第3章 新国家誕生

第27話 情報屋ギルドにて、真の狙いと宣戦布告


 どうにかこうにか戻ってきました。ルストの街なんだけど──急いで来たんだが、もう夕方なんだよね。


 ウーグに出会う為には色々と話を纏めておかないとだし、今日はゆっくり宿屋で休むか。


 しっかし思うと、リリウヘイズには行ったけど、何だかルストの街とドラゴンの里を行ったり来たりのような……まあ、とにかく疲れたし、飯でも食べて寝るとしよう。


 因みに、夕飯はリリウヘイズに行く途中で遭遇した、グリフォンの群れの肉を予め商人ギルドの解体屋で解体してもらって、肉だけ貰ってきたんだよね。


 これは皆には秘密にしておいたサプライズなのだよ。


 そんなわけで今夜の夕飯はグリフォン肉の焼き鳥(味は全部塩味)


 何だか塩ばかりじゃ飽きると言うか、味にバリエーションがないな……大宮殿さん! 塩以外にタレみたいなの作るスキルは持ってないの?


 【伝えます。探しましたが、該当するスキルはありませんでした】


 だよな〜前世での焼肉の甘辛タレなんかを召喚獣みたいに、この世界に召喚して持って来れたら最高なのに。


 そんな能力があればいいな……。


 【伝えます。探しました所、次元干渉スキルがあれば、可能性はゼロではありません。ただし、次元干渉スキルはこの世界のことわりに触れるので、自身が想像────該当確認。物質創造と言うスキルがあれば、次元に干渉することなく、自分が創造したものを、そのまま物質として再現し具現化できます。しかし、現在はまだ、そのスキルを持っていません。オーバーラックのスキルの一つ、言語実現でも不可能な現象なので、物質創造のスキルが必要になります】


 ふんふん、なるほど。ま〜なんとかなるかな。


 そして、お腹一杯グリフォンの焼き鳥を堪能した僕たちは、宿屋で一泊し、朝早く情報屋ギルドのウーグに会いに行った!



 「ピーターさん! とーーーーーんでもない事になってるっす! その前にドラゴンの里は!?」


 「大丈夫だった。何とかね。」


 「え? じゃあ……あの厄災の枢機卿テイゲンと首斬り大司祭ドレイクを倒したんすかああああ!?」


 ウーグは落ち着きを失い首を左右に振っている。自分でも何が何だか理解に苦しんでいるようだ。


 「ああ、まあ楽勝じゃなかったけど、奴らの痛いところを突いたら、一発で倒せたよ」


 僕が笑いながら言うと、ウーグは真剣そのもので言ってきた。


 「あの総勢500万の大軍勢はどうしたんすか……?」


 そのことね。


 「兵士たちはドラゴンたちに任せたよ! 北の大山脈で足止めさせて、テイゲンとドレイクの二人の指揮官を倒したら、総撤退して行った」


 「それ、まだ俺っちが知らない情報っすよ!!」


 まあそれは、そうだろうな。

 重軽傷者を担いで総撤退しているのだ、こちらはエルの背に乗って全速力でルストに向かったが、マギアヘイズの軍はまだ、ルストにも到着していないだろう。


 「んで、ウーグの方は、なんか情報を掴めたか?」


 「ふふふ、よくぞ訊いてくれましたっす! 俺っちは危険を顧みず、マギアヘイズまで行って情報を集めてきたっすよ!」


 「流石! できる男は違うね〜」


 僕の、見るからに下手な煽てに対し、ウーグは顔を紅潮させて喜ぶ。


 「ではでは説明するっす! マギアヘイズの狙いは、このアンデルヘイズとリリウヘイズですが、マギアヘイズにとって中継地点のアンデルヘイズは邪魔なだけ。ですがアンデルヘイズにはドラゴンの里があり、世界でも中立の立場。しか〜〜〜し! そんな禁忌を破ってまで、マギアヘイズはアンデルヘイズを乗っ取る計画を画策していたっす。もうこれは世界に対して宣戦布告しているようなものなんすよ!! はぁはぁ……」


 「そ、そうなんだ。取り敢えず落ち着いて。ウーグ君、お水でも飲んだら?」


 「そ、そうっすね。って! 水なんて飲んでる場合じゃないんすよ! この国が! 平和なアンデルヘイズが! 戦火の渦に巻き込まれるんすよ! えらいこっちゃ! えらいこっちゃ!」


 「でもさぁ。ドラゴンの里は無事だったよ。だから戦争には──」


 「ピーターさん……! 甘いっすね! マギアヘイズのことを何も知らないっす! あの国は、国であって世界なんすよ! もし一度でもマギアヘイズに狙われたら、とことん最後まで戦争は終わらないっす! たとえマギアヘイズが自滅したとしても、最後の最後まで諦めないんすよ!」


 ウーグの熱弁に多少圧倒されたが、余りにも前世での僕がいた世界の、戦争の在り方とは荒唐無稽な話しなので、思わず首を傾げてしまった。

 確かに宗教戦争はどちらかが勝つまでの泥沼の戦争だった。


 歴史を学べば誰でもわかる。

 十字軍がいい例だ。しかし、どんなに泥沼の戦争だったとしても、自国の三分の一もなくなれば、降伏するだろうに。


 そう考えてるとウーグが、グイッと顔を近づけて話してきた!


 「いいですかピーターさん! これは俺っち──いや、平和に暮らしたいと願っている、アンデルヘイズの国民全員が思ってることです。どうか! どうか! またドラゴンの里まで行って、ドラゴンたちに助力を頼めないか訊いてきて欲しいっすううううううう!!!!」


 そして……土下座までされた。

 というか、そんなにヤバいことになってるの?


 【伝えます。国名・教皇国マギアヘイズは、マギアの教えの中で、一度敵となった者は肉親の仇同様。刺し違えてでも敵を鏖殺せよ。それが自国を失う事となったとしても。それが、唯一天国に行く方法である。と言う内容がマギアの教えの中にあるので、マギアヘイズに敵対国家として一度でも襲撃された、アンデルヘイズはマギアヘイズと戦う以外の道が残されていません】


 んなんじゃそりゃ! なんで戦争で死んだら天国に行けるんだよ! ヴァルハラじゃないっつーの!


 しかし〜とんでもない宗教だな。こんな危ない思想の教えが世界宗教なのかよ。まあ、とにかく、このことをドラゴンの里のエンシェントドラゴンに伝えなくては──宴会もあるかも、って。まだあの闘いで負傷したドラゴンがいるから、宴会は相当先かな。


 とにかくだ。

 この緊急事態をエンシェントドラゴンに伝えて、何かしら対策を考えなくては。


 しかしウーグの奴、いつにも無くやけに饒舌に熱く話していたな……ハッ! これはもしや万目魅了の効果なのか!? 僕は男だから、あまり男には好かれたくないんだけど、後でこっそりウーグから万目魅了の効果を無効にしておこう。


 ありがたい話しだが、スキルがたくさんあるのも、考えものだな……。

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