第25話 『英雄』の『真銘』
迫りくる『崩壊』の一撃。
本来であれば、防御することすら叶わぬ絶望の一手。
しかし―――
「残念だったな、クソ『女神』」
ゴォオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンンンンン!!!!!!
―――それは突如として俺の目の前に現れた巨大な光の壁に防がれた。
『ッ⁉ 防がれ、た……?』
「さぁ、我らが『戦姫』のお出ましだ」
驚きを見せる『女神』に対し、俺が不敵に微笑むと空から一人の少女が降りてきた。
「全く……無茶をし過ぎ」
「生きてるから問題ないだろ?」
「はぁ……」
俺の返答にため息をつくのは、神木理華―――人類の『最高』戦力である。
「で、状況は?」
「触れれば即『崩壊』をもたらす武器が無尽蔵」
「なるほどね。凄くピンチだという事は分かった」
「なら、どうするんだ?」と視線で俺が問いかけると、理華は深く息を吐きながら一言。
「―――正面からの真っ向勝負。全力で打ち壊すよ!」
「あいよっ!」
最もシンプルで、この状況においては最も最適な方法を選んだ理華が飛び出し、俺もその後に続く。
『ッ! 力だけで勝てるとは思わないでくださいよっ!』
一瞬だけ気圧されるも、すぐに持ち直し、数多の武器を放つ『女神』
その一つ一つが『崩壊』を有する凶悪な武器だが……
「『
理華の『偽神兵装』―――『戦姫光鬨』による『勝利』と『栄光』の
『なっ、私の武器が……⁉』
そして、ただの武器になったならば……
「司!」
「了解っと!」
俺の『英雄神話』により生み出れた無数の『英雄』の武具で、『女神』の武器を次々と破壊していく。
『くっ、しかし、物量でもこちらは負けていませんよ!』
『崩壊』では勝てない判断した『女神』が次に放ったのは視界全てを覆う、万を超える武器。
俺一人であれば対処できないであろう武器の一斉掃射。
しかし、理華の『戦姫光鬨』によって『英雄神話』も強化されており、俺はこれまでの戦闘よりもさらに多くの武器を―――『女神』と同じ、万の武具を生成する。
『なっ⁉ さっきまではそれほどの武器を出せなかったはず⁉』
「はっ、お前も知っているだろうが。『皆で力を合わせて戦おう』っていう、
研ぎ澄まされた感覚の中、俺が放った武具が『女神』の武器を片っ端から破壊していく。
『くぅ……!』
「オラオラァアアアアアアアア!!!!!!」
呻き声を上げる『女神』が苦し紛れに武器を生成するも、それよりも速く俺は武器を破壊していく。
「これで最後だ!」
『そんなっ……⁉』
一分もしない内に全ての武器を破壊した俺に対し、『女神』は驚きで目を見開く。
俺は「信じられない」と身体を硬直させる『女神』の姿を見逃さず、理華の方へ視線を向ける。
「義姉さん!」
「―――
俺と入れ替わるようにして前に出た理華が、純白の光を放つ槍と軍旗を『女神』へ向かって、全力で振り降ろす。
しかし『女神』の顔は、未だ余裕の色を纏っていた。
なぜなら―――
『―――なんてね♪』
「ッ⁉」
強烈な一撃は『女神』の前に展開された半透明の障壁に防がれる。
『ふふっ、私に
「くっ……⁉」
障壁を挟み、対照的な表情で向かい合う『女神』と理華。
この障壁を破ることが出来なければ、自分達が勝つことはなく『女神』は決して負けない。
両者の意見が一致した時だった。
「だから、それを打ち破るまでだ!」
『ッ⁉』
死角から大剣を振り上げる俺に『女神』が驚きの表情を見せる。
「オラァ!」
『クッ……⁉』
『女神』は咄嗟に障壁の展開させるも、十分な時間がなかったためか俺の振るった大剣によって粉々に砕かれた。
「障壁が!」
『そんな、どうして……!』
障壁が破れたことで歓喜の声を上げる理華に対し、絶対に破れないと信じていた障壁が破られたことによって戸惑いの声を漏らす『女神』
俺は大剣を担ぎながら、その理由を説明する。
「簡単な事だ。明確に『防御』することを意識しておらず、展開にも十分な時間がなかった。だから、俺の攻撃で砕かれたんだよ」
『そ、そんなはずはないっ! この障壁は展開さえできればどんな攻撃でも防げるのに!』
「はっ、教えてやるよ、クソ『女神』―――この世に”絶対”はないんだよ、っと!」
『ッ⁉』
今度は正面から振るわれた大剣。先ほどよりも展開するまでには十分な時間があった。しかし―――
パリンッ!
『な、なんで⁉』
―――障壁は再び、粉々になるまで砕かれた。
次々と起こる想定外の事態に益々混乱する『女神』に対し、俺は不敵な笑みを浮かべる。
そして———
「あぁ、悪いな。さっき言った事―――全部、嘘なんだよな」
『ッ! このっ、クソガキ……!』
―――先ほどの情報が全て、偽りだったと告げた次の瞬間、『女神』が豹変した。
『よくも『女神』である、この私を騙したな……!』
「おいおい、何言ってるんだよ?」
―――
そう告げられた『女神』がこれまでとは全く異なる―――まるで獣を彷彿させる叫び声を上げる。
『アァアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!』
再び生み出される万を超える漆黒の武器。
それを見た俺は先ほどと同じように『英雄神話』で迎え撃とうとするも―――
「ッ⁉ 司、避けて!」
「――――――ッ、ツ」
『死ねぇええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!』
―――直前で聞こえた理華の言葉に、俺は半ば本能的に身体を沈ませ、それと同時に『女神』の強烈な横薙ぎを放った。
これまでの一撃とは違い、空間が割れるようなことはなかったが、俺達は今の攻撃が最も『死』に近い攻撃だと肌で感じ取っていた。
そして、それを肯定するかのように『女神』が嗤いながら、手元にある歪な形をした剣を掲げ、その『銘』を口にする。
『この剣は『
「『拒絶』だと……?」
『はい♪ あらゆる物、事象を『拒絶』する武器です♪』
「……はっ、ふざけた武器だな」
『女神』の言葉に俺は思わず、苦笑を零す。
仮に『女神』の言葉が本当だとすれば、俺達の攻撃は全て『拒絶』されることで一切のダメージを与えることが出来ず―――最悪の場合、命を『拒絶』される可能性もあるのだ。
つまり―――
「―――本当に勝ち目がなくなった、ってことか……」
『あはははっ、どうです? 愚かにも
一人、高笑いする『女神』
その姿を一瞥すると、俺は理華の方へ視線を移し、問いかける。
「義姉さん―――『真銘解放』を使わせてくれ」
「ッ! ……いいの、戻ってこれなくなるよ?」
「勿論、覚悟の上だ」
「……分かった。後の事は気にせず、全力で行って!」
「あぁ!」
力強い理華の言葉を受け、俺は『女神』の方へ向き直る。
「おい、クソ『女神』。確かに今の俺達じゃ、お前に勝てない―――だから、今からその限界を超えてやるよ」
『ふふっ、今更、何をやっても無駄でしょうが見せてください―――悪あがきを♪』
「あぁ、しっかりと見ろよ―――人間の覚悟、ってヤツをな!」
一度、深呼吸をした俺は手を前に翳し―――
「【編纂せよ】」
―――真なる力を解放するための詠唱を始めるのだった。
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