第12話 激闘、そしてエルダードラゴンを仲間に


 「人間風情が、どうやってこのドラゴンの里までやってきた! 答えろ!」


 いやいや答えろって言いながら、いきなりファイアブレスとかされて答えられる訳無いでしょ!!


 「すばしっこい奴め、ではこれならどうかな?」


 うお! 今度は猛吹雪のブリザードブレスだあああ!!


 【伝えます。ユニークスキル、竜王之紋章の効果により、全てのブレス攻撃は無効化されます】


 それ! それ先に言ってよ!


 その前に、ステータスは上昇したけど、多分エルダードラゴンの方が僕よりもステータス面では上だろう。

 大宮殿さん! エルダードラゴンの弱点ってないのかな?


 【答えます。個体名エルダードラゴンの弱点は、同じ竜種の斬撃攻撃です】


 斬撃のスキルもないし、僕は竜種じゃないぞ! どうすれば──ああ、さっき大宮殿さんが、オーバーラックのスキルで倒せるって言ってたな。


 えっと、あのスキルは、言葉に発した事が事実になるんだよな。


 よし、物は試しだ。


 「エルダードラゴンの体よ、竜の爪で切り刻まれろ!」


 「グアアアアア!! おのれ……人間風情が! 何をした?」


 見ると、エルダードラゴンは体中から血飛沫を撒き散らしながら、肩で息を吸い苦しそうに話している。


 だが、攻撃が当たって傷ついた場所が、見る見る内に治癒していく。

 何がどうなっているんだ?


 【答えます。個体名エルダードラゴンのユニークスキル、自己再生により、与えたダメージは無効となりました】


 ちょ! 自己再生とかずるいよ! 無限に回復しちゃうじゃん!


 【答えます。個体名エルダードラゴンを倒す為には、自己再生の時間も与えないほどの、一撃必殺の攻撃でないと倒せません】


 いやいや、無理でしょ。あんな竜を一撃で倒すなんて。ちょびちょび攻撃してたら死ぬまで戦い続けても、倒せないってことか。


 大宮殿さん何かいい考えはある?


 【伝えます。竜種の弱点である腹部内を攻撃することを推奨します。氷のブレスを個体名エルダードラゴンの口の中に吐き、腹部内を凍結させることで一撃必殺の攻撃となります】


 解った! っておい! そんなことしたら死ぬんじゃないか?


 【答えます。死にます】


 あっさり言うな……!

 というか、これは殺すのが目的じゃなくて、力を示すのが目的でしょ?


 【答えます。個体名エンシェントドラゴンの里の掟とは、仲間にしたいと思ったドラゴンを倒し、決闘をして勝ち、そのドラゴンが主人と認めれば仲間に出来ます。しかしエルダードラゴンの場合はユニークスキル、自己再生があるので、殺すほどの一撃必殺の攻撃でないと、勝ったことにはなりません。ですが、エルダードラゴンには三つの命があると言われています。現在、鑑定したところ鑑定結果が出ました。お教えしますか?】


 もちもち、もちろんYESだよ!


 【答えます。個体名エルダードラゴンは鑑定結果により、現在二つの命を持っています。なので一度殺しても、また復活します】


 何だよ。じゃあ土手っ腹の中に氷のブレスを吐いても問題ないのか!


 「か弱き人間め。腐り果てるがいい! ポイズンブレス!!」


 おっ! またブレスを吐いてきたぞ! 今度は毒か……って、毒ううう!!

 うわああ!! 紫の煙が僕の体中に纏わりついて──纏わりついて──それだけ?


 【答えます! オーバーラックのスキルの一つ、毒無効があるので、ポイズンブレスは個体名ピーター・ペンドラゴンには効果がありません】


 「な、何だと言うのだ? たかが人間風情が! 我の攻撃を全て無効化だと? それに先程の竜爪牙は一体何なのだ? 貴様は竜種ではないだろ!」


 リューソーガ? なんのこっちゃ?


 【答えます。個体名ピーター・ペンドラゴンがユニークスキル、オーバーラックにより繰り出した斬撃はドラゴンが得意とする斬撃、スキル、竜爪牙です。これにより、スキル竜爪牙を獲得しました】


 「悪いなエルダードラゴン! 僕にはブレスは効かないんだ! それにお前の事が気に入った! 僕がお前に勝ったら仲間になると約束しろ!」


 「粋がるなよ人間風情が! だがよかろう。万に一つも勝ち目はないだろうが、その蒙昧でどこまで踊れるか我が見てやろう」


 嘲るように言いやがって、エルダードラゴンって意外と口が悪いんだな。と言うか、ドラゴンだけの里に僕みたいな人間がいたら、そりゃ邪魔者扱いされて当然か。


 しかも、気がつくと、周りにドラゴンたちが集まって観客になってるし。これは見世物じゃないぞ! 命を賭けた決闘だ!


 散れ散れ! 全くもう集中できないなぁ!

 ギャースカ鳴いてうるっさいんだよ!


 こうなったら、竜王覇気フルパワーだ!!


 おっ! 観客たちが一目散に逃げ出していくぞ。


 よし、仕切り直し! てか、一発で仕留めるんだ!


 「この人間風情が! ブレスが効かないなら斬撃だ! 食らえ! 竜爪牙!」


 「無駄だよーん! エルダードラゴンの竜爪牙は僕には当たらない!」


 僕の言葉通りに、エルダードラゴンの斬撃は全て僕には当たらなかった。


 「なっ! 貴様! 何をした!?」


 「生まれつき運が良いもんでね! これでお終いだ! エルダードラゴンの口の中にブリザードブレスよ放たれろ!!」


 突如、エルダードラゴンの口が開いたかと思ったら──巨大な氷のブリザードブレスがエルダードラゴンの口の中に吐かれた。


 「グヌオオオ!! 息が、息……がっ!」


 そのままエルダードラゴンは体の中から凍りつき、まるで氷で作ったドラゴンの彫刻のようになり息絶えた──と、同時に氷の肉体は、氷だけを弾け飛ばし、また息を吹き返す。


 「我は──死んだのか……? いや、言わずとも解る。貴様が我を倒したのだな。一つ問う。貴様の名は?」


 「ピーター・ペンドラゴンだ!」


 そう言うと、少し俯き微笑している。


 「解った! ピーター! いやピーター様! ドラゴンは約束を決して違えない! 今日から貴殿が私の主人だ!」


 恭しく頭を下げなが言うエルダードラゴンに僕は異を唱えた。


 「いや違う! 主人とか下僕とかじゃなくて、僕とお前は対等な仲間だ! さっきも言っただろ? 僕が勝ったら仲間になってくれって!」


 僕の言葉を聞いて笑みを零し、小さく鼻を鳴らすエルダードラゴン。

 なんか僕、笑われるようなこと言ったかな?


 「うむ! 解ったピーター様! 今日から私とピーター様は仲間だ! だが名前を呼ぶ時だけは様を付けさせてくれ! な、か、ま。としてのお願いだ!」


 「ま、まあ。お前の好きにしろよ」


 なんか仲間になった途端に、急にキャラが軽くなったと言うか……フランクな口調になったと言うか……。

 仮にもエルダードラゴンだろ?

 でも、なんか面白そうな奴だし、これはこれでいいか。


 ずっと、旅の中で、あの堅苦しいドラゴン口調を聞いているのも、何だか肩が凝っちゃいそうだし。


 とにかくだ!


 エルダードラゴンを仲間にしたぞ!


 【個体名・エルダードラゴンとの闘いでレベルが上昇し、レベルが38になりました。固有スキル・ナイトチャームを獲得しました。エクストラスキル・ファイアブレスを獲得しました。エクストラスキル・ブリザードブレスを獲得しました。エクストラスキル・ポイズンブレスを獲得しました。エクストラスキル・竜爪牙を獲得しました。ユニークスキル・ドラゴンシャウトを獲得しました。ユニークスキル・自己再生を獲得しました。アルティメットスキル・竜王之息吹を獲得しました】


 ああそっか、すっかり忘れてた──勝ったからレベルが上がったんだ。てかレベル4から一気にレベル38か。凄い上昇だ……流石はドラゴン。しかもエルダードラゴンだもんな。

 と言うか、覚えたスキルが……なんだか、どんどん自分が人外になって行ってる気がする。



 第1章・完

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