第28話 エンシェントドラゴンの提案


 さて、渡り鳥の僕ことピーター・ペンドラゴンです。


 何で渡り鳥かって?

 そりゃ、もうドラゴンの里とルストの街を、行ったりきたりだからですよ。


 そして、またもやドラゴンの里に到着するエルとアグニスと僕。


 んまあ、何だかもう第二のホームになりかけている。


 すると、声もかくていないのに、無数のドラゴンから出迎えされた。


 『英雄ピーター様が戻られたぞ!! うおおおおお!!』


 流石は帝王之魅了……ドラゴンチャームとは全然違うな。


 【伝えます、アルティメットスキル帝王之魅了の権能の一つ、グランドチャームが常時発動されているので、全ての種族は魅了状態にあります】


 うげ! じゃあレベル上げとか大変……ああ、その為のユニークスキルの亜空間部屋か。


 と、まあドラゴンさんのお出迎えはありがたいんだけでもだ──問題のエンシェントドラゴンにドラゴンの助力を得られないか、ウーグにお願いされちゃったし、頼むだけ頼んでみるか。


 「おーい! エンシェントドラゴンさーん!」


 僕が大声でエンシェントドラゴンを探すと、すぐに僕の前にやってきた。


 「ん? どうしたピーターよ。まだ負傷しているものいるので、宴は後日──」


 「あっ、いや、えっと。宴の話で来たんじゃなくて、ドラゴンの力の助力をと思って」


 僕は、情報屋ギルドのウーグからの話を全て、エンシェントドラゴンに伝えた。


 すると、予め解っていたように微笑むエンシェントドラゴン。


 「マギアヘイズのマギアの教えなら知っている。あれは最初、聖マギアがまだ存命だった時代には、物騒な教えではなかった。皆が手を取り合い、理想の国家を築くという、教えだったそうだ。少なくとも我の父から聞いた話では、そういうことらしい」


 「え? 我の父? そんなに大昔の教えなんですか?」


 「ああ。一万年ほど前の教えだ。我はまだ6000年の歳月しか生きておらん。だから本当のマギアの教えは知らぬが、父から聞いた教えと今の物騒な教えは、中身が大きくかけ離れているぞ。きっと、自分たちの欲望を満たすために、後から改竄したのであろう。人間のよくやることだ」


 確かにエンシェントドラゴンの言うことは納得できる。

 僕自身、何でマギアの教えが、そんな闇組織のような物騒な教えなのか、理解に苦しんでいたぐらいだ。


 ウーグは、それを世界宗教の教えだと言って、疑ってはいなかったが、時に疑うことも必要なのである。


 「してピーターよ。何用か聞いた上ではっきり言おう。今現在の、捻じ曲がった思考の教えを広めているマギアヘイズとの全面戦争は避けられぬ。だが一つ、干戈を交えるとしても、牽制し時間を延ばすことは可能だ」


 マジかよ! 流石はエンシェントドラゴン。

 てか6000年も生きてるんだ……このお方は。


 亀の甲より年の功だな、やっぱ。


 「今のアンデルヘイズは弱い。何が弱いかと言えば、ドラゴンの里に頼り、自国の強兵をしていないのだ。中立という響きは確かに心地よいが、敵とみなされた場合、中立など掌の上に乗った雛鳥の羽に等しい。故にアンデルヘイズを対マギアヘイズの宗教武装国家とする!」


 え、えええ!! いきなり国を変えて大丈夫なのだろうか。


 僕が不安な顔をすると、エンシェントドラゴンは優しく微笑み、とんでもないことを言った。


 「何か不安そうだな。しかし案ずるなかれ。このアンデルヘイズはドラゴンの力で中立が守られてきた。ゆえに国王も我には意見できぬ!」


 大口を開けて豪快に笑うエンシェントドラゴン。だが僕にはまだ不安要素がる。


 「その、宗教武装国家にするのは解りましたけど──ドラゴンが統治する国ってことですか?」


 「ん? 何を呆けたことを言う。ピーターよ。お前が新たな宗教武装国家の国王になるのだ! 異論あるまい?」


 いやいやいやいや!!!! 異論しかありません!

 エンシェントドラゴンさんの方が、呆けていますよ!


 「何を焦った表情をしておる。ピーターはこのドラゴンの里を救った英雄だ! 賛同するものしかおらん。否定するものなど、どこにいよう」


 すいません……ここにいます。ピーター・ペンドラゴンは否定します。

 あと、国王も否定すると思うんだけど……。


 「では決まりだな。まずは、どのような宗教名と宗教にするか、そこから決めねばなるまい。ピーターよ何か良い考えはないか?」


 いきなり国王になれだの何か言われて、すぐにポンと良い考えが出るわけないだろうが!


 「ところでピーターよ。うぬは国王になるのだが、宗教武装国家ということは、国王ではなく教皇だな。マギアヘイズに負けぬ強い教皇になる必要がある」


 だから話を勝手に進めないでください……!


 「よし。ドラゴンの里を統べる教皇。この話しを世界中に伝えれば、どれだけピーターの力と権力が強大か示せられる。異論はあるまい? では我はアンデルヘイズの国王に新国家が誕生したことを告げに行ってくる! ピーターはこのことをルストの街に伝えてくるのだ!」


 そういうと、両翼を広げ、暴風が巻き上がる。そしてエンシェントドラゴンは飛び去って行った。


 ……とんでもない事になっちまった!!


 何で僕が教皇なんだよ!


 「ピーター様! とうとう教皇になるのか! 何とも良い響きだ!」


 「ふん。アナタが教皇になっても、今までと同じ態度で接するわよ」


 お前ら二人は黙ってろ! 今は頭の中が大混乱なんだよ!


 まあ、とりあえず、ルストの街まで戻って、エンシェントドラゴンに言われたことを、そのままウーグに伝えよう。


 あいつ腰を抜かすだろうな……。だって、大貴族の親から勘当され、お前は追放だと言われたばかりの僕が、突然ドラゴン達を統べる一国の教皇になるんだもんな。


 もう、こうなったら、とことん行くとこまで行くしかないか。


 エンシェントドラゴンだって、6000年も生きているのだ。

 何か考えがあって、そう決めたのだろう。

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