第6話 頼りになる味方、ユニークスキル記憶の大宮殿


 僕がドラゴンチャームについて首を傾げていると、何やら慌ただしく犬のおっちゃん鑑定士が新しいオーブを持ってきた。


 「はぁはぁ……! こ、これはゴールドオーブと言って、ステータスが9999まで表示できる代物です。我がギルド内でも、このゴールドオーブはただ一つ! 是非、貴方様のステータスが見たく持って来ました。それにドラゴンチャームなんて、まだジョブ神殿で新しいジョブにも付いていない者が保有しているなんてことは有り得ない! いや、これは取り乱してしまってすいません。ですが、このガルズでは魔王よりもドラゴンの方が格上の存在なのです! ですから是非に!」


 なんだか、もの凄く早口で喋られたので、あまりよく解らなかったが、とにかくそのドラゴンチャームが凄いらしい。魔王より格上なんだな、ドラゴンって。


 「あの。そのよく解らないんですけど。ドラゴンチャームってスキルは……凄いんですか?」


 「なんと! ドラゴンチャームはユニークスキルで、まだその能力は文献に記されているだけなのです! 能力はドラゴンを魅了する能力。あの魔王よりも気高い竜族を魅了するスキルなのですよ!」


 うへ〜凄いスキル手に入れちゃったのか。


 「おうおう! さっきからガタガタうるせーぞ! 酒が不味くなった! 一発殴らせろやガキ!」


 え? やば……! 変な飲んだくれに絡まれてしまった。出来るなら悪人チャームとかのスキルがよかったかも。


 「うら! 食らえ!」


 いきなり殴って来たぞ! だがどう避ける? 無理だ避けられない!


 もうこうなったら! 


 「この飲んだくれを街の外まで吹っ飛ばせ!!」


 僕の言葉に呼応して、飲んだくれのおっちゃんは、街の外まで吹っ飛んで行った。



 【個体名・飲んだくれのマック・ジョーとの闘いでレベルが上昇し、レベルが4になりました。固有スキル・ボイス・リアリティーを獲得しました。ユニークスキル、記憶の大宮殿を獲得しました。】


 なんだなんだ? しかも個体名に飲んだくれを入れるのはどうかと……。


 【個体名については、周囲の者たちの認識によって変わりますので、ご了承を】


 え? え? 今僕の質問に誰か答えた?


 【はい。私の名は記憶の大宮殿と言って、様々な記憶を司るスキルです】


 じゃあこの声は誰にも聞こえてないし、何か解らないことがあったら、サポートしてくれるの?


 【はい。そして私でも知り得ない、度が越えた内容以外でしたらなんでも。因みに現在あるスキルで、豪運のスキルと、ボイス・リアリティーのスキルを統合し、ユニークスキル、オーバー・ラックに進化できますが、進化しますか?】


 うーん、とりあえずYESだ!


 【統合成功。固有スキル豪運とボイス・リアリティーが統合し、ユニークスキル、オーバー・ラックに進化しました】


 なんだか酒場のおっちゃんには悪いが、色々と覚えちゃったなスキル。


 【自業自得です】


 あのさあ、ところで、記憶の大宮殿さんに一つお願いがあるんだけど。名前が長いから大宮殿さんって呼んで良い?


 【はい。可能です。ではこれから私のことを、そう呼んでください】


 あとさあとさ! 大宮殿さん! オーバー・ラックってなに?


 【はい。オーバー・ラックとは常に豪運状態になり、言葉に発したことが、現実になるユニークスキルです。しかし余りに突拍子も無いことは不可能です。例を挙げるなら、個体の性別を変えたりすることです】


 うわ、めっちゃ便利じゃん! まあ男をいきなり女にはしないけどさ。

 それとさ、ジョブチェンジってどうするの? 僕の適性ジョブはギャンブラーみたいだけど。


 【はい。各種ジョブの変更は、ジョブ神殿で行います。ジョブ神殿はどこの都市にも必ず有ります。ジョブ変更には金貨1枚が必要です】


 へえ〜。じゃあ後でこの街のジョブ神殿で、ギャンブラーのジョブにでもなってみるか。



 「す、凄い! あの飲んだくれは、あんな風に見えてもCランクの冒険者。それをいとも容易く……やはり貴方様は特別なお方! 是非鑑定をさせて下さい!」


 ああ、そうだった。大宮殿さんとの会話に夢中になって犬のおっちゃんの事をすっかり忘れていた。



 「まあ、解りましたけど、まずはその……何かお礼みたいな……」


 いきなり、鑑定させてやるから、金貨出せなんて言ったら恐喝だもんね。ここは穏便に穏便にと。


 「解りました! では金貨20枚出しましょう!」


 やった! これも豪運の力なのかな? まあ金貨10枚に、この20枚を足して金貨30枚だからプラマイはゼロなんだけど、まあ良いでしょう。


 「金貨20枚ですね。解りました。では早速鑑定しましょうか」


 そして僕は、ゴールドオーブに両手をゆっくりと翳した。

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