第33話 第四階層の神代級魔人


 何だか、第四階層はやたら広い洞窟だな〜。てかこれ、天井が見えないぐらいデカいんだけど……まさか。


 っと! 何だ何だ? この地響きは──というか大揺れだ!

 立っていられない!


 「この大きさでは動きずらいが、ここの魔鉱石は実に美味だ──何だ? 人間の気配が──」


 どひゃあああ!! 出たあああ! 何だこの洞窟は! 夢の玉手箱か?

 僕は今、実際に目の前で、力士の姿をした岩石のような肉体を持つ、巨大魔人ことタイタンが魔鉱石を食べている姿を見ている。てかタイタンだよね?


 【伝えます。個体名タイタンは神代級の大地の魔人です】


 嗚呼、やっぱりタイタンだった。前世ではよく召喚獣で使ってたよな〜。ゲームでの話しだけどさ。


 おっと、いけない仲間にしないと。


 「あのー! 聞こえるかー! アンタはタイタンだよなー! 僕の仲間になってくれ!」


 「ん? 私の食事を邪魔する奴は誰だ?」


 タイタンは周りを見遣っているが、完全にタイタンの足元にいるので、タイタンは僕に気がついていない。


 「ここだよー! お前の足元だー!」


 「おお、危うく踏みつける所だったぞ。だが、なぜこんな場所に人間がいるのだ?」


 ああ〜もうこの流れ嫌だ! 面倒くさくなってきた。でもエルもアグニスも魅了のスキルは持ってないし。仕方ない僕がやるしかないか。


 そして、僕は新国家樹立の為に仲間を集めていることを伝え、ルストの街の外に待機していて欲しい事を伝えた。


 すると、少し時間はかかるが、仲間になって国作りを一緒に手伝ってくれると言ってくれた。

 まあ、時間がかかるのは、その巨体じゃあしょうがないよな。


 「では私は、そのルストの街まで行くとしよう」


 そう言って、地響きとともに、去って行った。


 いよーーーーし!! 残るは後一人だ!


 後一人! 後一人! 後──って、うわあああ!!


 空飛ぶ天馬が、僕の横をすり抜けた。


 見ると、六本の足を持つ軍馬スレイプニルの上に跨っている甲冑姿のあの魔人はもしや……。


 【伝えます。個体名オーディンは神代級の軍神と呼ばれた戦争の魔人です】


 やっぱりか! あの二本の鋭く伸びた角に、漆黒の甲冑。兜はまるで髑髏面のような兜。そして全てを斬り裂く大剣こと斬鉄剣を手に持つ、まさに軍神の魔人だ! 何という大豪傑の威圧だ! 是が非でも仲間にしたい。


 というか、何という速さだ。僕の声が聞こえるのだろうか?


 「おーい!」


 って、この流れはタイタンの時と一緒だ……でもまあ、声をかけないと。


 「オーディン! 聞こえるか!? 聞こえたら地面まで降りてきてくれ!」


 だが、天高く愛馬スレイプニルに跨り疾走しているオーディン。


 ダメだこりゃ。しょうがない、僕も近くに行くか。


 「飛翔幻舞! そして光速疾走!」


 うひゃあああ!! 早い早い早い!! そしてコントロールを失い、盛大に岩にぶつかった──というか上半身が埋まった。


 「だ、誰か助けて! 出してくれ!」


 「仕方がない奴だ」


 誰かの声が聞こえた気がすると、両足を掴まれて、岩の中から出してもらった。


 「誰だか知らないけど、どうも助かりまし──うおおおお!! オーディンだ!」


 「然り。私はオーディンだ。人間の子よ。こんな場所まで来て自殺でもする気だったのか?」


 「いや違くて仲間を探しに……」


 恥ずかしい所を見られてしまった。


 まだ光の速さで飛ぶのは、練習が必要だな。しかし、あれだけ声をかけても気がついてくれなかったオーディンだったが、向こうの方からやってきてくれた。


 僕はオーディンに仲間になって欲しい事と、国を作る為に手助けして欲しいことを伝えた。

 すると、二つ返事で承諾してくれた。


 待機して欲しいルストの街のことも伝えると、愛馬スレイプニルに跨りながら、颯爽と疾駆して行った。


 はぁ〜。やったあああああ!! これでノルマ達成だ!!


 「ちょっとアナタ! 何一人でウキウキになってるのよ! 相手はあのオーディンよ! 神代の軍神なのよ! 普通は人間の言葉すら聞かないで一瞬で斬られて、あの世行きなのよ? なんで普通に喋って、しかも仲間にしてるのよ。しかも私がふざけて、無理難題を言った四体の魔獣と四人の魔人をあっさり仲間にするなんて……どんなスキルを使ったのよ! 言いなさい!」


 あまりのとんでもないことを、目の当たりにしたアグニスは、悔しいのか知らないが──歯がみをしながら声を荒げて言ってきた。まぁ、他人の心の中を探りたくないから、思念看破のスキルは常にオフにしておいたのだが、ちょっとだけ思念看破のスキルをアグニスに行使してみたら……自分よりも格別の力を持つ僕に、嫉妬していたようだ。


 はぁ……仕方ないか、僕はアグニスに正直にアルティメットスキルの帝王之魅了の権能の一つ、万目魅了ばんもくみりょうについて話した。


 ついでに、エルとアグニスには、その権能を行使していないことも、洗いざらい話して聞かせた。


 すると、全てのカラクリが解ったのだろう。アグニスは大きく溜息をついた後に、「私に使ったら容赦しないわよ!」と、言われた。


 別にアグニスにデレデレされてもなあ、まあ凄い美人な令嬢だけど、もう異性というよりも、仲間意識の方が強くなっているから、使わないだろ。


 リスタの巨乳鑑定士さんには、是非とも使いたい所だが……まあ、それはそれとして。早くルストの街に戻らないと。きっと大変な事になってるぞ!


 「アグニス! お前ユニークスキルに瞬間移動のスキルがあるだろ? 僕たちをルストの街まで、瞬間移動させることってできる?」


 するとアグニスは鼻高々に言った。


 「あったり前でしょ! 私を誰だと思ってるのよ!」


 おお! これは心強いですな。ではでは瞬間移動を頼むとするか。


 「よし! じゃあ頼む!」


 そういうと、アグニスは地面に両手を翳し、青白く光る魔法陣が地面に浮かびあがったかと思うと、その魔法陣が燦然と煌めいている。


 「この転移魔法陣の中に入れば、ルストの街まで瞬間移動して、いつでも好きな時に転移可能よ」


 よかった〜。帰りもエルの背に乗って、二日もかけてルストまで行くのは正直しんどいなぁ〜と思っていたから。ありがたや〜ありがたや〜。

 と言うか、瞬間移動のスキルって、転移魔法陣でどこでも好きな場所に瞬間転移できるスキルだったのか。


 【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンは能力複製のスキルにより、ユニークスキル、瞬間移動を獲得しました】


 ありゃ、どさくさにまぎれてアグニスのスキルまで覚えちゃったよ。


 でも、このスキルは使い勝手が良さそうだ。


 【伝えます。ユニークスキル瞬間移動は、一度訪れた場所のみ、転移魔法陣を行使することが可能です。なので、一度も訪れたことがない場所への転移はできません】


 へぇ〜。どこでも好きな場所に転移できる訳じゃないってことね。でもやっぱ、使い勝手が良いスキルに違いは無いな。


 そして、僕とエルとアグニスは光り輝く転移魔法陣の中に入り、ルストの街まで瞬間移動した。

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