私の少女王国

さとうきいろ

私の少女王国

私を閉じ込めるごと小糠雨見渡すかぎり降り注いでいる


のびきった黒髪束ねココア入れ擦り切れかけたビデオを流す


少しずつ手放していく天使だった頃に描いた世界の景色


女子たちの言語が分からなくなった高二の夏休み明け、突然


王冠を無くした男が王様のような態度でテディベアと並ぶ


国破れ図書室に来ることも減り貸し出しカードの書き方忘れ


崩れてくフルーツパフェを目の前にしても動じずいられる心


壊滅的センスで爪を塗っていく百円ショップのネイル鮮やか


すんなりと決まる進路も夏空も他人みたいに明るく光る


けだものの心臓のまま けだものは意外と臆病 部屋から出ない


れっきとした女の軀 憎んでるわけではなくて覚悟がないだけ


どしゃ降りに駆け出し濡れる制服は普段よりかは心地よかった


もろもろの問題ぜんぶぶん投げてTSUTAYAで借りるゾンビ・ムービー


続編はつまらないという法則を得意げに語るまだ生きるのに


くるりるりいつか一人で暮らす部屋の天蓋ベッドのレース抱きしめ


世迷言めいたブログを始めては閉鎖を何度も繰り返している


界雷や ここから大人になれという神様からのfuckin'お告げだ


でまかせの大丈夫では誤魔化せず機械の部分を空に曝した


歌謡曲ばかり流れるリビングがけっきょく一番落ちつくところ


うっすらと氷が張った水たまり踏み砕くような卒業式だ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私の少女王国 さとうきいろ @kiiro_iro_m

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る