第31話 第二階層は炎の地獄、そして第三階層へ
バルルマヌル……確かに普通の冒険者じゃ足を踏み入れない、未開の土地だ。こんなに驚懼する場所なんて、ガルズでもここぐらいだろう。
しかしだ、なぜだか余裕だ。
その理由は、オーバーラックによる常時発動する豪運の権能に、帝王之魅了による常時発動の全ての種を魅了する権能。
嗚呼、素晴らしきかな、ラックとチャーム。
前世では、どんなに努力しても、後一歩のところで、悪魔の見えざる手が僕を邪魔してきたからな。
まあ、99パーセントの努力と1パーセントのひらめき(運)
確かエジソンの発言だったと思うが、エジソンは後にちゃんと言っている。
いくら99パーセントも努力したって、1パーセントのひらめき(運)がある奴には敵わないのだと。
あの天才エジソンがそう言っているのだから、間違いない。この世は運が全てなのだ──って、さっきから熱いな……別に僕が熱弁をふるっていたからではない。物理的に第二階層が熱いのだ。
てか、地面燃えてね? いや──超燃えてるうううう!!
アグニスはコウモリに変身して逃げている。やはり熱耐性のスキルは持ってないのか。
エルは──まあ言わずもがな、普通に佇立している。だってドラゴンさんだもんね。
僕は──熱くないな。
【伝えます。治癒之大精霊の権能の一つ灼熱無効があるので、炎で焼け死ぬことはありません】
そっか──ていうか、こんだけ熱かったら、多分いると思うんだよね──って、やっぱりいたあああああ!!
炎の魔人イフリートだ!
前世では召喚獣でお世話になりました。
思わずイフリートにお辞儀をする僕。
そして、イフリートは僕を見て話しかけようか、迷っているみたいだ。
「あのう、もしかして──イフリートさんか?」
「さん付けは、やめてくれ。イフリートでいい。しかし、よく私がイフリートだと解ったな」
「そりゃもう、大鬼のような面構えに、体中を纏う業火を見ればすぐに解るよ」
ついでに、普通の冒険者が偶然、出くわしたら一目散に逃げるだろうけど。まあ、仲間集めに来たんだし、逃げないけどさ──どうやって勧誘すればいいんだろう。
【伝えます。個体名イフリートは神代級の炎の魔人です。続けて伝えます。イフリートは他の魔人などは従えていません。しかし、ボムを従魔として従えています】
ボムなんて歩く爆弾を街の中に入れられるか!!
なしなし。イフリートだけでいいや。
「あのさあイフリート。頼みがあるんだけど。僕が国の代表にならないといけないんだけど、強い魔人がいないとダメ何だ。もし良かったら──」
「宜しい! 私で良ければ力になるぞ!」
僕の話を最後まで聞かずに、仲間になってくれた。豪運と魅了のコンボ凄いな。
「それで、どこの国だ?」
「アンデルヘイズだよ。そこのルストの街の外で、待っててくれないか? 僕もすぐに行くから」
「解った。ルストだな!」
そういうと、業火の中に包み込まれるように消えた。
きっと、炎を使った瞬間移動的な何かかな?
でもだ──まだ熱いいいいい!!
と、その時、僕の頭上を何かが飛んでいった──うお! あの朱雀のような真紅の炎を纏った怪鳥はまさしくフェニックスだ。
うおおおおお!!
何だか涙が出てきたぞ。
僕が前世で遊んできたRPGに出てくる神話の召喚獣のオンパレードだ!
おっと、ここは冷静にならなくては。
てか、よく飛ぶな〜。こっちに気がついていないのかな?
「お〜い! フェニックス!」
「むむ? 誰だ? 我を呼ぶものは?」
あっ、気がついた。やっぱり僕らのこと知らないで、飛び回ってたんだ。
【伝えます。個体名フェニックスは神代級の魔獣の不死鳥です。続けて伝えます。フェニックスが従えている従魔は希少級のヘルコンドルです】
従魔がヘルコンドルって反則でしょ! 希少級の魔物だよ──しかも、またしても神代級だ!
これで、どんどん国が強くなるぞ!
「なあフェニックス! 頼みごとがあるんだけどさ、僕の国が弱いから力を貸してくれないか? てか仲間になってくれ!」
「何だ。そんな事で、こんな最果ての地まで来たのか。うむ、貴様からは何か底知れぬものを感じる。嫌な違和感ではない、心が和むのだ。よかろう。仲間になってやる! 貴様の国を教えろ」
「えっと、アンデルヘイズって国で、そこのルストの街の外で待っていて欲しいんだ。すぐに僕も行くから! ああ! それと出来たら従魔とかいたら、そいつらも連れて行って欲しいんだけど」
「うむ。解った。では我はヘルコンドル2000匹を連れて、先に行って待っておるぞ!」
そういうと、翼全体を広げ炎の円となり、その炎に包まれるようにして消えた。そして、円になった炎の中に吸い寄せられるように、2000匹のヘルコンドルも……って! 2000匹!? おいおいマジかよ制空権をいきなり手に入れた気分だ。
しかも、イフリートの時と同じだ。炎系の魔獣や魔人って、炎で瞬間移動するのか?
「ちょっとアナタねえ。魔獣タラシにも魔人タラシにも限度ってもんがあるでしょ! さっきから見てたらなんかもう──私でも勝てるか判らない魔獣や魔人までタラシこんで!」
アグニスが興奮しているだが、まだ魔人三人に魔獣一体が残っている。しかも、マギアヘイズがすぐに攻め込んでくる可能性が高い。ここはタラシにタラシてタラシまくるんだ!
そんなこんなで、第二階層の火炎地獄から、第三階層に向かう僕ら──ってえええええ!!
何だこの寒さは、火炎地獄から一変して、氷河地獄になったぞ!
ってことは──まさか。
やっぱりいた! 麗しのシヴァ様! こっちが魅了されそうだ。
長髪のドレッドヘアーのような編み込まれた髪がまた美しい。
しかしいつも思っていたんだが、氷の魔人なのに、こんなに露出度が高くて寒くないのだろうか?
まあ、肉体も氷だと思えば、寒くはないか。
【伝えます。個体名シヴァは神代級の氷の魔人です。続けて伝えます。魔人は基本的に、魔人も魔獣も従えていません】
ということは──魔獣だけが、自分よりも下位の魔獣を従えているのか。まあ魔人って単独行動してるイメージ強いし。
おっといけない、勧誘しないと──でも綺麗だな……。
「ほう。人間か──それとドラゴンに吸血鬼まで。何をしにきた?」
「ええっと、そのですね……」
何を緊張しているのだ。美人だからか?
「ぼ、僕が作ろうとしている国がですね、あの、だから、僕の仲間になってください!」
あーあ。やらかしちゃったよ。美人の前だと、こんなに緊張するんだな、僕って。
「よかろう」
「え? 今なんと?」
「仲間になってやると、言ったのだ。私の力が必要なのだろ?」
「あっ! はい! そうです! 一刻を争う事態でして! 僕の国が今、他国に狙われてるんです!」
「うむ。では私が力になろう。貴様の国を言え」
「あ、アンデルヘイズです。そこのルストって街の外で待っていて下さい。すぐに僕も行きますから!」
そういうと、「解った」とだけ言って、粉雪の中に消えて行った。
「また消えた。魔人って皆、瞬間移動できるのかな?」
「当たり前でしょ! 魔人なんだから! 因みに私も瞬間移動ぐらいできるわよ。まあ、一度行った場所限定だけど」
突然何を言い出すか思えば、アグニスは少し怒っているようだった。
でもでも、帰りは一瞬で帰れるってことじゃん。
だってアグニスはルストの街出身の元大貴族なんだから!
そう考えると、帰りも二日かかるのかと憂鬱だった気分が、鮮やかに晴れ渡った。
そして、第三階層はまだこれで終わりじゃない。
魔獣か魔人か判らないが──強いオーラを感じる。
だがこの気配、幻獣に近いのか?
とにかく、奥に進んでみるか。
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