第22話 決意と戦姫
「――――――『私』を、殺して」
『女神』の姿で願いを口にした彼女を前に、俺は一瞬だけ目をつぶる。
色々な情報が一度に入ってきたせいで少し頭がこんがらがっていたが、何とか整理し終えた俺は目を開き、目の前に立つ彼女へ告げる。
「あぁ、任せろ。俺達が『女神』を倒してやるよ」
「ふふっ、ありがと。じゃあ―――」
その宣誓に安堵の表情を浮かべた彼女は空を少しだけ見上げ、すぐに正面に向き直るとその顔に先ほどとは異なる笑顔を浮かべる。
そして———
「―――ここからは
「……あぁ、楽しい愉しい
―――真の意味で『女神』を倒す戦いが始まった。
―――――――――
「あはははっ! もっと足掻いてくださいよ!」
「ぐぅ……⁉」
放たれた重い一撃に俺は呻きながら、反撃とばかりに全方位から武具を放つも、『女神』はその全てを躱し、斬撃まで飛ばしてきた。
「えっ、ぐい、なぁ……!!!!!!」
「おっと、危ない危ない♪」
ボロボロになった身体で剣を振るい、斬撃をはじき返すも『女神』の正面に展開された半透明の障壁に防がれる。
「相変わらず馬鹿みたいに硬いなぁ!」
「ふふっ、避けようと思えばいくらでも避けれるのですが、たまにはこうして楽をしたいので♪」
「そうかよっと!」
両者、楽しく話しながらも、互いに己の得物で相手を命を絶え間なく狙い合う。
「オラッ! 空から弓矢のプレゼントだ!」
「わぁ、凄い凄い! なら、私も!」
千を超える弓矢を『女神』は難なく躱し、今度は複数の斬撃を放ってきた。
「危ねっ!」
「お~その盾、中々の性能ですね~」
「英雄の武具だからな!」
そう言いながら、地面に突き刺さった矢を剣に変えて、その全てを同時に『女神』に放つ。
「なるほど、『英雄神話』ならそんなことも出来るんです―――ッ⁉」
「チッ、失敗か……」
剣で一時的とはいえ視界を遮ったのを利用し、死角から鋭い一撃を俺が放つも直前で気づいた『女神』が半透明の障壁でギリギリのタイミングでそれを防ぐ。
「だが、今の一撃で分かったぜ。お前が展開している障壁の『絡繰り』がな」
「……どういうことでしょうか?」
「その障壁、お前が意識しないと展開できないんだろ?」
「…………」
俺の問いかけに返って来たのは、無言と言う名の肯定だった。
「常時展開の線も考えたが、それだけ強力な障壁を常に展開できるならお前は一歩も動かず俺を倒そうとするはずだ」
「……それで?」
「だが、実際はそうしなかった。ってことは、その障壁を展開するのは中々に骨が折れるんだろ?」
「……ふふっ、せいかーい。この技、強力なんだけど結構な力を持っていくんだ~」
障壁の種明かしをされたにもかかわらず、微塵も焦った様子を見せない『女神』
「けーど」
『女神』は笑ったまま刀をしまい、新たな得物を空間から取り出す
「ここからは虐殺、だよ?」
それは剣だった。刀とは違う、両刃の剣。その色は黒。それも光を一切反射しないほど淀んだ黒。
嗤いながら告げた『女神』が剣を振るった次の瞬間―――
「ッ⁉」
―――世界が、割れた。
勘で頭を下げた俺の頭上が割れていた。綺麗に折れなかった時の折り紙のようにずれた世界。
少しすると空間が元に戻り、次の瞬間、空間が割れていた際の事象が反映される。
「嘘だろ……⁉」
「パリンッ!」という音と共に剣の軌道上にあった数多の武具が一瞬で砕け散った。
驚く俺に『女神』は声高らかにその剣の銘を告げる。
「凄いでしょ、私の『
「空間を、切り裂いた、のか……?」
「正確には『切った』じゃなくて『壊した』んだよね~」
『女神』の言葉で俺はある程度だが、漆黒の剣の能力を把握する。
「なるほど、その剣はあらゆる物を『壊す』ことに特化しているんだな」
「ふふっ、そうだよ♪ あ、ちなみに―――」
『女神』は愉しそうに嗤うと、虚空から新たな漆黒の武器を取り出し、他にも空中から数多の漆黒の武器が顕現させ、自身の周りで浮遊させる。
その光景に唖然とする俺を見ながら『女神』は剣を頭上に掲げ、
「―――こういう
「……はっ、冗談きついぜ」
俺は冷や汗を浮かべながら何とか答えると、『女神』は口元を驚くほど歪め、
「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!!!!!」
絶望の嗤い声が、神域に響き渡った。
「さぁ! 何も成せないまま、無様に死んでくださいね!」
そして、轟音と共に放たれた『崩壊』という特性を有した波状攻撃。
防御、回避。共に不可能。生き残る可能性は———皆無。
だが―――
―――――――――
「【想起せよ 汝らが手にする、勝利の光景を】」
地上にて一つの唄が響き渡る。
「【喇叭を鳴らせ、勝利の為に】」
「【雄叫びを上げろ、勝利の為に】」
唄が紡がれると同時に膨れ上がっていく神意の光。
「【此の領域に集いし者達よ、立ち上がれ】」
「【汝らの進むべき道は我が創り出そう】」
唄い手は、一人の少女。
「【さぁ、我らで栄光を掴み取れ】」
最後の一節を唱え、少女はその『銘』を告げる。
「『偽神兵装』―――『
―――――――――
「残念だったな、クソ『女神』」
―――反撃開始だ。
~~~~~~~~~
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