第34話 ルストに帰還、そして王様との謁見
眩い閃光が薄れゆく──そして、地面に浮かび上がった転移魔法陣も綺麗さっぱり消えた。
と、同時にとんでもない光景が僕の目に飛び込んできた。
何と、仲間にした伝説級や神代級の魔獣や魔人が、ルストの街の外に勢揃いしていたのだ。
この絵面はどこからどう見ても、モンスター達が国に攻め込みにきたとしか思えないだろうな。
しかも、商業国家だからわずかばかりに兵士達が城門の上から、クロスボウを構えているが、兵士たちは震え上がっていた。
しかし、あんなに遠くの大地から、どうやって一瞬でルストまで来れたんだ?
【伝えます。土地名バルルマヌルには様々な場所に転移魔法陣があり、知性あるモンスターは、その転移魔法陣がどこに繋がっているか、把握しています】
だから、すぐにルストの街の外まで来れたのか。っと、その前に。
帝王之魅了の権能の絶対命令を行使しなくては。
てか、これ普通に命令すれば良いのか?
【伝えます。アルティメットスキル帝王之魅了の権能の一つ、絶対命令は強く命令したいと念じれば発動します。それとも常時発動モードに切り替えますか?】
いや……それは流石にNOで。
常時発動しちゃったら、普通に会話もできないからな。
よし。強く念じて言えばいいんだっけか?
そして、僕は魔獣ケルベロス、キングベヒーモス、フェニックス、イクシオン。そして、魔人イフリート、シヴァ、タイタン、オーディン。
最後に魔獣の従魔である、グレートウルフ1500匹、ベヒーモス500匹、ヘルコンドル2000匹、クアール1000匹全てに、大声で、人間や亜人や、とにかく僕の許可なく暴れたり、襲ったりすることを禁じ、人間や亜人たちや、弱い魔物たちを守るように命令すると、全ての魔獣と魔人は承諾してくれた。
さらに2000年前の魔王が従えていた、もはや神話にまでなっている魔王最高幹部の八名、
これじゃあ街の住人が余計に怖がっちゃうな。喜んでくれるのはいいんだけどさ……。
てか、そんなに凄かったのか? その過去の魔王が従えた四獣四鬼って……?
というか──しかし凄いな帝王之魅了の権能は。これじゃあ魔王の軍勢だよ。
それに暗い洞窟だったから、大きさが判らなかったが、タイタンって山ぐらいの大きさなんだな。デカ過ぎる──もしかして、このルストの街よりもデカいんじゃないか?
でも誰も襲ったりしないと約束──というかスキルの力だけど、まあいいや。とにかく安全面は確保出来たみたいだ。
僕が城門の上にいる兵士たちに安全だから、城門を開いてくれと言っても聞き入れてくれなかったので、仕方なく、またアグニスの瞬間移動の転移魔法陣で商業ギルドのウーグの場所まで行った。
というか、あれだけの魔獣がいたら、安全だと言っても、どこの馬の骨とも知らない青年がいくら主張した所で、無意味なのは解っていたことだ。
とにかく気を取り直して、ウーグに言われた通り、ノルマを達成したことを──って、遠くから猛スピードで走ってくるウーグ。
「ピーターさん! あれはやり過ぎっすよ! 俺っちは伝説級って言ったんす。なんで神代級の魔人や、従魔まで何千匹も連れてきたんすか! 街はもう大慌てっすよ!」
「いや、でも、ちゃんとこれで強い国家だって認められるでしょ? それに僕のスキルで、誰にも襲うなって命令してあるから平気だよ」
しかし、ウーグは首を横に振った。
「俺っちはピーターさんのことを知っているから、平気だと思うっすけど。今のルストは非常警戒態勢の中にあるっす! だから住民も外出禁止令が出てるんすよ!」
「外出禁止令? それって王様とか、かなり偉い人じゃないと出せない命令じゃないのか?」
そういうと、ウーグは深く溜息をつき言った。
「ピーターさん! このルストの街はアンデルヘイズで一番大きな要塞商業都市でもあり、アンデルヘイズの王様もいる首都なんすよ!」
「え? まじ? じゃあ王様いるの? この街に?」
「当たり前っすよ! ピーターさん! 責任をとって王様に謁見して安全だと伝えてください!」
「おいおい責任って。ウーグが仲間にして来いって言ったんだろ……」
「だから、あれはやり過ぎっす! 俺っちが、王様の王宮まで案内しますから、一緒に来て欲しいっす! というか、来てくれないと困るっす!」
ウーグの奴、やたらテンションが高いな。まあ、あれだけの数の魔獣を見ればテンションも高くなるか。
それよりもエンシェントドラゴンが、王様に新たな宗教武装国家の国王に、僕を抜擢するって言ってたし──王様には、もうこの事は伝わっているだろう。
そして、ウーグに連れられて、王宮まで辿り着いた。
へえ〜ルストの街外れに、こんなに立派な王宮があったのか。
僕はエルがちゃんと擬人化して、メイド服ではないことを確認した。
てか、メイド服以外はゴスロリの服なんだけど──ついでにアグニスは、まあ令嬢様の服装だから大丈夫だろう。
何が大丈夫かって、それは王宮に入る時のドレスコードに引っかかってしまう、僕の懸念だ。そして僕は執事のような燕尾服か……。でもこの服装なら大丈夫だ。
王宮の門には、近衛兵がいたが、僕がエンシェントドラゴンに言われてやってきたと言うと、鼻で笑われた。
確かに初対面だもんな。エンシェントドラゴンを連れてくればよかった。とにかく、エンシェントドラゴンは後で連れて来るとしてだ。ここは面倒なので、絶対命令のスキルを使わせてもらうとしよう。
「王に謁見しにきた、ピーター・ペンドラゴンだ! 早く案内しろ!」
「解りました! しばしお待ちを!!」
そう言うと、近衛兵に連れられて、王の間に通された。
そして、王様? みたいな王冠を被った、震えている威厳の無いオッサンが玉座に座っていたのだ。
と、その時。暴風が王の間に渦巻いた。
「すまぬ! すまぬ! 遅れてしまった!」
見ると、エンシェントドラゴンだった。遅いっつーの!
すると、益々──王様は震えている。無理もない、街の外の魔獣や魔人にエンシェントドラゴンの登場。これは恐怖して当然だろう。
「して、ピーターよ。元王とは話がついたのか?」
「いや、今やっと謁見した所ですけど……」
すると、盛大にエンシェントドラゴンは笑った。
「うむ! ならば細かい話は省けると言うものだ! 所で、街の外の魔獣や魔人はピーターの仲間か?」
「まあ……そんな感じです」
すると、また盛大に大笑いし始めた。
「やるではないかピーター! あれだけの魔獣や魔人を従えれば、他国への牽制になる! 一応我も、この国を守護する強力な六体のドラゴンを先程まで選別していたのだが、魔獣や魔人がいることにより、益々強固な宗教武装国家になるであろう! フハハハ!! そして聞け! 六体の強力なドラゴンだから我は其奴らに、国を守護する
「あ、ああ。凄く良い名前だと──思います」
僕がそう言うと、またもや豪快に笑い、少し照れている。
何だかもう、面倒な奴に思えてきた。褒めてもらいたいのかよ……6000年も生きてきた伝説の竜が。これも万目魅了の力か……恐るべし魅了の力。
つーか、ウーグと同じこと言ってる。やっぱり武力牽制って必要何だな。
って! あまりに急だったから、その場のノリで誤魔化したけど。ちょっと冷静に考えてみると──国を守護する六体のドラゴン? 初耳なんですけど……。
戦力は多ければ多いほど越した事はないけど……いきなり強力なドラゴンも六体か。一体どんなドラゴンを選別してきたのだろうか。
そして、この震えあがって威厳の欠片もない元王と新王の僕とエンシェントドラゴンの三人の話し合いが始まった。
と言うか、エンシェントドラゴンの無理矢理な話し合いだが……。
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