第30話 魔獣と魔人を仲間にするため、バルルマヌルのダンジョンへ


 しかしエルの背に乗って高速で向かっているのに、まだバルルマヌルに着かない。

 最初は数時間かと思ったが──ちゃんと地図を見ておくべきだった。まさか、どこの国からも嫌悪されている世界の最果てだもんな。まあ、あと数時間で着くけど、二日もかかったぞ!


 おっ! 見えてきた──けど、砂漠? 僕は大森林みたいなのを想像していたが、砂漠だったらすぐにダンジョンが見つかるな。それに他の伝説級じゃない魔物とかも仲間にした方が戦力になりそうだ。

 ていうか、ウーグの奴、様々な地形とか言ってデタラメ言ったな。まあ、ガルズの地獄にあいつが行ったことなんて、あるわけ無いだろうし──誰かから聞いたデマ情報だろ。


 けれど、何度も思うが砂漠でよかった。下の地形がよく判るなんてもんじゃない、これは丸分かりだ。


 おお! 早速なんか見つけたぞ。


 「エル! ここで下まで降りてくれ──って、僕……飛べるんじゃん。ゴメン! エル! 今の無し! 飛翔幻舞!」


 そして僕がエルの背からジャンプして上空を飛び、下まで急降下した。

 うむ、初めて飛んだにしては上出来だな。勢い余って着地したから、砂漠の地面に埋もれたけど……。


 ええっと、さっきエルの背から見えたやつは──いた! ていうかケルベロスじゃん!


 「おーい! そこのケルベロスー! 止まれー!」


 「なんだ? 人間如きが我を呼び止めるとは、貴様なにやつ……な、まさか、あの時の……人間か?」


 よく見ると、アランの大剣で大怪我をしていた、はぐれケルベロスだった。

 よかった〜生きてたのか。


 「あの時のケルベロスだろ?」


 「然り。して何ようだ?」


 あれ? 確かケルベロスって伝説級の魔獣だったよな。前世の記憶には薄らそんな気が。


 【伝えます。個体名ケルベロスは伝説級の魔獣です。そして配下にグレートウルフを従えています】


 うお! マジか! いきなりレアカードをゲットした気分だ。


 「なあケルベロス。今僕は新しい国を作ろうとしてるんだけど、強い魔獣が必要なんだ。仲間になってくれないか?」


 「う、むむう。何だ? 人間の頼みなどすぐに断れるのに……解った仲間になってやろう」


 「じゃあついでに、配下のグレートウルフも一緒に来てくれない?」


 あのケルベロスが、もじもじしている。意外と可愛いかもな。


 「解った。配下のグレートウルフ総勢1500匹も一緒だ! して、場所は?」


 「アンデルヘイズのルストだよ」


 「あそこか、良い思い出がないな」


 「大丈夫! もし大剣持ったアランに出会ったら、ピーターの誘いできたから誰にも危害を加えないって言えば、平気だよ」


 「そうか解った!」


 すると、突然、耳を聾するほどの雄叫びをあげるケルベロス。


 その雄叫びに総勢1500匹のグレートウルフが駆けつけ──ルストまで疾って行った。


 僕は手を振って「気おつけてね〜」と言うと、ケルベロスや総勢1500匹のグレートウルフが、僕の方に振り向き、満面の笑みで応えた。


 その光景は──少し不気味だった……。て言うか、帝王之魅了すげーな!


 しかもグレートウルフ1500匹も入れば、かなりの戦力になる。


 【伝えます。個体名グレートウルフはモンスターの中で特別級の部類に入る、モンスターです。Bクラスの冒険者が五人がかりで、やっと倒せるモンスターです】


 うお! そんなに強いモンスターが1500匹も! しかも伝説級のケルベロスまで! でもまだダンジョンに入ってないんだよな。だけど、ケルベロスがいたってことは──あるはずなんだが……。


 「ちょっとアナタ。商人ギルドでは大人しくしていたけども、いきなりケルベロスを仲間にできるなんて、どうかしてるわよ。カラクリを教えなさい」


 「教えなさいって言われても、ただ運が良かっただけだよ」


 そう、別に嘘はついていない。本当に運が良かっただけなのだ。


 「そんな事よりも、ダンジョンを探さないと──あれ? 何だ? 変なモヤモヤが──蜃気楼?」


 「違うわよ。アナタもしかしてダンジョンも知らずに、来たわけ? あのモヤモヤがダンジョンの入り口よ」


 えええええ!! なんかもっと建物系だとばかり思ってたけど、空間にいきなり出来るものなの? ダンジョンって。


 「ピーター様! 私はいつでも準備できているぞ!」


 「私もいつでも良いけれど、危ないと思ったら帰るから」


 「解った解った! よし! それじゃあダンジョンで伝説級の魔物を仲間にしよう作戦開始!」


 そして、半ば強引に鼓舞を高めダンジョン内に入った。

 するとダンジョン内は、砂漠とは違い、涼しい洞窟だった。


 「はあ……やっと涼めた……」


 うっ! そうだ、アグニスは吸血鬼なんだ。いくらスキルの陽光克服を持っていても、砂漠の直射日光はかなりキツかったろうな。正直、僕もキツかった。


 てか、さっきから凄い地響きが──って、デカいいいい!!

 あの紫の硬質化した肌に猛牛のような長い角、それに逆立つ毛並みは……キングベヒーモスだ!


 【伝えます。個体名キングベヒーモスは伝説級の魔獣です。そして配下に希少級のベヒーモスを従えています】


 希少級? それって特別級よりも凄いの?


 【伝えます。希少級の魔物はAランクの冒険者ですら、逃げると言われている。特別級よりも上位の魔物です】


 マジかよ! あの特別級よりも上位なのか。

 これは、何としても仲間にしたい。


 「おーい! お前はキングベヒーモスなのか?」


 「何だ? 貴様は食い殺され──むむ、何だか懐かしい。以前、どこかで出会ったことがあったか?」


 「ん? 今日が初対面だけど……キミはキングベヒーモスなの?」


 そう言うと、威丈高に誇らしく言った。


 「いかにも、我はキングベヒーモスである。してこんな人が来ない、へんぴな場所に一体何用だ?」


 「いや、今強い魔物が国に必要で、僕の仲間になってくれない?」


 キングベヒーモスは何の躊躇もなく、間をおかずに言った。


 「良いだろう。だが、どこの国か教えろ」


 「ああ、そっか。アンデルヘイズだよ。そこのルストって街があるから、街の外で待っててくれ。僕もすぐに行くから」


 「解った。ルストだな」


 そう言うと、地響きを立てて──


 「ああああ!! ちょっと待って、出来れば配下のベヒーモスも一緒に行ってくれると助かるかな」


 「うむ。では我が配下のベヒーモス500体を連れて行くとしよう」


 どひゃあああ!! 希少級の魔物が500体も!

 そして、配下のベヒーモス500体が現れ、さらに地響きが強くなり、ダンジョンの外に出て行った。


 ふう、これで二匹目か……ウーグに何匹の魔獣と、何人の魔人が必要なのか訊いていなかったが、取り敢えず多すぎても困るからなあ。


 「なあ、アグニス。伝説級の魔獣と魔人って、どれぐらい仲間にすれば良いと思う?」


 「なんで私に訊くのよ。でもまあ私も魔人だし、それに昔の魔王と勇者の戦いの記録に、魔王は伝説級の四体の魔獣と四人の魔人を従えて、それを四獣四鬼しじゅうしきって呼んでたらしいから、あと魔獣を二体と魔人を四人ぐらいで良いんじゃない? それだけいれば充分戦力になるわよ」


 「解った! 参考になったよ、ありがと!」


 よし! じゃあどんどん魅了して仲間にしていきますか!

 そして、第二階層に進む僕たち三人であった。

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