上陸
森上敦の兄の船に荷物を乗せた大千達は船中でジュースを飲んでいた。
夏真っ只中の炎天下で飲むジュースは身体によく沁みるのてとても美味しいらしく全員が笑顔で談笑している。…1人、植田智莉を除いて。
気まずそうな様子を見せる彼女はどうやら…自分のアイデアが上手くいかなかった上に他人のアイデアに頼りきってしまったことが悔しい様子である。
「森上のお兄さんは怖くないんですか?島に行くの…」
少し前に島に対して怯えを見せていた漁師のことを思い出した大千は敦の兄は怖くないのかと疑問を抱いて尋ねてみると、彼は笑いながら返した。
「キャンプ場があった島でしょ?何があったのかは俺達には分からないけど。…でも化け物が出るなんて所詮噂。出たって船で逃げればいいから」
ケラケラと軽く笑う様子の彼を見て安堵を示す様子の大千達。
その内に永夢達は島になにがあったのかを話し合っていた。宇宙人、神隠し、殺人鬼、それに平行世界へ迷い込んだなど様々な憶測が飛び出し、議論は白熱をましていく。
永夢「きっと宇宙人とかがキャンプ客をさらって行っちゃったんだよ!噂の化け物とかも宇宙の生き物とか宇宙人のことだと思う。」
黎竜「神…じゃなければ妖怪の類の仕業じゃあないかな。
彼らは人間の想像もつかない姿をしていることが大半だから、きっと彼らに食べられてしまったんだと思う。」
数沌「殺人鬼の隠れ家になっちまったなんてのは…苦しいか。いずれにせよ人間も視野に入れた何かしらの生物が島で繁栄していることは間違いない。」
「ああ。じゃないと30年たった今でも化け物の噂がある理由が説明できないだろう?」
梨花「いや、パラレルワールドか何かから化け物が来続けているとかじゃないか?……パラレルワールドとどんな風に繋がったのかは説明が付かないけれど……」
議論に花を咲かせていると敦の兄が振り返りそろそろ到着だと言ってきたため、大千達は船の外に身を乗り出して外の様子を見てみることにした。
左…真っ青な海が穏やかに波打っている。
右…マリンブルーの美しい海が何処までも広がっている。
前…船の前方の遥か向こうに大きな島。どんどんと近づいてきている。
梨花「あれが…キャンプリゾート島…」
永夢「綺麗……」
綺麗な砂浜と青々と茂る鬱蒼とした森が広がる島目を奪われていると、リュクサックを片手にかけた智莉が全員に聞こえるような大声で指示を出す。…ようやく活躍ができるとしたり顔だ。
智莉「みんな荷物を持って上陸に備えて!荷物が重いって人は荷物だけを砂浜に置いてからでもいいから。」
運動部でこそないが現地に赴くことが多いオカルト研究サークルはある程度の体力があるため、荷物を持って船から降りることなど造作もない。
船が浅瀬に到着すれば犬一番に船から飛び降りる大千。
水飛沫を上げながら浅瀬に降りればそのまま砂浜のほうへと駆けていき早く来いとでも言いたげに船に向けて手を振る。
数沌「あんな飛び降り方して…船にぶつかってサメでも集まってきたらどうするつもりなんだい?」
黎竜「よほど楽しみなんでしょ」
梨花「ガキだな〜」
似たような反応を示しながら船が砂浜について泊まるまで待つ数沌達。
特に智莉は船を下りるなり大千の方に行けば直ぐに彼を叱り始める。
それを微笑ましそうに見る敦の兄は荷物の忘れ物がないかと確認すると、運転席の方に戻り大千たちにいつ迎えに来ればいいかを尋ねる。
敦「そうだね…1週間後ぐらいでお願い。俺達もじっくりこの島で何があったのかを知りたいから。」
彼の兄はその言葉にサムズアップで答えると船のエンジンをかけて港へと戻っていく。
それを見送った敦達も智莉を先頭にキャンプ場へと向かうことにした。
Camp of nightmare アマチュア小説家(不定期更新) @amateur0417
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Camp of nightmareの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます