「「「いません!」」」


 「よ〜っし。そんじゃ決まりだな。おい教皇様! このプラチナ鉱石の結晶、またしまっておいてくれ!」


 何とも教皇扱いが荒いやつだ。


 そして、言われるがまま、インベントリに、全てのプラチナ鉱石の結晶をしまう僕。


 というか、次男、三男、四男。ど〜やって見分ける?


 次男と三男は短髪、四男は坊主頭か──ん? 次男は右腕に火傷の痕、三男は左腕に火傷の痕。覚えられるとしたら、そんぐらいか。


 まあいいや、解らなかった、失礼だけど、効けばいいだけどの話しだ。


 所で大宮殿さん。プラチナ装備ってどんな特殊効果があるの?


 【答えます。プラチナ製の武具は魔法攻撃無効化に加えて、聖属性攻撃が二倍になります】


 ほえ〜。って! 魔法が無効化されるの? そりゃ、職人魂に火がつくわけだ。


 「所で四人には、これからルストの街で鍛治や大聖堂作りをしてもらいたいんだが、忘れ物とかあったら今のうちに──」


 「ああん? 忘れ物だ? 職人って言えば決まってる! 仕事道具はこの両腕よ!! そうだろオメーら!」


 「「「おっす!」」」


 なんか益々体育会系に見えてきたよ。


 それじゃあ今からすぐに、転移魔法陣を作るから待っていてくれ。


 「な、何だと!? 大魔法使いしか行使できないスキルだぞ! おい教皇様よお! アンタ、一体何者だ?」


 「え? ただの教皇だけど。何か問題でもあるの?」


 「いや、何もねえけどよお。分かった! チャチャっと転移しちまおうか!」


 なぜか長男のリコは驚いている。転移魔法陣ってそんなに難しいことなのか?


 【伝えます。転移魔法陣を作るユニークスキル、瞬間移動は、熟練の魔法使いでも、賢者の域まで達しないと獲得できないスキルです】


 ああ、なるほど。それであんなに驚いてたのか。


 んまあいいや。とにかくルストにっと。そして僕は両手を地面に翳すと、転移魔法陣が燦然と煌めき浮かび上がった。

 そして、僕とエルとアグニスと凄腕鍛治職人ガリョー四兄弟が、魔法陣の上に乗ると、閃光が当たり一面を照らし、無事ルストの王の間まで転移した。


 その後、酒場の亭主が「食い逃げやろう! 金払え!」と言って、転移魔法陣に無理に入ってきて、金貨2枚を払う事になった。


 当然と言えば当然だが、まだお会計をしていなかったのだ。

 はぁ〜やれやれ。


 そして、僕はルストのギルドの横にある、大きな工房に四人を連れて行った。


 「ほぉ〜たまげたな。ルストの街にも、ドミールに負けず劣らずの工房があるなんて。いよっしゃ! ここは一つ最高のプラチナ武具を作るとするか! 大聖堂も一緒に完成させるぞ! 野郎ども! 準備はいいか!」


 「「「いつでも出来てます!」」」


 そのノリをずっと見てると、こっちが疲れてくるよ。


 そして、凄腕鍛治職人のガリョー四兄弟こと四人のドワーフを何とか、仲間にし、ルストまで連れてくることができた。


 そんでもって、また例の男が──そう、ウーグである。

 どこで嗅ぎつけたか知らないが、いつもすっ飛んでくる奴だ。


 「ピーターさん! やったじゃないっすか! あの四兄弟はドミールの街でも一番と言われる名鍛治職人何すよ! でもプライドも高くて誰の下にもつかないって聞いてたっすけど」


 「ふっふっふ! ウーグ君。これは人を誘う才能が僕にある証拠だよ!」


 「何言ってんのよ。アナタはただプラチナ鉱石の結晶で買収しただけでしょ?」


 アグニスが会話に割って入ってきた。

 くっ! 格好つけてるのに、余計なことを。


 おっと、その前に。アグニスが会話に割って入ってきてくれたおかげで、ガリョーの長男のリコにプラチナ鉱石の結晶を渡すことを忘れていたので。早足で工房に向かう僕。


 そして、工房の中で、再度インベントリからプラチナ鉱石の結晶を見せた時の、長男リコの顔は──言うまでもないだろう。

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