137.明るくフレンドリーな幼女

「あーあ、死んだのじゃ」


 三人目の幼女が穴に消えていった。今回はいいところが何もなかった。


上位チャット:ドンマイドンマイ

上位チャット:切り替えていこう

上位チャット:タイムも出てなかったし今回は練習だったということで

上位チャット:やっぱ、デモスキップは難しいよね


「うむうむ。少し感覚が戻ってきたし、そのうちうまくいくのじゃよー」


上位チャット:えー、本当でござるかぁ?

上位チャット:これは疑わしい幼女


「ワシを疑うとは、お主らそれでも渡辺家の者か! 世界一の幼女を信じるのじゃぞ!」


上位チャット:へへー、信じますですじゃ

上位チャット:汝、幼女を信じよ

上位チャット:信じちゃうー


「信じる心は大事なのじゃ。ところで、ここに霊媒師が作った魔除けの壺があるんじゃが、一〇〇万円でよいぞ?」


上位チャット:ああー、買っちゃう買っちゃう

上位チャット:なんてこうみょうなわななんだー

上位チャット:信じる心を利用していく幼女、これはいけませんよ


「むむむ、まだ騙され……信じる心が足りぬ者が居るようじゃの。ええい、今なら出血大サービスじゃ! 月々八万円のローンでもいいのじゃ!」


上位チャット:ああー、買いますぅー

上位チャット:ちたな

上位チャット:ちょっとー霊媒師ー、壺足りないよー


「ワッハッハ、なのじゃ」

「走らないのか?」


 コントローラーを置いたまま視聴者と雑談を続ける幼女に、俺は口を挟んだ。


「お、なんじゃ? エルフもプレイしたいのかの? しっかたないのう。ほれ、特別じゃぞ」


上位チャット:エルフさんがプレイするならデモ飛ばしのところはどう?

上位チャット:いいね、それ

上位チャット:また、何か幼女がやりやすい方法を探してもらおう!


「おお、いいのう! エルフよ、デモ飛ばしのやり方はわかるかの? スイッチバグはちっとコツが要るのじゃ」

「酒飲み幼女はそれでいいのか?」

「よいぞ! さあ、教えてやるからステージ開始じゃ!」


上位チャット:エルフ出陣

上位チャット:ブォー! ブォオー!(ほら貝)


「さっきも説明したのじゃが、スイッチバグは二つのスイッチをほぼ同時に押すことで、ブロックをコインと入れ替える処理を無限化する。この『ほぼ同時』というのがミソでのう。ズラす必要があるんじゃ。ワシがやったことは覚えておるか?」

「覚えた」

「よし! なら、それを再現するんじゃ。完全に同時にしてはいかんぞ」

「ん」

「スイッチを押したらジャンプしてから先に向かうのじゃ」


上位チャット:そして、あっさり再現してのけるエルフさん

上位チャット:本当によく一回見ただけでできるなぁ


「ほい、よっ、ほっ、と」

「かーっ! ホント、エルフは大したもんじゃのう! どうして、見ただけでそんなあっさりいけるのかわからんわい」

「ここから変える」

「おおっ!? そこ、当たらんのか!」

「この敵は上からのが猶予ゆうよが増える」

「これはいいのう。ワシも簡単に真似できそうじゃ」

「最後は隙間を縫うぞ」

「いやいや、これは人間には無理じゃって」


上位チャット:うわぁ、何これ

上位チャット:判定ギリッギリで敵踏んでるのか

上位チャット:今のはRTAだけじゃなくてTASにも影響あるぞ

上位チャット:さすが、エルフさん


「うむ。見事じゃ」


上位チャット:拍手喝采

上位チャット:やんややんや

上位チャット:ブラボー


「んー」


上位チャット:どしたの?


「俺は凄いプレイをしたぞ」

「そうじゃな」


上位チャット:???

上位チャット:急な自画自賛


「むう」


上位チャット:で、どうして不満そうなんですか?

上位チャット:なんで?

上位チャット:ちょっとー幼女ー、難度足りないよー


「いや、それワシのせいじゃないじゃろ」

「酒飲み幼女がミソラと違う」

「え、ワシのせいなのじゃ!?」


上位チャット:逆神様?

上位チャット:どうして、急に逆神様が?


「酒飲み幼女」

「な、なんじゃ?」


 俺はコントローラーを酒飲み幼女に突き返す。






「逃げるな」






 話はとてもシンプルだ。


「――挑戦しないなら、RTA走者だなんて名乗るのはやめておけ」


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