配送業社 株式会社 羽歌ノ御(ウカノミ)

いぎたないみらい

ここか…。遠かったぁー。

ピンポーン


「はーい」

「宅配便です。こちらにサインを」

「………はい。ご苦労様です」

「ご利用ありがとうございました」


パタン


「なんか速いな、配達」

「あー、うー」

「はやと、つむり。何見てんの?」

「ぱぱぁ。おっきいとりさん」


子供たちの視線の先。息子が指差す窓の外。亜麻色の鳥がいる。大きくはないと思うが。


「きらきらの、おそらとおんなじおめめ」


亜麻色の体に、空色の眼のでかい鳥、ねえ。


( アマサギは亜麻色だけど、黄色っぽい眼だし。空色の眼の鳥なんて聞いたことねえな )


「ぱぱぁ?」

「ん。すごいなあ、珍しいもんを見たなあ」


2人の頭をくりくり撫でてやる。


……あぁ、弾けるような笑顔……。最高級の癒し………。


ふと、亜麻色で思い出す。配達員の髪色も亜麻色だったと。




※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「ただんまー。配達終わったよー」

「おかんりー、やっちゃん。お土産はー?」

「ないよそんなん」

「おかえりなさい。お疲れ様」


せんちゃんからお茶を受け取って飲み干す。温められているところに優しさが感じられる。


「おー、おかんりー鵺っ子。土産は?」

「無いですよ」

「チッ。んだよ、使えねー。せっかくの京都と北海道なのに」

「社長。やっちゃん帰ってきたばっかなんでもうちょっと労ったげて。るーちゃんも」

「せんちゃんだけだよ…優しいのは……」


赤テン鳥の社長が経営する配送業社。社員十数名、バイトが3人。とにかく速さが売り。本当に速いらしいので、ここに依頼する人が多い。連日忙しく働いていて休みが少ない。

え?ブラックだって?社長曰く、


「給料高いしいいんだよ、多分」


と、スルメを食いながらのお言葉。

鎌鼬センパイが怪我したら、ちゃんとお見舞いに行く人なんです。えぇ、人徳があるから成り立ってるんです。


さっきから『鵺』とか『赤テン鳥』とか『鎌鼬』とか何なんだって?

そりゃ僕ら、妖怪ですもん。あやかしやら怪異やら言われたりもしますけど。


あやかし町 恵比寿の社から徒歩5分の場所に、オフィスを構えております。

株式会社 羽歌ノ御。是非ご利用下さい。

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配送業社 株式会社 羽歌ノ御(ウカノミ) いぎたないみらい @praraika

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