第2話ウォルストン魔法学園
朝、目が覚めれば見慣れない天井、隣を見ればすごい寝相のエルドがいる。
なんでベッドから落ちてなお逆さ向いて寝れるんだ?
「エルド起きろ朝だぞ」
「あと5いや10分寝かせてぇ」
どんな格好で言っているのか鏡で見せてやりたいがあいにく手元に鏡がないからそのまま起こすことにした。
エルドを起こして学園へ向かう支度をしているときふと思ったことがある。それは、師匠と暮らしているときとほとんど変わらないということだ。多分これこれからも毎朝エルドを起こし続けるのかと思うと思わずため息がこぼれた。
「ほら、行くぞ」
「うへぇぃ」
ウォルストン魔法学園、この学園は1000年前にこの地に建設され多くの一流魔法使いを輩出してきたいわば老舗の名門校だ。魔法の扱いはもちろん魔道具の扱い方を実践形式で教えているためほとんどの授業が実技科目なのだ。もちろん座学もちゃんとしていてる。
そして500年前世界を魔王の手から救った勇者が在学していたことでも有名だ。
にゃーん
眠い目をこするエルドの手を引っ張り教室へ向かう途中黒い猫が正面から勢いよくジャンプしグランの顔に張り付くようにしがみついた。
離そうとしても離れない。むしろ爪を立ててしがみつこうとするので痛い。エルドに助けを求めようとしたがまだ寝ている。
なんでこの状況で寝れるんだよ頼むから起きてくれ!
心から起きてくれと叫びエルドをつかんでいる腕を振り、起こそうと試みるがやっぱり起きない。それもそのはず、ここまで引きずられていて起きないのだから腕を振るごときで起きるはずがないのだ。
諦めてその場に立ち尽くすグランのもとに一人の少女の声が聞こえた。
「リリ!今すぐこっちに戻ってきなさい」
リリと呼ばれた黒猫は素直にグランの顔から離れ少女の方へ駆けていく。
猫から解放されたグランは猫を抱える少女に声をかけられた。
「ごめんなさいリリが急に飛び出して止めることができなくて」
「いいんだ、昔からよく動物になつかれてたから少し懐かしかったよ」
そういえば昔このリリって子に似た子猫をメリアと一緒に育ててたっけ。確かその時も顔に張り付いてて離れようとしなかったな。
「それでは私はこの辺で失礼します」
「あぁ」
少女と別れ再びグランはエルドを引っ張りながら教室へ向かった。
ゴーンゴーン
授業開始の鐘が学園中に響く。
「皆席に着いたな、私の名はフロック・ハドラー。突然だがこれから君たちにはレクリエーションも兼ねた実習を行ってもらう。至急学園裏にある森の前に集まるんだ」
数分後生徒たちは森の前へ集まった。
「今から君たちにはマリナローズを採ってきてもらう。制限時間は3時間、誰かとチームを組むもよし、一人で探すもよし、他人から奪うのもありのレクリエーションだそれでは今から3分後からスタートだ」
マリナローズとは見つけるのは難しくないがその花から漂う魔力が周囲の魔物や魔獣を引き寄せるため戦闘スキルと予備知識がないと採取は困難なものとなる。
ちなみにマリナローズはポーションの作成や錬金術なんかで重宝されている。
マリナローズの採取か、他人からの妨害を考えるとチームを組んだ方がよさそうだな。まぁ誰と組むかは決まってるんだけど。
「グラン、一緒にチームを組まないかい」
「起きてたんだな...いいよ元々お前と組むつもりだったし」
いつの間にか起きていたエルドにマリナローズについて色々教えてもらい軽く作戦を立てた
「分かった、それじゃあその作戦で行こう」
「あぁ頼むぞ」
辺りを見渡すとやはりチームを組む者が多くにぎわっていた。しかしその賑わいに反し一人で挑む者も少なからずいた。
そして3分後ハドラー先生の合図でレクリエーションがスタートした。
白と黒の交わる世界 天海うな @unatako95
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