第1章 追放、そしてドラゴンに出会に。

第1話 鑑定ギルド内でまさかの追放


 ここで、僕の兄弟を紹介するぜ!


 まず長男のカルロス・ギュスターブ。

 こいつは──普通。

 以上。


 おいおい、と言う声が聞こえてきそうだが、だって本当に絵に書いたように普通なんだもん。

 体格には恵まれていて、いかにも戦士系貴族。

 性格は穏和で優しいお兄ちゃん。身長も185センチぐらいでデカい。


 うん。普通だな。


 そして次男のマルカス・ギュスターブ。

 こいつは──嫌な奴。

 以上。


 ごめんなさい。今度はちゃんと説明をしなくては。

 こいつがなんで嫌な奴なのかは、とにかく、自分が一番優れていると言う考え方で、長男の前では腰が低く、三男の僕の前ではメッチャ偉そうだから。それに身長160センチぐらいのチビだし。

 しかもよく、自慢話を一日一時間は聞かされる。


 なんの自慢話かって?

 そりゃ、あることないこと、でっち上げて自分を大きく見せようとする、心の狭い奴だからだ。


 軽くだがこんな感じです。我が家の兄弟の関係は。


 ではでは本題の鑑定ギルドに、まあ着いたわけですが──これ商人ギルドの中にあるんだよね。だからわざわざ鑑定ギルドなんて名前付けなくて良いのに。


 と言うか、この商人ギルドやたら大きいな。

 冒険者ギルドが霞んで見えるほどだ。

 まあこのリスタの街が、大きな商業街で成り立っているからなのだろうが。しかもその街の大貴族の僕です。


 二回言います大貴族です!


 んまあそんなことよりもだ、さっさと洗礼の儀式を済ませよう。

 この15歳になるまで、それなりに剣術は鍛えた。適性ジョブは剣術系のジョブだと自分でも思っている。


 そして、大貴族定番の特権でもある──順番待ち無し!

 嗚呼なんて良い響きなんだ……おっと、ついつい貴族の自分に浸ってしまった。


 さて、やはり最初は長男のカルロスからか。


 お、なんか占いの館に出てきそうな水晶玉に両手を翳してるぞ。カルロスのやつもなんだか少し緊張しているな。


 しかし、女鑑定士さんの胸が気になる。胸の中にメロンでも盗んで入れているのでは──と言うぐらいデカい。


 「鑑定が終了しました。こちらが鑑定結果です」


 水晶に表示された文字が、何もない空間にデカデカと表示された。

 さながらホログラフィーだ。

 えっとなになに──

 

 ————————————

 LV(レベル)1

 JOB:無し

 HP(体力):60

 MP(魔力):20

 STM (持久力):55

 STR(筋力):50

 DEX(器用):30

 AGI(敏捷):40

 TEC(技量):40

 VIT(耐久力):35

 LUC(幸運):1


 スキル

 ・五月雨さみだれ突き

————————————


 『うおお! すげええええ! まだレベル1なのにいいい!!』


 ギルド内が大喝采の嵐だ。そんなにすごいの? これ?

 巨乳の女鑑定士さんも目を白黒させている。


 「す、凄いです。まだレベル1なのに、これはレベル30はあるかと言う数値です。あっ、すいません! つい驚いて適性ジョブを言うのを忘れてました。適性ジョブは、クルセイダーです」


 『うおお! すげえええ! まだレベル1でクルセイダーだああ!!』


 それを聞いた長男は、ただ何も言わず驕らず、一言「鑑定ありがとうございました」と言って父の方に戻って行く。


 父は、「流石はギュスターブ家の長男である! これからも精進するように!」と、まるでテンプレみたいな台詞を吐いている。そして鼻の下が伸びてるよ。


 嬉しいんでしょ? 嬉しいんだよね? だったら喜んでやれよ。

 つーか外野うるさい!


 お次はカルロスか、あいつは──まあ平均ぐらいだろ。


 そして、カルロスも水晶玉に両手を翳すと、ホログラフィーのように空間に文字が浮かんだ。


 ————————————

 LV(レベル)1

 JOB:無し

 HP(体力):40

 MP(魔力):90

 STM (持久力):35

 STR(筋力):30

 DEX(器用):40

 AGI(敏捷):35

 TEC(技量):50

 VIT(耐久力):15

 LUC(幸運):1


 スキル

 ・連続魔法

 ————————————



 『うおおお! こっちもすげええ!!』


 最早、毎度毎度のお約束だな。


 そして、女鑑定士さんも目を白黒させていた。


 「お二人とも凄いです……! で、では適性ジョブをお伝えします。適正ジョブは、ウィザードです」


 来るぞ来るぞ来るぞ……『うおおお! すげえええ! まだレベル1でウィザードだあ!!』


 はい、来ましたね。僕の時もその大喝采よろしく!

 つーか、マルカスの奴、僕を鼻で笑って父の方に行きやがった。

 父はカルロスの時と同様に、マルカスにテンプレ台詞を言うと、ホクホク顔で鼻の下を伸ばしている。


 よかったな、お前の息子達はレアカードだぞ。


 そして、僕のターンがやってきた。


 よくよく見ると、高そうな水晶玉だ。そして、毎度のことながら、ホログラフィーが……あれ?



 ————————————

 LV(レベル)1

 JOB:無し

 HP(体力):2

 MP(魔力):1

 STM (持久力):2

 STR(筋力):1

 DEX(器用):1

 AGI(敏捷):3

 TEC(技量):2

 VIT(耐久力):1

 LUC(幸運):99


 スキル

 ・豪運

 ————————————



 『ぎゃはは!! なんだこの数字は! 幸運なんてステータスのオマケだろ!!』


 僕はおかしいと思い、巨乳の女鑑定士さんに水晶玉が壊れているのではと、言うと……。

 壊れてないそうだ。


 つーか外野! 笑いすぎだぞ! これじゃあ恥晒しの公開処刑じゃねーか!

 それになんだよ! 幸運が99ってカンストじゃないか! 凄いんじゃないの?


 「あの……えっと、適性ジョブなんですが……」


 「え? ああそっか。教えてください!」


 「適性ジョブは……ギャンブラーです」


 「え? ギャンブラーって、あのギャンブラー?」


 女鑑定士さんは困った表情で続ける。


 「はい。あの……賭け事などで有名なギャンブラーです」


 だが僕も必死で食い下がる!


 「でも幸運が99ですよ! 99! これって凄くないですか?」


 「本来、幸運と言うステータスは、本当にオマケ程度のもので、道を歩いていたら、たまたま銅貨を拾う程度の能力です……」


 終わった……そして外野は──『ぎゃははは! ギャンブラーだってよ! ただの遊び人だろ! ぎゃははは!』


 僕が父の方にグッタリしながら向かうと──目を合わせてくれなかった。さらに言葉もない。顔は額に怒張が見える。


 他の二人の兄弟も励ましの言葉一つ無い。大恥をかいたのに……。


 「お父様……」


 「何も言うな! このギュスターブ家の名を汚す大馬鹿者が! 貴様は今日限りで勘当だ! この街にも来るな! ギュスターブ家から貴様は追放だ!」


 そう言って、顔も合わさず、金貨30枚が入った袋を投げつけられ、ギルドから立ち去った父であった。


 兄弟も何も言わず僕の前から立ち去った。


 嗚呼、そうか、ここは自分の子供を自慢する場所でもあるのか。

 そして僕はその自慢に泥を塗った。だから捨てられたのか。


 なんか──前世で読んでたラノベで、なんで貴族が悪者の立場か分かった気がする。


 だってさ、15年間も一緒にいた家族を、すぐに捨てられるなんて、薄情を通り越して鬼だろ。


 息子を他者に自慢する道具としか思ってないから、こんな非人道的なことができるんだ。


 嗚呼、これが貴族の世界なんだな。なんて恐ろしく醜い世界だ……。


 そして、僕は手切れ金として渡された金貨30枚を持って、トボトボと街を彷徨うように、街の外に向かった。


 女鑑定士さんの呼び止めの声も聞かぬままに。

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