第9話 ドラゴンの里、エンシェントドラゴンとの出会い


 す、凄い。ケルベロスの背に乗った時も感動したが、蒼天を我が物顔で飛んでいるようで、とても気持ちがいい。


 そして、数分でドラゴンの里までついた。


 しかし、何という竜の種類だ。僕が知らない竜の種類がひっきりなしに空を自由に飛んでいる。


 【伝えます。現在ドラゴンの里での竜種をお伝えしますか?】


 いや、多いすぎて覚えられないから、今はNOで。


 「おーい! さっきのワイバーンさん! いる?」


 すると、上空から先程のワイバーンが我先にと飛んできた。


 そして、僕の目の前に着地すると瞳を輝かせている。


 うう……これもドラゴンチャームの影響なのだろうな。


 「キミに訊きたいことがあるんだけど、このドラゴンの里にエンシェントドラゴンがいるって聞いたんだ。どこにいるか知ってる?」


 「え、エンシェントドラゴン様でございますか。解りました。貴方様の頼みとあれば、面会できるか訊いてきます!」


 そう言うと、両翼を強くバタつかせ、猛風を撒き散らし天高く羽ばたいて言った。


 なんだ、すぐに会えるんじゃ無いのか。


 【はい。個体名エンシェントドラゴンは、このドラゴンの里を統べる長なので、通常は出会うことが困難なドラゴンです】


 えええ!? それ先に行ってよ! だったら手紙の一つでも……いや、ドラゴンたちに破り捨てたられるのが関の山か。


 だがこうして、ドラゴンの里まで来たのだ。おいそれと、帰るわけにはいかない。


 そして待つこと数十分──先程のワイバーン君が戻ってきて、面会を許可してくれるそうだ。何と言う豪運だ! あっ、オーバーラックのスキルで常時豪運状態なのか。


 さらに、ワイバーン君は、僕を里長であるエンシェントドラゴンの前まで連れて行ってくれると言い。また背中に乗せてくれた。


 ああ。空を飛ぶって最高だな。


 おっ! なんかそれっぽい竜が見えて──デカ! 今背に乗ってるワイバーン君の10倍? いやそれ以上だ。遠目で見てもそう感じるのだから、目の前で見たら、さぞ巨大なことだろう。


 「あのお方が里長のエンシェントドラゴン様でございます!」


 言うなり、ワイバーンはゆっくりと、エンシェントドラゴンの前に着地し、恭しく頭を下げた。


 僕も地面に下りて、エンシェントドラゴンの前に立つと、途轍も無い圧を感じた。何だ? 確かに銀鱗を纏い、何とも美しく厳かで神々しい姿は、他を引きつけないものがある。


 何だこれは?


 【説明します。個体名エンシェントドラゴンは現在、竜王覇気を纏い他を寄せ付けない圧を放っています。早急に記憶の大宮殿のスキルの一つ、覇気無効のスキルを発動させますか?】


 ああ。間違いなくこれはYESだ!


 すると、突然体が軽くなった。てか、大宮殿さんって色んなスキルを持ってるのかな? 後で訊いてみよう。


 壮麗で厳つく低い声音のエンシェントドラゴンは驚愕していた。


 「まさか、我の竜王覇気に耐える者がいるとは、これは2000年以上前の伝説の勇者以来か。長生きはするものだな」


 しかしデカいな。ワイバーンの大きさが霞むほどだ。


 ワイバーンの大きさが大人10人分だとしたら、このエンシェントドラゴンはワイバーンの軽く20倍は行っているぞ!


 「しかし、竜種の最上位である我も歳を取ったか。なぜかなんじと会話をするのが心地よいぞ」


 心地いい? さっきは竜王覇気で僕を脅していたのに、よく言うよ。


 【説明します。覇気無効のスキルにより、竜王覇気が消滅したので、ユニークスキル、ドラゴンチャームの効果が発動しています】


 あ〜なるほど。じゃあ今は僕に魅了されているわけだ。


 まあ亀の甲より年の功とはよく言ったものだけど、何かとこの世界のことを詳しく訊きたいが、まずは鑑定が先か。


 【伝えます。何か解らないことがある時は、私を頼ってください】


 ありゃりゃ、大宮殿さんを怒らせちゃった。


 【伝えます。怒ってません】


 うーん。何だかいつもよりも怖い雰囲気が……。


 【重ねて伝えます。怒ってません】


 はいはい。解りました! 何か解らない時は大宮殿さんに訊くよ。

 まあ、それはさておきだ。さてさて、プラチナオーブを果たして貸してくれるのだろうか?


 ここまで来て、何も無しじゃ話しにならない。


 「あのエンシェントドラゴンさん。一つだけ頼みたいことがあって、このドラゴンの里に来たんですが、その、エンシェントドラゴンさんが保有していると聞いた、プラチナオーブで、僕のステータスを鑑定してもらいたいのですが」


 「何だ、そんなことか。それならばお安いご用だ」


 そう言うと、エンシェントドラゴンは暴風を撒き散らし、どこかに飛んで行ったかと思うと、口にとても大きな、白銀に輝くオーブを咥えていた。


 そして、そのオーブを地面に置き、厳かに言う。


 「さあ。これがプラチナオーブだ。好きに鑑定するがよい。そして、鑑定が終わったら、勇気がある人間だけに与える竜の加護も授けよう。何せ数千年ぶりの人間の客人だからな」


 え? まじ? こんなに簡単にミッションクリアなの?


 これで金貨100枚──じゃなかった。


 ふぅ、またお金のことを考えると、大宮殿さんにとやかく言われるからな。


 【伝えます。個体名ピーターの思考は全て筒抜けです】


 うっ。そうでした……。


 まあいいや。とっとと鑑定をしましょうか!

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