第3話

店員はすかさず声を掛けた。

「どうです?使ってみますか?今ならキャンペーン中なので7日間金利無料です」

お客は少々悩みながらも答えた。

「お願いしようか」

店員は元気一杯に声を張り上げる。

「無知が踏み込む地獄道!いってらっしゃい!」

他の店員も全力で声を張り上げる。

「ジャンケンポン!アイコデ、バカーー!」


(・・・・)

お客はなんも言えない。



するとレオタード姿の男女数人がお客のテーブル前に現れた。

「それでは例のアレやっちゃって、かまして、バブッチャッテ!」

男女数人は例のCM音楽を口ずさみながら全く練習もしていないグタグタダンスを始めた。

「レッツゴー!ポジティブへー、青木夢―、そうちゅなぶごー、レスナルヘー」

全くやる気が無いダンスと歌にお客の開いた口が塞がらない。

頃合いを見て店員が声を挟んだ。

「オーケーオーケ!最高だったよ、ナイスパフォーマンス。お客さんも大満足ですね。それではお支払いはサラ金カードからとさせていただきます。15万円です」


(え?ああ・・・・)

お客はなんも言えない。


すっかり酔いが醒めてしまったお客はそろそろ店を出ることを決意した。

「それじゃあ、おあいそで」

店員は元気一杯に声を張り上げた。

「3番テーブルお会計ありがとうございます!」

他の店員も全力で声を張り上げる。

「あんたのチーズはどこいった!パンナコッタ」


(・・・・)

お客はなんも言えない。


店員は伝票を確認すると金額を伝えた。

「えー87万4千円です」

お客はあまりの高額会計に驚きの声を上げる。

「え?!8じゅう、7なな万円?!」

店員は平然と答える。

「はい。いつもありがとうございます」

(・・・・)

お客はなんも言えない。

動けないお客を見て店員は声を掛ける。

「サラ金カードでお支払いしますか?」

お客は思考がしっかり働かなくなってしまっており従う以外道は無いと思いお願いする。

「お願いしようか」

店員はお客の靴を脱がすとすかさず別の店員を呼んだ。

「カード支払お願いしまーす!」

しばらくするともの凄く嫌そうな顔した二人の店員がしぶしぶやって来た。

店員は気にせず笑顔で宣言をした。

「それでは、ただいまよりサラ金カード払いを開始いたします!」

その合図とともにカード払い店員は椅子に座らせられ、他の店員が両手を後ろに押えた。

すると店員はお客の靴を鼻に押し付けた。

カード払い店員は悶絶する中、魂の声を張り上げた。

「グオーーー!!クセー!クセー、チーズ、クセーーー!オェ!」


(・・・・)

お客はなんも言えない。

カード払い店員は途中意識を失い床に倒れこんだ。

他の店員が駆け付けタンカーで運ばれていった。


悪魔と化した店員は笑顔で残りの決済を済ませようと続ける。

「それでは残りの決済を行います」

一部始終を目撃していたカード払い店員は顔面蒼白となり、全身が震えていた。

店員はおもむろにお客のヅラを掴むと笑みを浮かべながらカード払い店員の鼻に押し付けた。

「ギャーーーー!オェ!クセー!アブラ、腐敗、オェ!」

「ガクッ」と頭が垂れるのを確認すると、決済が無事完了した合図に店員は笑顔でお客に靴とヅラを返した。

そして精一杯の心を込めてお客をお見送りする。

「それではお客様のお帰りです!」

他の店員も全力で声を張り上げる。

「アセーーーーーーーーー!!」


店員はお客を店の外までエスコートすると最後に涙声の中、感謝の声を伝えるのだった。


「ありがとうございました!またオシッコクサイ!」



(・・・・)

お客はやっぱりなにも言えなかった。



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居酒屋 遠藤 @endoTomorrow

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