第4章 三国同盟
第36話 武器防具集めのため、ドワーフの街ドミールへ
教皇になってから一週間が過ぎたが──毎日、毎日、貴族たちとの謁見ばかりで疲れた。まあ。連れてきた魔獣や魔人も街の人たちと打ち解けてるみたいだし、それは問題ないのだが。
謁見の際に新たな国のシンボルマークを問われたので、僕はその場のノリで五芒星と答えた。エンシェントドラゴンには今度会った時に伝えておこう。
しかも、なんとエンシェントドラゴンは教皇ピーターこと僕を、唯一神扱いするようにと、テレサヘイズ全土に伝えているので、ぶっちゃけ、次の教皇を決める枢機卿も必要ない。必要なのは、この王宮を大聖堂にするため、新しく作り直すだけだ。
つまり僕が死ねば、国家は滅亡というわけだ。
なので、司祭も司教もいない。いるのは教えを広める神父様ぐらい。
これじゃあ武装国家と変わりないな。
今からでも、国名変えようかな? そんなことを考える今日この頃、ついにアイツがやってきた。
「教皇様。商人ギルド長を名乗る、ウーグ様がお見えになりましたが、如何致しましょうか?」
恭しく修道女の謁見案内人が話してきた。
おお! ウーグか! あいつ一週間も連絡よこさないで、伝えたいことが山ほどあるんだ!
「構わん! 通せ!」
すると、ウーグが血相を変えてやってきた!
「ピーターさん! いや、教皇様! 大変ですよ!」
「いやピーターで構わないよ。所で、お前はいつも大変だな〜」
すると、益々血相を変えて僕に近づき、熱弁してくるウーグ。
「ピーターさん! アナタって人は! 簡単にホイホイ教皇になるのはいいっすけど。国防はやっぱり兵士も必要だし。その前に、国家財務を決めたりと、やるべきことは山積みなんすよ! 俺っちだって、すぐにピーターさんに伝えたかったっすけど。謁見が許されたのは、ピーターさんが教皇になって一週間後なんすから!」
何だか、必死に話すウーグの額には、うっすら怒張すら見える。
まあ、僕を気遣って言ってくれたのだろう。こういう奴を側近に──ん? 側近?
「所で、ウーグ。お前、僕の側近にならないか?」
「んな……何言ってるんすか!! 亜人の俺っちが教皇様の側近なんて!」
「いや、テレサの教えで、亜人も平等って教えがあるから大丈夫だぞ。それに、誰にしようか迷ってたんだよ。国務大臣ってやつ。金勘定が上手い奴はウーグが探して財務大臣にすればいいから」
そういうと、ウーグは腰を抜かした。
「お、俺っちが一国の国務大臣? いやいや、それは嬉しいっすけど。今やるべきは、宗教もいいっすけど、その名に負けない武装国家になることなんす! 鎧に剣に兜がたくさん必要なんすよ!」
「おっ! 早くも国務大臣の本領発揮だな」
「煽てるのはやめて欲しいっす! 本当に必要なんすから。だからこれからピーターさんには東の街。ドワーフの鍛治職人が集まる、ドミールの街で、たくさん鎧や剣や兜を調達してきて欲しいっす。本来なら、部下に任せる仕事っすけど、長年の中立国家が兵の士気を落としてるっす! だから教皇自ら動くことで、兵や民の模範にならなくてはいけないっす!」
まあ言ってることは、至極真っ当だ。しかし、この国にドワーフの街があったなんて。
【伝えます。以前の中立国家だった時の、ドワーフの武具は世界各地で重宝されてきました。ドワーフの作る武具はどれも一級品です】
マジかよ。どれも一級品か〜。それで武装したらかなりの戦力になりそうだ。
「所で……ピーターさん? 一つ頼みがあるっすけど。いいっすか?」
「別に構わないけど」
「俺っちは三兄弟なんす。しかも俺っちが長男なんすけど、下の兄弟も優れものなんすよ! 金勘定なら右に出るものはいない次男の、ウガル・ドース。建築ならお手のものの末っ子、ウドー・ドース。こいつらなら、俺っちのお墨付きっす!」
「ま、まあ解ったよ。とにかく一度、そいつらとも会って、ウーグの商人ギルドと情報屋ギルドもデカくしないとな!」
「ま、マジっすか! 俺っち嬉しいっす!」
「じゃあ取り敢えず、国務大臣はウーグに決まりだ!」
「え? そんなに簡単に決められるんすか?」
「当たり前だろ? 僕は王様じゃなくて、教皇なんだから、何でもありなの! それよりも、ドワーフの街のドミールまでの地図をくれないか?」
「そういうと思って、ちゃんと持ってきてるっすよ!」
「ありがとう! じゃあウーグは三兄弟と話をつけてくれ!」
そういうと、ウーグはすぐ様、王の間から出て行き準備に取り掛かった。
やはり僕が見込んだことだけはあるな。ウーグは本当に頼りになる側近だ。
そして僕はウーグからドワーフの街ドミールまでの地図を受け取ると、すぐさま、王宮の外に出て、エルをエルダードラゴンの元の姿に、戻ってもらうと、すぐ様、エルの背に──あれ? 一人多いような。
後ろを見ると──なぜかアグニスまでいた。
「おい。アグニス! お前は教皇の仲間なんだから、追放とか関係なく街の中を散歩していいんだぞ?」
まあ、本当は、そう言うことは両親が決める事だからダメなんだが、面倒なので適当に言ってみた。
すると、僕の言葉に偉そうに言い返すアグニス。
「話しは気配遮断で全部聞いてたわよ──」
僕の方も気配遮断無効のスキルを解除してないから、アグニスがいるのはバレバレだったけど、僕を心配して護衛で近くにいたのか?
「アナタがまた、ドワーフの街のドミールで、魔獣タラシや魔人タラシをしないか監視しないといけないから、私も行くわ」
なんだそりゃ。護衛じゃなくて監視とは大きく出たな。
でも本当は、初めて行くドワーフの街に行ってみたいだけでしょ? 素直じゃない奴だな。
えっと、地図を見ると、ドワーフの街は、エルの背に乗って、大体五時間弱ってところか──よかった。この前にバルルマヌルみたいに、二日もエルの背に乗っていかなくて済むな。
それに帰りは、アグニスの瞬間移動で、ルストまで帰ってくればいいか。まあ、僕も同じスキル使えるんだけどね。
でもそんなことをアグニスに行ったら、吸血鬼の逆鱗に触れてしまう。
触らぬ神──というか鬼だが、祟りなしだ。
「よし! エル! 道案内は僕に任せろ! 出発だ!」
そういうと、エルが羽をばたつかせ、渦巻く風の嵐が王宮中に広がった。
そして、僕とエルとアグニスは、ドワーフの街ドミールに一級品の防具調達のため、颯爽と向かうのであった。
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