第5話 ルストの鑑定ギルドでも大騒ぎ


 何も知らない僕に、アランは水晶玉について教えてくれた。


 なんでも僕が水晶玉と呼称していたのは、オーブと呼ばれる国の宝珠や宝具と呼ばれる、とても希少価値の高いものであり、それ一つで国が丸々買えてしまうぐらいの価値があるらしい。


 リスタのオーブはブロンズオーブと呼ばれ、鑑定能力値の最大限が99らしい。それでもかなりのレアなアイテムであるのは間違いない。


 そしてここ、ルストの街にあるオーブはシルバーオーブと呼ばれ、能力の最大値が999まで判るという。


 ていうか、さっきから頭の中で囁く声はなんだろう?



 【個体名・アラン・サンドロスとの闘いでレベルが上昇し、レベルが3になりました。固有スキル・モンスターチャームとドラゴンチャームを獲得しました】



 「なあアラン。さっきから、なんか僕の頭の中で誰かが囁いてるんだけど」


 「ああ、それはきっと、さっきの戦闘で私に勝ったからレベルが上がったのだろう。レベルが上がると頭の中で囁く声が聞こえるんだ」


 「アランはなんでも知ってるな」


 僕の言葉に、蔑む意味ではなく、単純に照れ隠しのような微笑をするアラン。


 「ほら見えてきた。あれがルストの商人ギルドだ」


 アランが指を差した場所を見ると、リスタの街よりも立派なギルドだった。


 「お、大きいな……」


 「当たり前だろ? ここは大都市ルストだ。冒険者ギルドの冒険者たちも高ランクの者たちばかりで、平均がCランクだと言われている」


 「その、Cランクって相当凄いの?」


 「まあ、ハイオークぐらいなら軽く一撃だな」


 は、ハイオークですか。ゲームでしかやった事ないけど、確かオークの上位種だよな。そんなモンスターを軽く一撃……恐ろしやCランク。


 「なんだ? ジョブ神殿で適性ジョブになって、冒険者になるんだろ? ランクぐらい知っておいた方がいいよ」


 はい……仰る通りでごぜーます。

 そうこうしている内に、商人ギルドに無事着いた。


 「よし。じゃあ中に入ろうか」


 なんだか僕が鑑定されるのに、なんでアランの方がウキウキなのかよく分からない。


 でも、ステータスの鑑定士さんって皆、爆乳のお姉さんなのかな? はてさて、この街ではどんな爆乳の──ってええ! 犬!? 亜人!? しかも男……。


 「ん? 何を驚いている? 亜人を見るのは初めてか?」


 「え? ええ、まあ」


 はあ、早くリスタの街に戻って爆乳の女鑑定士さんに会いたい。


 「おやおや、これは剣聖サンドロス殿。申し訳ないが貴殿のステータスはシルバーオーブでは測定不能ですが。なにゆえここに?」


 え? シルバーオーブでも測定不能の人に勝ったことになってるのか? 僕は。


 だからレベルが上がった……なんだか恐ろしい、だからアレンは僕に付き纏ってステータスを見ようとしているのか。


 「いやいや、今日は、私の横にいる、金髪碧眼の少年を鑑定して欲しくて来たんだよ」


 「ほう。解りました。では少年、シルバーオーブに両手を翳してください」


 僕は言われるがままに、シルバーオーブに両手を翳した。リスタのブロンズオーブと違って、輝きが違う。なんと言うか、こちらのオーブの方がより神々しいと言うか、なんと言うか。


 「鑑定結果が出ました。それでは表示させます」


 ああ、いつものホログラフィーね。



 ————————————

 LV:3

 JOB:無し

 HP(体力):3

 MP(魔力):1

 STM (持久力):3

 STR(筋力):2

 DEX(器用):3

 AGI(敏捷):3

 TEC(技量):3

 VIT(耐久力):1

 LUC(幸運):999


 スキル

 ・豪運

 ・モンスターチャーム


 ユニークスキル

 ・ドラゴンチャーム 

 ————————————

 



 『ええええええ!! ドラゴンチャーム!!』


 何やらギルド内が大騒ぎしている。なんだ? ドラゴンチャームって。



 「こ、これは……有り得ない、まだレベル3で幸運の能力値が測定不能だと? それに、魔獣使いでも取得者は世界でも数える程の、王国近衛兵団長クラスでも持っているものはいないとされる……ドラゴンチャームのスキルを持っているなんて!」


 そして、例の如くオーブが割れた。てかそんなに凄いのドラゴンチャームって?


 「ぬあ! シルバーオーブにヒビが! 測定不能でオーブが耐えられず割れてしまった」


 あっ! ごめんなさい。犬の亜人のおじちゃん。でも悪気があって壊したんじゃないんだよ。


 あっ! それよりも金貨10枚だよ!


 「あの……ここで鑑定したら金貨10枚を貰えると聞いて、リスタの街のギルドからやって来たのですが……」


 「ん? そんな話し聞いとらんぞ?」


 え? あああ!! 馬車で五日間ぐらいって言われてたから、伝書鳩がまだ着いてないんだ!


 ケルベロスのおかげで、すぐにルストには着いたけど、僕は今文無し、一体この先どうしたら……。


 「おっ! 伝書鳩が来ましたぞ。ふむふむ、解りました金貨10枚差し上げます」


 おっ! ナイスタイミング! ラッキー!!


 「ふふふ。やはりピーター君には何かあると思っていたが、これほどとは。私はまた、はぐれケルベロス討伐に出るが、いやはや、良いものを見せてもらった。またキミに会えることを期待しているよ。それじゃあ」


 そう言うと、アランは静かにギルド内から姿を消した。


 ケルベロス討伐か……できるなら、僅かな時間しか共にしていないが、あいつには愛着が湧いてるから、逃げ切ってもらいたいものだ。

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