第13話 大戦開幕
迎えた大戦当日。
これまでの記録から最も【影】が出現してきた『虹』の中央。その真下に俺達は陣取っていた。
「各隊、配置についたようだな」
一般隊員を含め、軽く五千は超える隊員の先頭で聖司が拡声器を使いながら話を始める。
「これより我々は『虹』が崩壊と共に溢れ出てくる【影】との戦いに臨む。全員、空を見ろ」
聖司の言葉に従い、全員が上を―――七色に輝く空を見つめる。
「これまでとは比にならない数の【影】が我々を殺さんと襲いかかってくるだろう。だが、臆することはない。なぜなら、我々には『英雄』の加護があるからな」
『ッ!』
その言葉に合わせ、俺が『英雄神話』を発動し、全隊員に『英雄の武具』を貸し与える。
突然、目の前に現れた強大な力を放つ武具に隊員達が驚愕で目を見開く。
……うん。思った以上にキツイ。
この演説を始める前に聖司と理華の『偽神兵装』によって、今日一日分の強化をしてもらっていたが、予想以上の負荷に弱音を吐く。
「手に取るだけで分かるだろうが、その武具は強力な代物だ。我々はこの武具と各自の『偽神兵装』をもって【影】を迎え討つ」
「四、十番隊及び、近接戦闘の『偽神兵装』を有する一般隊員は戦闘区域外から【影】が溢れ出ないよう各個撃破」
『オウッ!』
焔を中心に、体格のいい隊員達が声を張り上げる。
「七、八、九番隊及び、遠距離戦闘の『偽神兵装』を有する一般隊員は彼らの援護、場合によっては【影】を殲滅」
「かしこまりました」
遠距離組を率いる天音が万感の想いを込めて、静かに応じる。
「五、六、十二番隊及び、支援・回復系統の『偽神兵装』を有する一般隊員は後方にて戦闘で傷ついた者を手当てと強化を」
『はっ!』
誰一人として死なせない。全員が強い意志を瞳に宿して答える。
「三番隊は全軍の防御、十一番隊は戦場の偵察及び攪乱」
「お任せください」
「はいよ~」
白の甲冑を身に纏った姿で応じる三番隊総隊長。一般隊員と変わらぬ装備で飄々とした態度と共に答える十一番隊総隊長。
「一、二番隊は各隊が戦っている隙に本命である『女神』が住まいである『神域』を支配しているリーダー格の【影】に対し、襲撃を仕掛ける―――全員で、勝つぞ」
『―――ッ、オォオオオオオオ!!!!!!!!』
待ってろよ、『女神』
俺達の力を、そのイカれた頭に刻み込んでやるからな。
雄叫びが上がる中、俺は静かに空を見つめながら、そう呟くのだった。
―――――――――
時刻はちょうど十二時。真昼の空に輝く『虹』
ついに『その時』が来た。
―――パリンッ
『虹』が段々と崩壊していく音が聞こえてきた。
―――パリンッ! パリンッ!
大きくなっていく破砕音。それと共に落ちてくる『虹』の残滓。
―――パリンッッッッッ!!!!!!!!
そして、一際大きな破砕音が響いた次の瞬間―――
『グギャァアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!』
「ッ―――――――――!!!!!!!!」
―――不快な鳴き声と共に大量の【影】が空から生まれ落ちてきた。
予想していたよりも遥かに多い【影】に一瞬だけ怯むも、すぐに気持ちを切り替える隊員達。
「行くぞ、お前達ッ――――――――――!!!!!!!!」
『オォオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!』
先頭に立ちながら吠える焔の号令に多くの隊員達が続いていき、数多の【影】と正面からぶつかる。
「遠距離部隊、放て‼」
それと同時に天音の指揮によって放たれた千を超える遠距離攻撃が【影】を次々と討ち滅ぼしていく。
その他の部隊も聖司の指揮通りに動き、期待以上の成果を上げていく。
「す、凄い……!」
数の差を感じさせない善戦に理華が驚きの声を漏らす一方で、俺達の顔は険しくなっていた。
「善戦はしているが……」
「かなりの持久戦になりそうですね…」
数的不利は分かっていたので支援・回復部隊には早い内から準備をさせていたが、予想以上の速さで消耗していく隊員達。
「焦ってもしょうがないが、俺達も出来る限り急ぐ必要があるな」
「……そうだな。一、二番隊、突入するぞ!」
『ハッ!』
聖司の号令に従い、一刻も早く『女神』を討伐するために、俺達は崩壊した『虹』へと向かうのだった。
―――――――――
『私を討たんと神域に突入してきましたか……『巫女』はいないようですし、すぐに殺してもいいのですが、それではつまらないのですよね~』
真っ白な空間に響き渡る女の声。
『
紡がれた言葉は、その透き通るかのような声音からは欠片も予想できないほど、残虐と悪意を孕んだ内容だった。
『そうだ! あの『総隊長』達の『偽神兵装』を奪ったら面白そう!』
そして、信じられないことを口にした。
『でも、それだと『偽神兵装』を奪ったら向こうは戦う術がなって、一方的に嬲ることになっちゃうんだよな~』
それは『若い女の子』だけでいいんだよな~、と嗤う女。
『とりあえず、地上には『あの子達』を送り込むとして、神域に突入してきたのは放置しておこうかな。そう簡単には私の所に辿り着けないだろうしね~』
そう言いながら、女は何もない真っ白な上空へ手を伸ばし―――
『―――だから、それまでは束の間の善戦を楽しんでくださいねっ!』
―――その言葉を最後に、女は戦いの観察に集中するのだった。
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