151.ゲームに参加する子

「心までビリッと感電、伝導ダンボール! この配信は《鉄製ダンボール》の提供でお送りします」


上位チャット:お

上位チャット:えっ……何?

上位チャット:あー、宣伝用エルフさんだ

上位チャット:そうか、それがあったか

上位チャット:エルフさんの急な笑顔は心臓に悪い


「悪いのか?」

「エルフは気にしなくていいわよ」

「そうか」


上位チャット:キリシたんの声がした!

上位チャット:うおー、キリシたん!

上位チャット:どこどこー?

上位チャット:エルフさんちにいるの?


「いないぞ」


 カメラをぐるりと回して、部屋には俺しかいないことを示す。


「あたしたちはゲームを通して通話してるのよ。だけど……」

「だけど?」

「その前に、あんた、気軽に自分の部屋映すんじゃないわよ! 危ないでしょうが!」


上位チャット:それはそう

上位チャット:皆びっくりしたのかチャット数秒止まったし

上位チャット:俺なんか息止まってしゃっくり始まったわ

上位チャット:草

上位チャット:しかしまあ、なんだ

上位チャット:普段見えない範囲も映ったけど

上位チャット:飾り気が微塵もない……!


「男のひとり暮らしだぞ?」


上位チャット:男でひとり暮らしですが、部屋の隅にインスタント麺は積み上げてないです

上位チャット:ああ、やっぱりあれってインスタント麺なんだ……

上位チャット:俺も見間違えかと思った


「三食でも飽きない」


上位チャット:凄い不健康そうなこと言っておられる

上位チャット:せめて、野菜と一緒に食べて


「野菜」


上位チャット:野菜ジュースw

上位チャット:もう一塊あるのは何かと思ったら、それ全部野菜ジュースかよw

上位チャット:人に食わせるメシ以外はどうでもいいのか、このエルフw

上位チャット:極端すぎィ!


「はいはい、ゲームが始まらないでしょ。案件なんだから、エルフもちゃんと場を仕切りなさいよ」

「ん」

「ひとまずは自己紹介からかしら。エルフに出会った順でいいわね?」


上位チャット:異議なし

上位チャット:お願いしまーす


「画面を出すぞ」


 俺はゲームの設定を操作して、配信画面上にゲーム画面を呼び出す。


上位チャット:お

上位チャット:ちっちゃいキリシたんだ

上位チャット:可愛い


 大きなモニターを備えた広間には、白の壁とタイル地の床に、丸っこくデフォルメされた自動ドアがあった。

 その部屋の中央で、青みがかった黒の修道服に身を包んだ――三頭身のアバターが仁王立ちをしていた。


「まずはあたしね。大名おおなキリシ。キリシたんの愛称の方が知られてるわ。主に《ガンフィールド》の弓縛りプレイを配信しているの。よかったら見に来てちょうだい」


上位チャット:おおー、ちゃんとゲームアバターもキリシたんしてる

上位チャット:一目でキリシたんだってわかる

上位チャット:わざわざゲーム内アバターも作ったの?


「AIによる画像生成でアバターを作っているらしいぞ」

「どうもー、《鉄製ダンボール》の加賀原美姫子です。うちのプログラム班が頑張ってAIによる画像生成でアバターを作れるようにしました!」


上位チャット:情報量が何も増えてない

上位チャット:オウムかな?

上位チャット:何しに出てきたのw


「えーっと、あとは、リアルの人物からでもVのアバターからでも、すぐにこのゲームで使える三頭身アバターを生成できるのが特徴ですねー。配信者向けの機能のひとつでもありますよ」


上位チャット:リアルからでもいけるのか

上位チャット:ということは、エルフさんも?


「俺」


 俺は己のプレイキャラクターをキリシたんの横に並べた。


上位チャット:お耳よし!

上位チャット:おー、エルフさんっぽい

上位チャット:ミニエルフいいね

上位チャット:は? デミエルフだが?

上位チャット:レッサーエルフだろ


「あんたたち、何で争ってんのよ……」

「次はヨーキだぞ」

「ワシ!?」

「俺様は!?」


上位チャット:なんか、えらいすっ飛ばされた!

上位チャット:【悲報】炎太郎、忘れられる

上位チャット:逆神様とスタッフも忘れられてるんですが

上位チャット:キョーカちゃんと社長も

上位チャット:どうしてそんな順番になっちゃったの?


「《鉄製ダンボール》の人の次に会ったのはヨーキ」


上位チャット:なるほど

上位チャット:命令は上書きされるエルフ

上位チャット:正しい命令を書き込もう

上位チャット:ゲームに参加する子以外の自己紹介はカウントしないでいいんです


「そうか」

「まったく、俺様としたことが焦ったぜ」

「じゃあ、ミソラの番だぞ」

「ふぇっ!? わ、私ですか?」

「俺様は!?」

「三十路の男性は子供とは呼び難いぞ?」

「俺様、まだ二十代なんだが!?」


上位チャット:ちょっと上書き失敗しちゃったぜ


【お知らせ】

 カクヨムネクストで連載中の『その誇りに代えても』50話無料キャンペーンが始まりました。キャンペーン開始当初35話だったところ、50話に拡大していただきました。

 期間限定ですので、ぜひこの機会にお読みください。あと、フォローと☆をお願いします!

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