第7話 北の大山脈、ドラゴンの里を目指せ
それでは、出ますよホログラフィーに僕のステータスが。
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LV:4
JOB:無し
HP(体力):4
MP(魔力):1
STM (持久力):3
STR(筋力):2
DEX(器用):4
AGI(敏捷):5
TEC(技量):4
VIT(耐久力):1
LUC(幸運):9999
スキル
・モンスターチャーム
ユニークスキル
・ドラゴンチャーム
・オーバーラック
・記憶の大宮殿
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僕のステータスが表示されると、ゴールドオーブにヒビが入り割れ、それと同時に、犬の鑑定士のおっちゃんは腰を抜かして床に頽れた。
「ゴールドオーブでも測定不能だとおおお!! 幸運能力値が9999を超えているのか!! それにユニークスキルのオーバーラックも記憶の大宮殿も文献には載っていないスキルだ! 一体どんな能力なのだ! 教えて下さい!」
え? 文献にも載って無いんだ。てか、そんな重要機密を教えて下さいの一言で片付けられてもねえ。まあ金貨1000枚ぐらいなら手を打っても──
【伝えます。悪巧みはほどほどに。そして、文献に記述が無いということは、このガルズの世界で初めてのユニークスキルです。国家機密にも値する情報なので情報開示はしないほうが得策だと進言します】
うっ……! 大宮殿さんに釘を刺されてしまった。
まあ確かにそうだよな。ここは、今度教えるとか何とか言って、はぐらかしておこう。
「ま、まあ。このスキルは話せば長くなるので、今度ゆっくりお伝えします」
「是非是非是非にいいいいい!!」
僕の両手を掴んでブンブン振り回す犬のおっちゃんであった。
「ところで、貴方様のお名前をまだお尋ねしていませんでしたが……」
「ピーターです。あのえっと、訳あって今はただのピーターです」
「解ります解りますとも。それだけの力があるからには、素性を隠さなくてはいけないのですね」
いや、あの〜。ただ親にもうギュスターブの名前は名乗るなと、勘当されてリスタの街から追放された元貴族だなんて、恥ずかしくて言えないです……。
しかも、勝手に都合がいいように考えてるから、そのままにしておこう。
それじゃあ、大宮殿さんに教えてもらった通りに、ジョブ神殿に──ん? 誰かが僕の腕を掴んで……って犬のおっちゃんかよ! 今度は何?
「これはとても過酷な旅ですが、もしかしたらピーター様は伝説の勇者様かもしれません。今このガルズでは大きな戦争が始まろうとしています。古い文献には、世界が滅びようとする時、伝説の勇者きたれり。北の大山脈のエンシェントドラゴンの加護で世界を救う。と、記載されています。どうか、どうか、貴方様がこの世界を救う勇者様なのか私は知りたい!」
は? いや伝説の勇者でも無いし……てか何? しれっと北の大山脈に行けとかって流れなの?
その前に別に僕は、知りたくも無いんだけど。しかも世界を救うってなに?
このガルズが大きな戦争になろうとしてるのも、今知ったんだけど。
大宮殿さん! この戦争のこと教えてくれない?
【答えます。世界名ガルズでは今、教皇国マギアヘイズと
マギアの教え? つーか、教えってことは宗教だろ? 何で宗教が亜人を奴隷にするんだよ。普通逆じゃない?
【答えます。聖マギア教とは聖マギアの教えにより誕生した宗教です。その中で、亜人として生まれたのは前世で悪人だったから、と言う教えであり、その教えには亜人は人として扱わず、来世で前世の悪行の罪を償うため奴隷として扱うこと、と言う教えがあるからです】
おいおい! そんなの普通に邪教じゃないか!
【答えます。ガルズでの宗教である聖マギア教のマギアの教えは、世界宗教と呼ばれ、逆に他の宗教は全て邪教や異端者と呼ばれています。ですので重ねて伝えますが、教皇国マギアヘイズと翼亜人国家リリウヘイズとの全面戦争を避けるのは不可能と推測されます】
え? 全面戦争を避けるのは不可能ってなに? と言うか、僕が洗礼の儀式を迎える15年間で、そんなヤバイ宗教の話しなんて一回も聞いたことなかったけど。
【伝えます。個体名ピーターが世界情勢に全く興味がなく、ただ毎日、貴族という地位を利用し怠惰な日常を──】
ああ!! ストップ!! もういいよ!!
要は僕が世界に関心が無かっただけで、今の世界は混迷を極めてるってことか。
あのさあ大宮殿さん、もし戦争が始まったらどれぐらいの被害になるんだ?
【伝えます。マギアヘイズの武力に対し、リリウヘイズの武力は乏しいですが、戦力面で考察しますと、翼亜人の身体能力は人間の平均成人男性の三人分の力と推測できます。武力兵士数はマギアヘイズの武力兵士数3500万に対しリリウヘイズの武力兵士数は900万と予想できます。この際の被害を算出しますと、両者合わせて600万人の死者。負傷者は、重症者1000万人、軽傷者2000万人になると予想されます】
ちょ、えええ!? 只事じゃないぞ!
というか、鬱陶しいぐらい、僕をジロジロ見てくるぞ、この犬のおっちゃん。まあ、もう少しだけ、話を聞いてやるか。
「あの、まだ行くか決めて無いですが、なんで北の大山脈の、エンシェントドラゴンに会いに行かないと、いけないんですか?」
「それは先程も申した通り……ぬああ! 私としたことがすみません。まずエンシェントドラゴンが所有する、プラチナオーブはステータスが99999まで測定可能であるのと、ドラゴンの加護で他のパラメーターが大幅に上昇するのです!」
なんか、この犬のおっちゃん。ただ僕の幸運能力値がどれだけあるのか、知りたいだけなんじゃ──でも、この戦争を……あれ? 何で僕が戦争を止める立場になってるんだ? 立場っていうか、戦争を止めようとする気持ちだよな。
「も、もし北の大山脈に行って、ドラゴンの里にいる、エンシェントドラゴンのプラチナオーブの鑑定結果を教えて下されば、金貨100枚お渡しします! 地図もお渡しします!」
なぬ!?
「それに。屈強な従者も無料で冒険者ギルドと交渉し、一緒に北の大山脈に行けるように手配致します。いかがでしょうか?」
旅のお供も無料か……。何より金貨100枚! これは行くっきゃない。
【伝えます。瞳が金貨になって、口元からヨダレが出ています】
うるっさいな! 悪いことするんじゃなくて、ただ北の大山脈に行って、ドラゴンの里にいるエンシェントドラゴンに会って、プラチナオーブで鑑定すればいいだけでしょーが!
【再び伝えます。口元のヨダレは拭きましたが、まだ瞳が金貨のままです】
いやだから! 違うって! これは何かの──そう! 何かの──神様のお告げかもしれない!
神託ってやつかな?
しかし、金貨100枚か──胸が躍りますな!
「あのう……ピーター様?」
「その依頼、受けましょう! このピーターがプラチナオーブでステータスを鑑定して、鑑定結果をお伝えします。ですが金貨の件──」
「解っております。その時は金貨100枚! 確かにお渡し致します!」
何だかこの犬のおっちゃん。金貨で僕のこと釣ったように思えるけど、ここは釣られておくか。
北の大山脈のドラゴンの里か──まっ、大宮殿さんもいるし、何とかなるでしょ。
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