出発
部室に集まり夏休みの予定を決めてから数日。
期末試験も終わり無事に終わった大千達は旅行に向けての準備と称して集まり、荷物の確認をしていた。
「えぇと…必要なものは全部しっかりとあるかな?」
智莉「ナイフにピッケル、テントはしっかりあるね。」
数沌「食料もちゃんとある…。だが、いくら非常食とはいえ5日分は多すぎる。精々3日分程度にしておくべきだ。…そう何日もいるわけじゃないんだろう?」
荷物確認をしている彼らはそれぞれのバックから各自の荷物を取りだし見せていた。
懐中電灯にナイフ、ライター…そして医療キット。
冒険に出るために必要なものは全て揃っているらしいが数沌はその食料の多さが気になるらしい。
あまりにも多すぎると逆に持ち運びにエネルギーを掛けてしまうとのことだ。
永夢「でも、もしも何かあった時に足りなくなっちゃうんじゃない……?」
万が一に備えて多めに持っていくべきだという梨花に対し、数沌はそれを見越していたかのように「釣竿を持っていこう」と返す。
数沌「せっかくのキャンプなんだ。沢釣りや木の実狩り…その他にも色んな食料採集をするのも面白そうだろ?」
その言葉にほぼ全員が賛同を示し、永夢と大千が釣竿を数本買いに行った。
梨花「…それで、どうやって島に行くんだ?チャーター機に乗る金なんてないし、こんなかの誰も船なんてないだろう?…まさかとは思うけど何も考えてない…なんて言わないよな?」
2人が釣竿を買いに部室を出ていった後に口を開いた梨花の言葉を聞いた全員が一斉に智莉の方を振り向く。
数沌「あー……まさかとは思うけれど智莉…行く方法を考えてなかった……なんて言わないよね?」
黎竜「て、提案したのは智莉さんですよ?流石に行く方法をかんがえてないわけ…」
全員に詰め寄られる智莉は涙目になりながら縮こまってしまう。
どうやら梨花の予想通り何も考えていなかったらしい様子に敦は静かにため息をつくと提案があるのか口を開く。
敦「俺の兄貴が小さい船だが持っている。運転手含めれば俺たち全員乗れるはずです。」
梨花「それは名案だ!なら悪いけど君のお兄さんに…」
智莉「だ、ダメだよ!」
梨花の言葉を遮るかのように大声を出す智莉。気まずそうに全員を見渡し苦笑いしては、敦の家族に迷惑をかける訳には行かないと返す。
智莉「わ、私だってちゃんと考えているからさ。だから…明日港で…ね?」
数沌「……あ〜。うん。わかった。どんな素敵なアイディアを持ってきてくれるのか期待して待っているよ。」
静寂の中、数沌の言葉に賛同を示したサークルメンバー達は買い物に出かけた大千達にメッセージを送り解散することにした。
翌日大千達が件の港に行くと既に智莉が地元の漁師たちと話している様子がみてとれた。
ヘトヘトに疲れた上にどこか悲しげな彼女の様子から交渉はどれも上手くいっていない様子が見て取れる
数沌「敦君のお兄様には迷惑をかけられないけど魚取りにはいくら迷惑をかけてもいいって訳か。」
皮肉げに肩をすくめる数沌の横を通り過ぎながら智莉の近くに行って会話を聞こうとする大千。
漁師に頭を下げた彼女は大千の方に振り向くと、ごめんねと小さく謝る。
智莉「みんな漁から帰ってきたばかりで忙しいみたいで……なかなか難しいね…」
「お嬢さん、お困り事かな?」
アハハと苦笑いする彼女に対して大千が励ましの言葉をかけようとするよりも早く別の漁師らしき人間が話しかけてくる。
かなりのベテランらしいがニヤニヤと笑う下品な笑みは下心しかなさそうである。
しかし嫌な顔を心内に閉じ込めながら遠慮しようとする智莉達から半ばひったくる様にスマートフォンを取った数沌は島の写真と共に大凡の位置見せると、漁師の笑みがたちまち消えて真剣な顔付きになっていく。
「ガキ共、悪いことは言わねぇ。そこに行くのは辞めろ。」
数沌「その様子…熊やイノシシなんてもんじゃ無さそうだな。あの島に何がいるってんだ?」
突然の変わりようにさすがに不審感を抱いた数沌は何がそこまで漁師を怯えさせているのか訪ねると、彼は静かに口を開いた。
「俺も詳しくは知らねぇ。けどあの島は化け物の巣窟って話だ。キャンプ場も化け物共に滅ぼされちまったのさ。」
これ以上は話すのも怖いと言った様子ですごすごと離れていく漁師(目にして息を飲むサークルメンバー達に数沌は「どうするんだ?」と尋ねる。
「…とりあえず根気強く探してみよう。もしかしたら誰か親切な人が連れて行ってくれるかもしれない。」
その言葉に頷きを見せるメンバーたちの前に別の漁師が姿を現す。
その容姿はとてもベテランとは思えないがメンバー達は彼のことをとてもよく知っていた。
「あれ…敦とそのダチか?魚のお使いにでも来たなら俺のツテでまけてやるぜ?」
敦「兄貴!」
驚いた様子を見せる敦と気まずそうな様子の智莉。
いい淀みを見せる大千達の代わりに梨花が写真を見せながら話し始める。
梨花「この島に行きたいんだが連れてってくれるか?」
森上敦の兄はその写真をよく見れば胸元のサングラスをかけ、笑顔でサムズアップを見せる。
「任せとけ!荷物乗せたらすぐに行くから着いてこい!」
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